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職場のトイレに入っていると、水音がだんだん近づいてくる話

怖さ:★★☆ 

これも、首都圏にある葬儀社に昔勤めていた方に聞いた話です。15年くらい前、彼は幽霊が出るという噂のある葬儀会館で、館長として働いていました。

「なんか怖い話」で以前ご紹介したように、その葬儀会館ではお葬式の依頼が入る前に、無言電話が掛かってくるピンク電話があったり、誰もいないのに斎場入り口自動ドアが開閉したり(モニターには黒い影が映っている)と、不思議なことがいろいろあったそうです。

そんな少し変わった葬儀会館で、ある日、彼がトイレの個室に入っていた時の出来事です。

男子トイレの構造について(不要でしたら読み飛ばしてください)

ここで、男子トイレに入ったことのない方のために、男子トイレの構造について簡単にご説明します。

男子トイレの見取り図の一例

男子トイレ

公衆トイレなど、いろいろな人が利用する男子トイレの中は、手を洗う洗面台と、小便をする小便器(検索したら、正式名称は「大形ストール小便器」というそうです。小さいものは「朝顔」と呼ばれたりもしていたような気がします)のエリアと、小便と大便どちらにも対応する個室(個室の中は一般的な便座があります)エリアの、3つの空間から成り立っているのが一般的だと思います。

それぞれの配置については、男子トイレの広さや、そのトイレの入っている施設などの利用者の特性にもよって異なりますが、私の経験では、男子トイレに入ってエントランスの付近に洗面台や鏡など手を洗ったり身だしなみを整える空間があって、奥に進むと小便器がいくつか並んでいて、その後ろ側(小便器を利用する人の背中側)に個室が並んでいるという造りが多いかなと思います。

もう一つ、小便器の水は用を足した後に小便器の上についているボタンを押して流しますが、今ではセンサーが付いていて、人が去ったら自動で流れるものが多いです。あとは、トイレをきれいに保つために、定期的に水が自動で流れるとか、そんな機能もついているみたいです。

だんだん近づいてくる水の音

さて、話を葬儀会館に戻します。

その日、彼は男子トイレの中にいくつかある個室の中でも、一番奥(トイレの入り口の扉から一番離れたところ)に入って、用を足していました。

すると、トイレの入り口の扉が開く音がしたので、「誰かがトイレに入ってきたんだな」と思いました。

そのすぐ後に、ジャーッと小便器に水が流れる音がしました。そして、その音が入り口側の小便器から奥の方へと、ジャーッ、ジャーッ、ジャーッっと、だんだん彼が入っている奥の個室に近づいてきて、彼が入っている個室の前で止まりました。

何となく、気配を気にしていたのですが、水の音はするけれど人がそこにいるような感じはありません。変だなと思いながらも、彼も用を足して個室を出ました。

しかし、小便器の前はもちろん、トイレの中には誰もいませんでした。

トイレを出ていった足音も、トイレから出る時の扉の音もしなかったので、不思議だなあと思いつつも、何か水洗のセンサーとかの不具合があるのかもしれないと、葬儀会館のメンテナンスなどを行っている管理担当者に「こんなことがあったんだけど、確認しておいて」と伝えました。

ところが、その担当者に「この会館の小便器に自動センサーとかはついてないですよ。ボタンを押さないと水は流れませんよ」と言われて初めて、そういえば足音だけでなく、水を流すボタンを押す音もなくて、ただただ水が流れる音だけが近づいてきたことに気が付きました。

「(その葬儀会館では)いろいろあったけど、一番不思議だったのはトイレの水かな」というように、彼の心霊体験の中では、一番思い出深い怪奇現象だったようです。

話し手:40代 男性
採取時期:2020年9月
採取場所:東京都内

「葬儀会館」と、なんか怖い話

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