マガジンのカバー画像

音になる前の文字列

7
起きているあいだは常にしゃべりつづけている自分の脳みそを、音にする前に文字に起こしてみた記録。
運営しているクリエイター

記事一覧

きもちのかたまりのはなし

きもちのかたまりのはなし

自分の中に気持ちがあることを感じる。
客観的にとかそういう距離を持って感じるというよりは、体の中に塊として存在しておりほんのりと“重さ”も感じる。

気持ちが他と交わらない物体として体内に存在する。

いま、わたしのなかに、怖い、が居ます。
いま、わたしのなかに、悲しい、が居ます。
いま、わたしのなかに、楽しい、が居ます。

それらの存在に気づくのが鬱になってからは早くなったように思う。
それに気

もっとみる
しゃべると黙る

しゃべると黙る

親しいひとたちからすれば周知の事実だが、わたしはおしゃべりである。それも相当。

あたまの中が常にしゃべっているせいもあり、その一部が音として外に出てしまっただけで相当なおしゃべりになってしまう。

でも、そんなわたしにも黙るときがある。怒っているときは、黙る。腑に落ちなかったり、納得ができていないときも、黙る。

それは、「怒る」とか、「納得できない」という気持ちが自分にとって重要なものすぎて、

もっとみる
まいにちたのしい

まいにちたのしい

これは、大好きな絵本のタイトルであり、我が家の家訓でもある。わかりやすいので家訓ということばを使ったが、“感想”というほうが近いかもしれない。
「我が家の感想」って変だけど、それが近い。

思うたびに夫に繰り返し伝えていることがある。
いつ、どんなにむごい死にかたをしても、わたしはとっても幸せだから、安心してほしいと。

死にかたひとつで、それまで生きていた時間すべてが不幸になってしまうことなどな

もっとみる
ちいさく しぬ

ちいさく しぬ

わたしはしんでいる。何度かしんでいる。

本当にしんでしまわないために、ちいさくちいさくしんでいる。

そのことに気づいたり気づかなかったりする。

くらい話ではなく、にんげんの話。

たぶんきっと、知らない誰かもそうしている。

本当にしぬのは、本当にしんでしまうときにとっておこうとおもう。

そうして生きることに折り合いをつけている。

えびのはなし

えびのはなし

わたしはえびが大好きだ。

飲食店に行き、「海老」の文字をみつければ、そのメニューは問答無用で注文する候補に上がるほど好きだ。

とはいっても、えびならなんでもかんでもよいわけではない。

火が通ったえびが好きだ。

生のものや、桜えびなどもあまり興味がない。むしろ生や甘えびは苦手だ。あと殻付きもあまり好きではない。

わかってきた。火が通っているむきえびが好きだ。

そんなに好きなので、家族や友

もっとみる
いぬのはなし その2

いぬのはなし その2

わたしは寝ている。その左脚に手とあごを乗せてくるいきものがいる。あごも手もちいさく、あたたかい。
ずっとそのままでいていいよ、と思うと、スクッと立ってすこし離れたところでまるくなる。

フンーっと、おおきくため息をつく。今日いちにちに満足したかのようにも思えるが、それはこちらの都合のよい解釈かもしれない。

とかなんとか思っていると、またスススと移動して、ほんのすこしだけ触れた状態で寝はじめた。グ

もっとみる
いぬのはなし その1

いぬのはなし その1

いぬはかわいい。

驚くほどかわいい瞬間が毎日必ずあるすごい生き物だ。

今でこそ、生活の一部になり、なくてはならない存在だが、人生でいぬと暮らすのは初めてだったので、飼い始めた当初は、ほんとうにほんとうに大変な思いをした。

はじめて家にきたいぬは、ちいさくてふにゃふにゃでかたいところがひとつもなかった。

はじめの一ヶ月はお世話が大変すぎて、正直なところ、まだ早かったかもしれない、甘く見すぎて

もっとみる