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竹輪物語

レギュラー番組の収録へ行った時のこと。
その日はいつものメイクさんが休みで、ピンチヒッターの人が来ていた。
20代半ばに見える彼女は、顔が隠れるくらい大きなマスクをしている。
夏だぞ。蒸れないのか?

「マスクしてるけど、風邪引いたの?」
思わず聞いてみた。
「実は、こんな仕事をしていながら恥ずかしいのですが、、、。
肌荒れがひどくて、マスクで隠しているのです。」
「え!ちょっと見せてみて。」
マスクを外した彼女のほっぺたは、真っ赤な吹き出物が大量にできていた。

「うわぁ。これは、辛いねぇ!!!」
あかん。こんなの見たら、余計な世話を焼きたくなるではないか。
私のおせっかいがムクムクと出てきた。

「いつも、何を食べてるの?毎日決まって食べるものってある?」
「ちくわを毎日、5本食べています!私、ちくわが大好きなんです。」

は?ちくわ五本って! ししまるか。

「いやいや。ちくわは美味しいけどさ~。5本は食べすぎでしょ。
練り物って、塩分が多いんだよ。知ってた?」
「え~!知りませんでした!」
「しかもヘアメイクさんって、立ちっぱなしでしょ?
それで毎日ちくわ5本も食べていたら、脚、浮腫まない?」
「浮腫みは、ひどいです!」

ほらほら~。もうあかん。ほっとけない。
「では、私と3つ約束をしよう!」
「はい。」

「ちくわは、一日1本!ちくわを『やめろ』とは言わないけど、
嗜好品はクセのものだからね。食べたいだけ食べたらダメ。
数を決めなきゃ。OK?」
「はい。」

「2つ目は、朝起きたら一番に歯を磨くこと。
朝起きた時、口の中はバイキンだらけなの。
肛門より細菌数が多いと言われるくらい、寝起きの口は汚いから。
まずは口の中をキレイにしてね。」

「3つ目。コップ一杯の水を飲むこと。
寝ている間に沢山の汗をかくからね。
まずは体に大切な水分補給をしてあげてね。」

「そして最後に、旬のフルーツを食べること。」
3つの約束と言いながら、気づけば4つ目の約束になっていたけれど、
まあいいや。

「フルーツにはカリウムが含まれていてね、
塩分を体の外に出してくれるから浮腫みにイイんだ。
他にも、生のフルーツには酵素やビタミンCなど
体の調子を整えてくれるものもあるから。ぜひ食べて。」

「旬のフルーツですか?
フルーツは高くて買わないし、どれが旬かわからないです。」
と、メイクさん。

「旬のフルーツは、スーパーの入り口で
てんこ盛りになっているやつだよ。
旬のモノは、一番栄養があって一番安い。
たとえば今なら梨。1コ120円くらいでしょ?
半分食べたとして、朝ごはん60円。これなら続けられるでしょ?」

「分かりました!やってみます!」
「人間の体は三ヶ月で生まれ変わるから。まずは三ヶ月続けてみてね!」

翌月の収録でいつものメイクさんに会ったら、開口一番、
「彼女、頑張って続けていますよ!」とのこと。
大好きなちくわは1本で我慢、他の約束も守っているそう。
気になる肌荒れは、少しずつながらもマシになってきたらしい。
よかった~!!!

それから半年ほどたったある日。
この出来事をすっかり忘れていた私に、嬉しいお知らせが。
「六車さんに美容法を教えてもらったメイクさん、覚えていますか?
彼女、あれからどんどん綺麗になって、彼氏もできたんです!
彼は同じヘアメイクの仕事をしていて、
なんと結婚して二人でパリに住むことになったんですよ~!」

え~っ!?!?!?!

彼氏ができただと?

綺麗になったのは嬉しいけれど、
誰が、私より先にヨメに行けと言った!?!
私を踏み台にして、ドンドン追い越していきやがって。

しかしまぁ、『美食同源』を目の当たりにしたし、良しとするか。

キレイのもとは、食べることから。
毎日の『食べる』を見直すことは、
未来の自分を大きく変えることかもしれませんよ~。


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