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短編を投稿しています。 最近は映画のレビューもしています。 よろしくお願いいたしますm…

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短編を投稿しています。 最近は映画のレビューもしています。 よろしくお願いいたしますm(__)m

最近の記事

【Netflixオリジナル】「移民国家は語る」レビュー

Netflixにて7月22日から配信されているドキュメンタリー番組「移民国家は語る」を見た。 同作品は、人口の13%を移民が占めている移民大国・アメリカで長く課題になっている不法移民問題について、移民関税執行局(ICE)に密着したテレビシリーズである。 全6話あるなかで、第1話では2018年ごろにトランプ政権下で行われた「不寛容政策」について主に語られている。 当時のアメリカの世論の様子(デモやテレビ番組)なども知ることができ、日本にいてはなかなか知ることができない現地

    • 【8/5配信】「フジコ・ヘミングの時間」を見た!

      Netflixで新たに配信開始となった『フジコ・ヘミングの時間』をみました。 猫や犬、素敵な服やインテリアに囲まれたフジコの生活に憧れ、フジコ・ヘミングという不屈のピアニストの生き方を学ぶことができるドキュメンタリー作品です。考えさせられることも多かったので以下にレビューを残していきたいと思います。 【概要】 60代になってから世界に見いだされたピアニスト、フジコ・ヘミングのドキュメンタリー。 (中略) 1999年にNHKで放送されたドキュメント番組によって日本でも広く知

      • ふたりぼっち

        「おじいさん、ロボットにも寿命はあると思いますか?」 「どうだろうね」 おじいさんはベッドに横になり、白い天井を穏やかな瞳で見つめている。 「僕が死んでも、キミは自分で自分をアップグレードすることができる。ならば、キミの寿命は地球と同じだ」 「72億4502年の命ですね」 6秒間の沈黙。 おじいさんは最近口を閉ざすことが多くなっていた。 「孤独な旅をさせてしまうね」 「ボクはロボットですから、寂しくなんかありませんよ」 また沈黙、9秒間。 夜の風がひゅうひゅうと窓を叩く音だけ

        • あんたのせいで今日も生きてる。

          多額の借金を背負い、ビルから飛び降りようとする主人公。しかし、その隣に今まさに飛び降りようとしていた女・あかりがいた。結局、どちらが先かで揉めた二人はビルから下りてしまう。「死にたい、でもいつも邪魔が入る……」自殺から始まるラブコメディ。

        【Netflixオリジナル】「移民国家は語る」レビュー

          【短編小説】『夢で見た告白』【読み切り】

          そろそろ結婚しなさいよと親に小言を言われるようになった頃、自分の元に高校の同窓会の誘いが来て、10年ぶりにクラスメイトと再会することになった。 30人もいないクラスだったから、幾人か減るとして20人くらいになるだろうか。新鮮な気持ちで会いたいからアルバムは見ないでおこうか。でも名前を忘れてしまっていたら大変だ。 なんてどうでもいいことを考えながら、内心楽しみにしている自分がいた。 その日が近づけば近づくほど、妙な緊張感と高揚感で頭の中が一杯になっていて、それほど高校時代

          【短編小説】『夢で見た告白』【読み切り】

          掌編小説『部屋とTシャツとビール』

          鎌倉に住む小説家が事件に巻き込まれて… 「だめだ、つまらない」 外から射し込む光が高橋の身体に汗を浮かび上がらせた。 今日はこの夏一番の暑さだとテレビが伝えている。高橋は缶ビールを手に取った。冷たさが喉を通る。鉛筆を持ち直して原稿用紙を睨みつけるが、頭には何も浮かばず、暑さに頭の中の養分が吸い取られていく感覚がした。 「どんな内容?」 塩ゆでした枝豆が皿いっぱいに盛り付けてあるのを運んできながらユウカが訊いた。 「鎌倉の小説家が事件に巻き込まれて…」 「そんな内

          掌編小説『部屋とTシャツとビール』

          【短編小説】『放置子』【読み切り】

          放置子 中学二年生の智明は六時間目の授業を終えると、いつもと同じように二組の教室へと向かった。 今日も二組は授業が長引いているようだ。きっと河野先生がまた長話をしているに違いない。 涼からいつも愚痴を聞かされていたので、授業を受けたことのない智明でさえもいつの間にかその教師のことを嫌いになっていた。 教室が騒がしくなり、生徒たちが勢いよく教室から出てくる。涼の姿はその中からすぐに見つかった。 「はいこれ」 涼から鞄を受け取る。智明は自分と涼の鞄の持ち手を重ねて右手

          【短編小説】『放置子』【読み切り】

          短編小説『犬』#3(最終)

          犬山がインターホンを押すと、男の声がした。すぐ行くとインターホンを切ってから、世にいる他の金持ちたちの例に漏れず、すぐとは言えないほどの時間がかかったが、作家もこのことにはもう慣れていて不快に思うことはなかった。  大きな洋風のドアを開いて現れたのは、大柄な男だった。年齢は作家と犬山よりもひとまわり上で、ポロシャツがピンと張るほどに丸みを帯びた腹と立派に蓄えられた口髭から、アラスカの猟師かと見紛うほどの容姿をしていた。  その大男は、犬山と作家を順に訝しげな目で見つめ、犬

          短編小説『犬』#3(最終)

          短編小説『犬』#2

          犬山の話を聞きながら元の飼い主の家までの道を歩いていると、話の全容が徐々につかめてきた。  犬山の家は世田谷に競うように並ぶ他の新築住宅らとは違い、昔からそこにある古風な家であり、庭を野良猫の住処にされてしまうことは以前からあったらしいのだが、そこに綺麗に手入れされている飼い猫が来るようになった。元の飼い主は比較的早く見つかり、返しに行くことができたのだが、その日を境に次から次へと迷子の犬や猫が住み着くようになったのだという。 「この前連れていたチワワも迷い犬だったんです

          短編小説『犬』#2

          短編小説『犬』#1

          犬  世田谷区の、大小の差はあれどもいわゆる金持ちたちが集まる住宅街には、これもまた金持ちたちの性なのだろうか、ペットを飼っている家が多かった。休日の朝ともなれば、公園には大型犬から小型犬、たまにゾウガメなど、まるで動物園のような賑わいとなり、小さなバッグを提げた奥様方が子供の担任についてああだこうだと会議を重ねるのが常だった。  その公園に、ある作家の男がベンチに座って唸っていた。その男は、専業作家と言われる部類の中でもそこそこ稼いでいる作家の一人で、昨年近くに念願のマ

          短編小説『犬』#1

          短編小説『麻雀』#4(最終)

           グラウンドでは投手と悠馬の壮絶な一騎打ちが繰り広げられた。そして投手の気迫のピッチングを前にして悠馬は簡単にツーストライクに追い込まれた。 「よし、次で決まる。どうせこんな若いのに大舞台は無理なんだよう」  金歯男が再び勝ち誇ったような表情を浮かべる。  3球目も投手は遊ぶことなくストライクコースに投げ込んだ。悠馬はインコースの球を肘を折りたたんで振り抜く。打球は一塁側ベンチの方向へと飛んでいった。 『振り遅れながらもファールにしました!河野選手、もの凄いスイングで

          短編小説『麻雀』#4(最終)

          短編小説『麻雀』#3

          『デッドボールです!小林選手の背中にボールが当たりました!これでツーアウト一、二塁です!』  一体ピッチャーはどうしたのでしょうかと実況が解説に訊ねている。しかしそんな話の内容など、みん荘に居合わせた誰の耳にも届いていなかった。信じられないことが起こったとでもいうような顔で誰もがテレビ画面に見入っている。そして確実に流れがライオネスの方に向き始めていることを感じ取っていた。ベンチへと戻る小林にスタンドから拍手が送られ、代走の選手がグラウンドへと飛び出した。  三番打者の広

          短編小説『麻雀』#3

          短編小説『麻雀』#2

           そうか。悠馬はライオネスの四番だった。敗戦ムードのベンチにおいてもただ一人鋭い眼光で前を見据えている悠馬にはテレビを通しても伝わってくる威圧感があった。 「オレはあみんかな?おじさん長く待たされるのはあんま好きじゃねえんだよ」  金歯男の声に先ほどまで無かった怒気がこもる。野次馬たちからも苛立ちが伝わってきた。 「一つ、賭けをしないか?」  俺はテレビから目を離すことなくその場にいる者たちに訊ねた。 「いやいや。賭けならさっきからずっとしているでしょう」  白髪

          短編小説『麻雀』#2

          短編小説『麻雀』#1

          麻雀 「悠馬くんはあんなに頑張っているのに、大輝と言ったら・・・」  これは母の口癖だ。いや。母だけでなく近所の人間のほとんどがそう思っていたのかもしれない。  それだけ幼馴染の河野悠馬と俺の人生は明暗はっきりと分かれていた。  河野悠馬といえば、今ではその名を知らない者はいない天才プロ野球選手である。今年、高卒2年目にして三冠王を達成した彼には早くもメジャー移籍の話もあがっているほどだ。 「俺だって・・・」  俺だって中学の頃までは悠馬から三振を取れるほどのピッ

          短編小説『麻雀』#1

          短編『卒業』#最終

           原田優希  優希は席から立ち上がろうとする詩織の肩を押さえつけた。 「今君が行ったら健吾の行為が全部無駄になる。健吾が君を差し置いて先に告発した意味がなくなるんだよ」 「だからって・・・・・・」  体育館の左端がざわついている。馬場先生と時生が口論しているようだが、会話の内容までは聞こえてこない。 「とにかく、ここで健吾を信じて座っていてくれ。大丈夫、別にあいつは君みたいに推薦取り消しにされるわけじゃないから」  昨日の時生と健吾の会話がマイクを通して体育館に響

          短編『卒業』#最終

          短編『卒業』#7

           3月11日   今井健吾  卒業式といっても健吾は特に感傷的な気持ちにはならなかった。心のどこかで、またいつか会えばいいと楽観的に思っていた。同窓会でも、成人式でも。会いたいときにはいつでも連絡が取れるのだから、寂しいという気持ちにはならなかった。  パイプ椅子が敷き詰められた体育館に精一杯の拍手で迎えられても健吾は別のことを考えていた。    健吾と優希は今朝、詩織と話した。詩織は昨日優希が陰から録画していた映像が欲しいと言った。驚いたことに、詩織は卒業式の場で

          短編『卒業』#7