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【8/5配信】「フジコ・ヘミングの時間」を見た!

Netflixで新たに配信開始となった『フジコ・ヘミングの時間』をみました。

猫や犬、素敵な服やインテリアに囲まれたフジコの生活に憧れ、フジコ・ヘミングという不屈のピアニストの生き方を学ぶことができるドキュメンタリー作品です。考えさせられることも多かったので以下にレビューを残していきたいと思います。


【概要】
60代になってから世界に見いだされたピアニスト、フジコ・ヘミングのドキュメンタリー。
(中略)
1999年にNHKで放送されたドキュメント番組によって日本でも広く知られるようになったフジコの、初のドキュメンタリー映画となる今作では、ワールドツアーで世界を巡って演奏する姿や、自宅で愛する猫に囲まれて過ごす時間など、公私にわたるフジコの素顔に密着。父との別離、厳しい母のレッスン、ハーフへの差別、貧しい留学生活や聴力喪失など、数々の苦難に見舞われても、夢をあきらめずに進んだフジコの人間性と音楽に迫る。
(映画.comより引用:https://eiga.com/movie/87411/)


人と変わっている自分を、最後まで愛し続けられるか


ベジタリアンで愛猫家で愛犬家。ジブリ映画にでも出てきそうな見た目で、椅子に腰掛けながらタバコを嗜む……。

生き方の一つ一つが個性的で、それぞれに自分なりの哲学を持って行動しているフジコ・ヘミング。

しかし、個性はときに差別の対象にもなったという。

やっぱり私は人と変わってるので、その分苦労しましたね

理解されなかったですね。それがすごく悲しかった。

ベルリンへの音楽留学時代を回想し、フジコは語る。

幼少期には、ハーフであることで虐められることも多かったそう。

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映画『フジコ・ヘミングの時間』予告編
https://youtu.be/0GBstDmTne8

周囲から理解されなかった変わり者が、数年後にスターになるというのはある程度よくある話だったりする。

でも、それが60代まで続いたら?自分を信じ続けることはできるのだろうか。

きっとフジコは常人には耐えがたいほどの苦悩を耐えてきたのだと思う。

海外で貧しい暮らしが続いていた頃、「この地球上に私の居場所はどこにもない......天国に行けば私の居場所はきっとある」と考えていたというフジコ。

劇中で、あまりいい思い出がないと語りながらも両親の写真を部屋にいくつも飾っていたのは、「自信を失いそうななかで、唯一頼れるものは自分のルーツ」だという哀しい心情の表れだったのかもしれない。

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同予告

そうして、内に内にこもっていった彼女の歴史は、21世紀になって世界を感動させる唯一無二の演奏を生み出すことになる。


不屈を聴く

正直、私はピアノに関する知識は持ち合わせていない。それでも、多くの人と同様にフジコのピアノに心奪われることができる。

それは、ピアノの技術や音の響きとは別の「観念的なもの」を感じられるからではないだろうか。

何も知らずに、落書きされた便器を見たり、トマトの缶を見るよりは、現代アートの歴史を知って見た方が数倍面白い。それと同様に、フジコの波乱ある歴史(耳が不自由、一夜にして成功を掴む)を知っていた方が観ているものの心に響いてくるものがある。

これはもちろん、フジコの技術が物足りないと言いたいわけじゃない。

むしろ、この観念的なものこそが、音楽の知識がある人だけでなく、世間一般的なレベルの認知を得ることになった要因なのではないかと思う。

フジコはよく「魂のピアニスト」と呼ばれるが、それは恵まれない人生を送ってきながらも自分を信じ続けた不屈の歴史が彼女をそう呼ばせるのであり、人々は演奏技術と同時にそういった観念的な部分にもお金を払っている。

つまりフジコの演奏を聴いている人は、不屈を聴いている、と言うこともできるのだ。

演奏だけでなく、生き方でも観客に影響を及ぼす、それこそが多くの人を20年もの間魅了してきたフジコの凄さである。


また、この作品のクライマックスには「ラ・カンパネラ」の演奏がほとんどフルで挿入されている。これは上手い仕掛けだと思う。

それまでの作中で、フジコについて多くの情報をインプットした上で演奏を聴くことができるからだ。

きっと、そこまでフジコ・ヘミングのことを知らなかった人でも、クライマックスに至るころには彼女がなぜ「魂のピアニスト」と呼ばれているのか、肌で感じることができるに違いない。

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同予告

変わらないもの

周りに認められない日々が続きながらも、自分の生き方を尊重してきたフジコ。

その生き方は1999年に、NHKで自身のドキュメンタリー番組が作られたことで一瞬に実を結んだ。これはフジコにとっても思いがけない出来事だったに違いない。

しかしその一方で、スターになる前も後もフジコの考え方はそれほど変わらなかったのではないかと思う。不屈の人生を通して身に付けた、ある種の悟りのようなものがフジコには備わっているように言葉の節々からは感じられた。

その悟りとは、自分を愛すること。

周りに自分が認められないとき、自分を愛し続けることは難しいことかもしれない。しかし、フジコはその考え方をとても大切にした。

それはこの作品の冒頭に現れる【人生は、時間をかけて私を愛する旅】という言葉にもよく表れている。

自分は自分で愛する、そんな強い意思が彼女を「魂のピアニスト」たらしめていると言っていいだろう。


彼女はいまも精力的に活動を続けており、先日はコロナ禍によせてメッセージ動画もアップされた。

現在進行形でフジコの物語は続いている。コロナウイルスが収まり、またフジコ・ヘミングがコンサートに立ったという知らせを、少しでも早く聞きたいものだ。

8/6

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映画.com:https://eiga.com/news/20180521/2/

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