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マイクロノベル集 233「天と地と」

No.1349
木陰で休んでいたら、草の裏側についた雨粒がひそひそと話していた。いまね、空に上ではタイヘンなことが起こっているんだ。それは落ちてくるの? もちろんだよ。そのときに地上の人間どもは――あっ。雨粒はくっついて地面に落ち、蒸発した。夏に聞いた話。


No.1350
雷は神鳴りとも書く。神様の超常的な力、あるいは姿その物だったりする。雷音と共に降臨した神様の姿に、ぼくは腰が抜けてしまった。「つかぬことを訊くが、この自動車はタイムトラベル可能か?」無理です。「まだそのレベルかぁ」雷音とともに走り去った。


No.1351
ある日の事。ぼくが縄跳びをしていたら、雲に引っかかったみたいに消えちゃったんだ。そんな馬鹿な。そこで友達と縄跳びを何本も結んでつないで投げたら、空に引っかかって垂れ下がった。ぼくらが登り始めたとき、雲の上でお釈迦様が二重跳びを始めた。


No.1352
偉大なる勝者に花束を。海底より川を遡り、滝を登り、天と地を逆転させた若者。敗者には新しい土地を。勝者に捧げる花が咲く場所。時が経てば、これは名誉ある仕事となりましょう。幼き手が花束を編み、老いた手に渡す時、天と地は再び混ざりましょう。



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