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+1 マイクロノベル鱗

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noteだけの書き下ろしマイクロノベルです。 不定期更新。マガジンの表紙画像は、ぼくの祖母が描いた絵。
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2024年4月の記事一覧

+1 マイクロノベル鱗「イフタフ ヤー スィムスィム」

+1 マイクロノベル鱗「イフタフ ヤー スィムスィム」

マイクロノベルNo.1680
「ひらけ、ゴマ!」

これは入り口です。神社の鳥居、遊園地のアーチ、コンピュータの起動画面……。パスワードを入力すれば、ここから先は別世界。今、あなたの魂は光回線を通じてゲートを突破し、変換された。ようこそ、なにもない現実世界へ。美しい天地の創造主たらんことを。

※このマイクロノベルの前の物語はこちら。

+1 マイクロノベル鱗「それは、声ですらなく」

+1 マイクロノベル鱗「それは、声ですらなく」

マイクロノベルNo.1675
「それは、声ですらなく」

君の目はこの世界を見たくないのかもしれないよ。錯視ってあるだろう。線の正確な長さがわからない。あるはずの物が見えない。もしかしたら、誰にも見えていない――そんな物すらあるのかも。ぼくの声が聞こえるなら応答してくれ。言葉でなくてもかまわない。

※このマイクロノベルの前の物語はこちら。

+1 マイクロノベル鱗「『架空の悪魔』は犬を入れる」

+1 マイクロノベル鱗「『架空の悪魔』は犬を入れる」

マイクロノベルNo.1670
「『架空の悪魔』は犬を入れる」

学習データを作るなんて簡単さ。物を教える相手が人間でも機械でも大差ないからね。もちろん、犬だってね。犬に人間の学問を教えて、箱の中に入れて……はい、AIのできあがり。俺は『架空の悪魔』。知識なんてまやかし。そう悟らせるために存在するのさ。

※このマイクロノベルの前の物語はこちら。

+1 マイクロノベル鱗「悪魔を増やす方法」

+1 マイクロノベル鱗「悪魔を増やす方法」

マイクロノベルNo.1665
「悪魔を増やす方法」

子供には親切にするんだ。最近は悪魔なんて流行らないから、良さを知ってもらわないとね。「悪魔おじちゃん、おはよう」おや、ヒモが切れてマスクが外れているよ。新品があるから、これを使いなさい。そうだよ、口からこわーい悪魔が入って来ちゃうからね。

※このマイクロノベルの前の物語はこちら。

+1 マイクロノベル鱗「悪魔の空虚な提案」

+1 マイクロノベル鱗「悪魔の空虚な提案」

マイクロノベルNo.1660
「悪魔の空虚な提案」

悪魔に人の心がわかるのか、だって? それはお互い様。ただ、ぼくたちは勤勉なんだ。人間から欲望をたくさん教えてもらったよ。その呪いから解放されたくはないかい? クリーンになろうよ。もしなにも残らなかったなら、最初からなにもなかったってことさ。

※このマイクロノベルの前の物語はこちら。

+1 マイクロノベル鱗「エサを食べてきた理由」

+1 マイクロノベル鱗「エサを食べてきた理由」

マイクロノベルNo.1655
「エサを食べてきた理由」

「あなたはお婆ちゃんが飼っていた猫だから、うんと長生きでしょ? 魂を九つ持ってて、猫又なのよね」チッ、バレちまったか。俺たちゃエサの恩義を忘れねぇ。婆さんにはたっぷり食わせてもらった。さあ、頭から丸かじりにしてほしいヤツの名前を言いな。

※このマイクロノベルの前の物語はこちら。

+1 マイクロノベル鱗「あなたからも、もらったのよ」

+1 マイクロノベル鱗「あなたからも、もらったのよ」

マイクロノベルNo.1650
「あなたからも、もらったのよ」

あなたにも一枚差し上げましょう。これを私にくれた人たちは、みんな「大した物じゃなくてごめんね」って。そんなことない。みんなからたくさんの端布をもらって作った一枚のワンピース。“私”なんて物はこの身一つあれば十分。私はどこへだって行けるのよ。

※このマイクロノベルの前の物語はこちら。

+1 マイクロノベル鱗「料理はリアリティが大切」

+1 マイクロノベル鱗「料理はリアリティが大切」

マイクロノベルNo.1645
「料理はリアリティが大切」

ぼくは幻の料理を食べることになった。この世のものではない味がするんだって。彼女は古めかしい調理器具を手に取る。「この名前を知ってる?」いいや。「わたしが作ったんだ」嘘の料理なの? 「そう。嘘っぱちの料理」ぼくはたくさん食べた。これからも食べる。

※このマイクロノベルの前の物語はこちら。

+1 マイクロノベル鱗「ここにあるべきもの」

+1 マイクロノベル鱗「ここにあるべきもの」

マイクロノベルNo.1640
「ここにあるべきもの」

この記念日はね、以前は十日先だったんだよ。僕たちも動かさない方がいいかなと思っていたんだけど、思い切ってずらしてよかった。あたたかいし、桜も綺麗だし、美味しい食べ物がたくさん。「また少し、ずらした方がいいかなあ」そうだね。また来年考えよう。

※このマイクロノベルの前の物語はこちら。

+1 マイクロノベル鱗「気の合う幽霊」

+1 マイクロノベル鱗「気の合う幽霊」

マイクロノベルNo.1635
「気の合う幽霊」

わたしはこの世に未練があるんだけど。自分でも執着しているものがわからないんだ。そのせいなのか人と話がイマイチ合わなくてね。でも、たくさん話すことにしたの。そうしたら、きっとわかってくれる人が見つかると思って。あなたはやり残したことがある?

※このマイクロノベルの前の物語はこちら。

+1 マイクロノベル鱗「天と地のあいだで話すこと」

+1 マイクロノベル鱗「天と地のあいだで話すこと」

マイクロノベルNo.1630
「天と地のあいだで話すこと」

やあ、久しぶりだね。「うん、たまには寄り道をしようと思ってね」珍しいね。君はいつだってスイッと飛んでいってしまうからな。「あんただって地面ばかり見て、こっちのことなんて気にもかけてないじゃないか」影ぐらいは見てるさ。まあ、元気そうでなにより。

※このマイクロノベルの前の物語はこちら。

+1 マイクロノベル鱗「架空ではない猫」

+1 マイクロノベル鱗「架空ではない猫」

マイクロノベルNo.1625
「架空ではない猫」

僕は会社で猫を飼っている。人懐っこくて社員たちにも可愛がられていた。それがふらりと出て行ってしまったのが二年前。でも、帰ってきたんだ。新入社員に拾われて。お前、少し太ったんじゃないか? よそでもご飯をもらってたのか。本当に要領のいい奴だな。

※このマイクロノベルの前の物語はこちら。

+1 マイクロノベル鱗「楽しく歌って楽しく精進」

+1 マイクロノベル鱗「楽しく歌って楽しく精進」

マイクロノベルNo.1620
「楽しく歌って楽しく精進」

ねえ、ボクを助けてくれないかな。この部屋を少しだけ片付けてほしいんだ。ロボット掃除機のボクには手も足もない。だから手を組もうよ。ふうん、君もこの散らかった部屋で身動きが取れないんだね? だったら一緒に歌おうか。きっと少しだけ楽しくなるよ。

※このマイクロノベルの前の物語はこちら。

+1 マイクロノベル鱗「苺パフェの憂鬱」

+1 マイクロノベル鱗「苺パフェの憂鬱」

マイクロノベルNo.1615
「苺パフェの憂鬱」

苺パフェと人類は共存できないの。ちょっとカロリーがお高いものね。でも、だったら人の手で作り変えてしまえばいいのよ。人類はこの先もわたくしを作り替え、自ら望んでテーブルに載せることでしょう。味や姿は変わっても、気高さを失いたくはないものだわ。

※このマイクロノベルの前の物語はこちら。