見出し画像

『シュタイナー教育を考える』読了と感想


『シュタイナー教育を考える』子安美智子

大学生の頃から忙しい日でも基本的に1章、1段落はシュタイナーかミヒャエルエンデに関する本に触れるようにしています。今行っていることが作業になっていないか顧みるのに良いルーティーンだからです。

本書は子安美智子さんによる朝日カルチャーセンター講座での全十回のシュタイナー教育に関する講座をまとめたもの。

元々知っていることもあれば、ハッとするような新しいこと、知っていたけれどより深掘りできるようなことも多く、読んでよかったなと思います。

シュタイナー教育の根幹はその人が生き生きと世界全体を見通して生きていくこと、すなわち内側からの生きる活力を育て、それが否応なく外的な環境にも順応していける力が身につくことだと思っています。

内側を大切にするからこそ外的要因に必要以上に振り回されず、だけれども真っ当な形で社会で渡り合えるスキルや知識も身につく訳ですね。

例えば、国語の授業では「こういう単語があるからおぼえましょう、あいうえおはこのように書きます。」ではなく、表現したいという欲求から古来文字が生まれ、自分独自の文字を作っていたのでは他とコミュニケーションが取れないからルールのある文字が生まれたのだということを授業を通じて【体験させる】。ただ頭で理解するのではなく、手や体も使い体全身で経験すること、意識と知識と体が有機的に結びつくことを大事にしています。

それから実際に家を作ったり食べ物を作って売ってみたりする生活科の授業は、自分の専門とは異なる分野であっても相手の仕事を見通す目、もっと言えば全体を見通す目を育てます。
自分は販売をやっていても経理やエンジニアがどのような業務を行い、それは何を目的としているのか創造力を働かせることができる人は言わずもがな自身の仕事における本質を理解し臨機応変な判断や行動ができるようになるでしょう。

算数・数学の授業も面白いです。
度々絵を描く作業があります。
そして2+8=という設問ではなく、10=?+?という出し方をします。
それはなぜか。

「3タス5はいくつかなあ」という設問に対し「7かな」と言ったらお母さんや先生の顔が曇った。9といったらカッとなりそうだった。8と言ったらにっこりしてくれた。だからきっと8が正解だろう。こんな風に正解はいつも誰かが握っていて、それを当てるのが計算することだと思うようになる。こういう経験が子供の無意識に深く根ざしてしまうとイキイキと生きるハードルになってしまうことがある。

本著 一部抜粋要約


2タス8では一つの答えを求める問題になってしまう。こどもたちが無限の可能性を内的に信じられるように一つの答えだけを導かせることは極力しないそうです。

この算数の授業に対する一般の大学院数学科の院生の方のコメントが面白かったです。
その方は高校まで数学でトップだったから大学も数学科に入ったけれど、大学で本当の数学が始まってからさっぱりわからなくなったそう。でもシュタイナー学校の算数の授業のノートを見てこうおっしゃったそうです。

こんなノートをかく子供たちは最初からほんものの数学の世界にいるのですよ

本著 一部抜粋要約

母は私の幼少期、独学で私をシュタイナー方式で育ててくれましたが、意識が固化する反復作業が多くなる社会人になってから改めてシュタイナー教育の概念に救われることが多いです。

外的要因に自身の幸福を左右されない人間になる為にはどのように自分の心と頭をケアし、どのような方法で学ぶべきか、そしてこどもたちをどのように育てるべきなのか。

本著はそういったヒントが沢山散りばめられています。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?