久藤さえ

短歌などをまとめていくと思います。

久藤さえ

短歌などをまとめていくと思います。

最近の記事

2023年掲載歌まとめ(と、ちょっと振り返り)

2023年に雑誌・新聞・ラジオ等で掲載や紹介された短歌をまとめました。媒体別、選者ごとに分けています。 最後に少し、2023年を振り返ってみました。 NHK短歌 【栗木京子選】 焼き増しをするねと言ってしなかった学祭のネガ光に透かす おつかれ、と後輩に手で伝えつつ定時間際の電話を受ける 「旅立ちの日に」を練習する声は羽ばたくための準備のひとつ 【笹公人選】 今晩は深い話になりそうな気がして鍋でココアを作る 家なのにカップめんの湯をコッヘルで沸かすあなたの楽しげな

    • 2022年掲載歌まとめ(と、ちょっと振り返り)

      2022年に雑誌・新聞・ラジオ等で掲載や紹介された短歌をまとめました。媒体別、選者ごとに分けています。 最後に少し、2022年を振り返ってみました。 NHK短歌 【田村元選】 カステラの色したバスは団地ゆき停車時間をやや長くとる この卓が一週間の目的地まずポテサラの山を崩そう 十の指わきわきさせていつまでも喋っていたいぬるめの足湯 シチューかけごはんが恋しい病院のシチューにパンのついてきた夜 【佐佐木頼綱選】 電話には明るい声で出ることのもう染みついてアネモネの

      • 2021年掲載歌まとめ(と、ちょっと振り返り)

        2021年に雑誌・新聞・ラジオ等で掲載や紹介された短歌をまとめました。媒体別、選者ごとに分けています。 最後に少し、2021年を振り返ってみました。 NHK短歌 【松村正直選】 雌鶏の土鈴はすわりよきかたち産むことのなき玉あたためて 姉ゆえに譲りしことの多かれど猿丸大夫の札は譲れず 六体の地蔵に六つのお猪口ありおのおのゆうべの雨を湛えて 玄関に寝そべる老いた犬の瞳は夏の盛りの庭を映せり 【小島なお選】 金曜は影まで重し両肩にお昼寝布団と子をぶら下げて もう犬は飼わ

        • 短歌連作『残夏(ざんか)』

          『残夏』 紙おむつに名前スタンプ押しながら年次休暇の残を数えり ひまわりと背比べしたことのない子にひまわりのTシャツ着せる 他人(ひと)の目があればやさしくなれるのに桃の葉ローションゆらす手のひら 寝言でもいやだいやだと繰り返す熱帯夜から逃れられずに 「むし」と子の指した骸に「せみ」の名を与え直してやったつもりか 鳥籠の時間とおもう体温計さえずるまでの三十秒を 一人きりの病児保育のおみやげにすいかの風船抱えて帰る 「わたし」という言葉をきみは手に入れて夕立前の

        2023年掲載歌まとめ(と、ちょっと振り返り)

          2020年の掲載歌まとめ(と、ちょっと振り返り)

          2020年に雑誌・新聞等に掲載された短歌をまとめました。媒体別、選者ごとに分けています。 最後に少し、2020年を振り返ってみました。 NHK短歌【大辻隆弘選】 夕立をプールの底から見るようにあなたの言葉は遠く感じる 君はどこへ行きたいんだろうふたり乗り自転車が長いカーブに入る 【江戸雪選】 祝日は風の匂いの誘うまま一人と一匹長い散歩に 【佐伯裕子選】 ロッカーの鍵だけ手首に巻きつけて私は私を証明できない 【松村正直選】 ひたひたのミルクの波が夢にまで出てくるフレン

          2020年の掲載歌まとめ(と、ちょっと振り返り)

          筆名の由来と三つの名前の話

          あの井さんの記事に触発されて、私もホイホイ書いてみる。 今の筆名を考えたのは、中学生のとき。その頃、私は本を読むのがほぼ唯一の趣味で、毎週末図書館に通い、何の根拠もなく将来は本を書くんだと思っていた(ひとつも物語書いてないのに)。 将来作家になったらどんな筆名にしようかなあと考えて、呼ばれても恥ずかしくないように本名と近い感じで、「あ」行か「か」行で始まるものがいいと思った。なぜ「あ」行と「か」行かというと、図書館で本を選ぶとき、私は必ず「日本の小説」の書架を「あ」から順番

          筆名の由来と三つの名前の話

          短歌連作『ミッキーの舌』

          『ミッキーの舌』 八月の地球は滅びろ全力でラジオ体操に遅れそう Tシャツにプリントされたミッキーの舌ひび割れたまま乾いてく 草刈りの音で目覚めてきみんちのチャイムはやっぱ押せなかったよ スイミング帰りのバスは気怠くてこんなに息をしている不思議 きみんちの犬はかしこい 僕じゃなくずっと遠くの雲を見据えて 仲直りのチケットとして差し出したばんそうこうはバッドばつ丸 あいこだねヤン坊マー坊天気予報あしたになればきっと忘れる E.T.の似てない真似の指先にそれでも触れ

          短歌連作『ミッキーの舌』

          短歌連作『夜の国』

          『夜の国 ーやなぎみわ展 神話機械ー』 My Grandmothers 二度とない今夜を愉しく生きるのさ化粧の上に化粧重ねて 冬の森つもりつもれば目覚めない朝も仄かな希望になった Fairly Tale 午前0時鏡を見れば一夜ごと老いるわたしの手に毒林檎 エレンディラ、帰っておいで 白鯨の歌は砂漠に響きつづける 髪も歯も骨もさらさら喪って死ぬまで砂を産む器たち 女神と男神が桃の木の下で別れる あたたかく湿った風と桃たちの吐息の混じりあう夜の国 桃の実にうっとりと

          短歌連作『夜の国』

          愛をこめて薔薇100本の花束を(後編)

          2019年3月1日から、まいにち歌会をやっているオンライン歌会サイト「うたの日」に参加しています。 「うたの日」で薔薇(首席)をいただいた短歌が100首になったので、後半の50首をまとめました。 ちなみに前半はこちらです。 上から順に古いものから並べていますので、一番最後が最も新しいものです。 短歌のあとについている『』内が、そのときのお題となっています。 大げさだけど受け取ってください! まだそれの名前を知らぬおさな児が飛行機雲をまっすぐに指す 『白』 旋律がやがて分か

          愛をこめて薔薇100本の花束を(後編)

          2020年5月「うたの日」から自選五首

          『学校あるある』 帰り道ノーブレーキで風を切るために校舎は高台にある 『自由詠』 めがね屋でめがねをかけた店員がめがねの客にめがねを売った 『躾』 母の手でほどかれてゆくしつけ糸わたしのための藍が目覚める 『藤』 なぁ工藤もろたで工藤ほな工藤なんやて工藤せやかて工藤 『もっと』 あなたならもっとやれると言われてもわたしは石を拾っていたい 西の高校生探偵はスベったらどうしよう、と思いながら出した一首でした。 作っているあいだに脳内でめっちゃ声が再生されてニヤニヤしてい

          2020年5月「うたの日」から自選五首

          寝る前に聴くハロプロの曲③

          月イチになりつつありますね。 もっとバンバン書きたいんですが……。 Juice=Juice『ポップミュージック』この曲はカバーで、原曲を歌っているのは作詞・作曲のKANさんです。 KANさんについて「小刻みに揺れながらキーボードを弾いている愛は勝つのひと」というイメージしかなかった私は、KANさん版のMVを見てびっくりしました。 これですこれ。 WikipediaによるとKANさんは現在57歳だそうです。めっちゃ軽快に踊っとるやん。 ハロプロとは所属事務所が同じ系列で、過

          寝る前に聴くハロプロの曲③

          2020年4月「うたの日」から自選五首

          『マトリョーシカ』 眠そうなマトリョーシカの末っ子よ春はまぶしい季節なんだよ 『緊急事態を2200倍元気に過ごす方法』 スパイスからカレーをつくるとき用のプレイリストをまず整える 『やまいだれ』 隣人はとても音痴でこの春を生きているから歌うんだろう 『潮』 幼子に血潮の意味を尋ねられきみが聴いてた海の音だよ 『ルール』 「またな」とは決して言わずに二段階右折で去ってゆくんだきみは 今しかできない歌もあるかなぁと少し意識して、でもそればっかりというわけでもない四月でし

          2020年4月「うたの日」から自選五首

          2020年3月「うたの日」から自選五首

          『笑』 むせるほど笑ったあとの原っぱに寝転ぶようなひとときが好き 『港』 ベランダは風の港で手を振ったりすこし泣いたりしていいところ 『マスク』 マスクしたカバのイラスト貼り付けて保健だよりの完成とする 『砂』 陽炎のように溶けだす角砂糖ほほえみながら言い訳を聞く 『姉妹』 東京は雪です 春の配合を阿佐ヶ谷姉妹が誤ったので そういえば3月の終わりに雪が降ったのでした。桜が咲いているときの雪を「桜隠し」というのだと、初めて知りました。 3月の途中でめでたく出詠しないま

          2020年3月「うたの日」から自選五首

          寝る前に聴くハロプロの曲②

          1ヶ月ぶりです。 春っぽいと思う2曲について書きました。 アンジュルム「Uraha=Lover」作詞・作曲は山崎あおいさん。まだ20代の女性シンガーソングライターです。「ひとそれ」ことJuice=Juiceの「「ひとりで生きられそう」って それってねぇ、褒めているの?」もこの方ですね。 タイトル通り、鍵盤のきらきらした音とギターの激しいメロディーが一緒に聴こえてきて、ウラハラ感!と思いました(語彙力がない)。 衣装がウエイトレス風でかわいい。メンバーカラーの衣装や、あえてみ

          寝る前に聴くハロプロの曲②

          寝る前に聴くハロプロの曲①

          なぜ寝る前にハロプロの曲を聴くのか最近、毎日寝る前にハロプロの曲を聴いています。 きっかけは昨年の12月から今年の1月頃にかけて、Twitterのフォロワーさんにモーニング娘。やアンジュルムのファンの方々がいて、相次いでおすすめの曲などを紹介していらっしゃったことです。 そのときの私の知識は、 モーニング娘。→5期が加入したところまで アンジュルム→アンジュルム婚で話題の…… その他のグループ→こぶしとつばきがあるらしい というくらいで、今のグループの人数やメンバーの顔も名前

          寝る前に聴くハロプロの曲①

          2020年2月「うたの日」から自選五首

          『留守』 織田裕二もう見飽きたよぱさぱさの黒糖パンは留守番の味 『再』 ふたたびの春の手前のなんとなく隙間の多い校舎が好きだ 『籍』 戸籍課のスフィンクス似のおじさんは今日も今日とて生死を捌く 『バス』 バイバイと手を振る吾子に祝日のバスは小さな旗でこたえる 『小』 小数点以下切り捨ててよそゆきの白いコートで立つ無人駅 小学生の頃、夕方の再放送はなぜか織田裕二の出ているドラマが多かったのです。 「振り返れば奴がいる」とか「お金がない!」とか。 3月1日で「うたの日」

          2020年2月「うたの日」から自選五首