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短歌連作『ミッキーの舌』

『ミッキーの舌』

八月の地球は滅びろ全力でラジオ体操に遅れそう

Tシャツにプリントされたミッキーの舌ひび割れたまま乾いてく

草刈りの音で目覚めてきみんちのチャイムはやっぱ押せなかったよ

スイミング帰りのバスは気怠くてこんなに息をしている不思議

きみんちの犬はかしこい 僕じゃなくずっと遠くの雲を見据えて

仲直りのチケットとして差し出したばんそうこうはバッドばつ丸

あいこだねヤン坊マー坊天気予報あしたになればきっと忘れる

E.T.の似てない真似の指先にそれでも触れてくれてありがとう

ひとこと

短歌連作サークル誌「あみもの 第三十一号」に投稿した連作です。
90年代、小学生だったころの夏を思い出しながら編みました。
一首目のラジオ体操の歌は、小学生の私が心の底から思っていたことです(笑)朝が弱くて、ギリギリの時間に母に文字通り叩き起こされ、毎日集合場所までビーサンで走っていました。6時過ぎでも、蝉はめちゃめちゃ鳴いてるし陽射しもそこそこ強いし、なんで地球はこんなに夏なんだ!このまま滅べ!とか半泣きで走りながら思っていました。あと、起きてすぐに走ったら心臓に良くないだろ!とも思っていました。なら自分が早く起きなさいよ。
そんなに嫌なら行かなきゃいいのに、皆勤の景品(うちの地区は図書券とお菓子でした)が欲しいのと、妙に真面目な頭の中の自分が邪魔をして、結局行くという。
ひとつ前に住んでいたマンションはすぐ隣が公園で、夏はラジオ体操の会場になっていました。小学生たち、6時前からぞろぞろ集まってきてゲームとかしながら始まるのをゆったり待っている姿勢だったらしい(早起きの夫から聞きました)。すごい。かっこいい。
今年引っ越しして、ラジオ体操に集まる子どもたちは見かけなくなりました。それとも、今年は夏休みが変則だったことやコロナの影響でところによっては中止だったりしたのかな。
ひとことじゃなくなりましたね(笑)ではこのへんで。