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愛をこめて薔薇100本の花束を(後編)

2019年3月1日から、まいにち歌会をやっているオンライン歌会サイト「うたの日」に参加しています。
「うたの日」で薔薇(首席)をいただいた短歌が100首になったので、後半の50首をまとめました。
ちなみに前半はこちらです。
上から順に古いものから並べていますので、一番最後が最も新しいものです。
短歌のあとについている『』内が、そのときのお題となっています。
大げさだけど受け取ってください!

まだそれの名前を知らぬおさな児が飛行機雲をまっすぐに指す 『白』

旋律がやがて分かれてゆくように西武線との淡い併走 『律』

従順な羊たちにも意思はありB定食の列が短い 『列』

コカ・コーラのサンタが怖い 欲望に忠実すぎる顔をしている 『サンタクロース』

後ろにも前にも道は見えなくてD判定の僕に降る雪 『雪』

過去形でゆるゆる回るオルゴールきみは最後も泣かなかったね 『過』

それなりに狡い女の自覚あり 縞目に剥いた茄子はうつくし 『茄子』

面紐を引き結ぶとき一切の音は私を置き去りにする 『剣』

僕だけの迷宮を秘めジャポニカの表紙のオウムは瞬きもせず 『オウム』

戦友でいたかったんだ朝焼けをサービスエリアで浴びたときから 『サービス』

めでたくもなんともないな蛍光灯ひとりで替えたあとの拍手は 『灯』

先生はなにも訊かないストーブの湯気ふくふくと満つ保健室 『ストーブ』

めいっぱいぶつけたはずの花びらも君が浴びれば祝福になる 『浴』

春っぽいパーマだねって触れられて毛先がもっと嬉しくなった 『嬉』

水たまりみっつ飛び越え春になるバレエシューズの小さなリボン 『舞』

痩せてゆく猫の背中を手のひらで往復すればまだとおい春 『痩』

嫌なことはちゃんとイヤって言おうねとしまじろうから教わっている 『マジ』

助手席にまどろむ君を乗せたまま千葉のお腹へ着地してゆく 『県』

右耳にプールの水を溜めたまま巻き貝になる夢をみました 『溜』

陸橋を上れば桜に触れそうでそれもひとつの春の引力 『陸』

エイリアンばかりだ(俺も)真夜中のネカフェに四角い宇宙が並ぶ 『エイリアン』

生え際の産毛をなぞり合いながら春の動物らしく笑おう 『産』

パーカーを羽織ってコンビニまで歩く花の名前を教わりながら 『羽』

まあ好きにやんなさいよと母さんは二時間ドラマを見ながら言った 『二』

一枚の絵に立ち止まる人もまた絵になる午後の展示室Ⅲ  『絵』

カロリーの爆弾みたいな菓子パンを食べなきゃ越せない夜もあるのさ 『子』

体育の先生みたいな五月晴れぼくの猫背をゆるしてほしい 『育』

今日晴れてよかったねって無印へ棚を見に行くだけの日曜 『棚』

新人に頑張れなんて言うほどの俺じゃないからどら焼きを置く 『どら焼き』

「万引きは犯罪です!」とにこやかに告げる創英角ポップ体 『英』

「ありがとうございました」と打つときの小指の音までやわらかいひと『小指』

ふるさとの夏は短く軽トラの後ろの窓をまた振り返る 『窓』

秘密とはチェルシーに咲く花のこと姉のピアスがまた増えること 『飴』

ダンス部が昇降口で踊ってるもう影だけなのに踊ってる 『ダンス』

お見舞いのゼリーには手をつけぬまま庭の心配ばかりする伯母 『ゼリー』

何らかのヒントをくれそうでくれないローソン前に座るじいちゃん 『ヒント』

真夜中のタイムラインをスクロールして覗きこむ星の裏側 『ROLL』

トラピストバターの缶に貝釦ひとつ遺骨のように残りぬ 『バター』

爬虫類館がいちばん涼しくて言葉のいらない夏を見ていた 『類』

プラレールの橋を壊したかいじゅうは涙を頬に残してねむる 『橋』

海風に耳すませても金管のチャンステーマの聴こえない夏 『チャンス』

珈琲にしるこサンドが添えられてあだ名で呼ばれたようにうれしい 『餡子』

詩人っぽい帽子をふたつ買った日をGoogleフォトがまだ覚えてる 『詩』

ダメージのあとは無敵になれるから傘もささずに駅まで走る 『ダメージ』

陰口の花咲く午後のくちびるにミックスベリータルトこぼれて 『ベリー』

友情は紙せっけんと引き換えで絶交なんて羽根より軽い 『友』

原形はファイトだったのかもしれない外周走る野球部の声 『ファイト』

神職の揃えられたる襟足に光る汗あり夏越の祓 『大祓』

ふたつめの金魚の墓を作る朝 感想文は終わりから書く 『文』

サンダルを脱いでひとりの波際の負けてうれしい花いちもんめ 『負』


最後までお読みくださり、ありがとうございました。
そして、うたの日やTwitterなどでご一緒させていただいている皆さま、いつもありがとうございます。
私は自分一人だけで黙々と短歌を詠みつづけることはできない人間なんだなと日々感じています。
これを一つの区切りにして、いったんうたの日への参加はお休みして、自分のやりたいことについて考えてみようかなと思っています。各種投稿やいちごつみは当面続けます!
これからも、どうぞよろしくお願いいたします。