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『人生100年時代』に求められること

5年ほど前、石倉洋子先生(一橋大名誉教授)が個人ブログで「読みかけだけど、我が意を得たり!」と紹介された書籍『The 100-Year Life』

Lynda Gratton先生、 Andrew Scott先生(共にロンドン・ビジネススクール教授)の共著で、邦訳版は『ライフ・シフト』として東洋経済新報社から出版されました。

本書の内容で一番インパクトがあったのは、『人生が100年になる』というメッセージ。

2020年の日本人の平均寿命は、「男性が81.64歳」「女性は87.74歳」

毎年、平均寿命・健康寿命ともに伸び続けています。

👉健康寿命:健康が維持され、自律して生活ができる期間。ざっくり、平均寿命のマイナス8歳〜12歳前後で推移。

多くの人が『人生80年くらいかな?』と漠然と思っていたところに、リンダ先生から「2007年生まれの子どもの半数は107歳まで生きうる」ときりこまれて、びっくり。

確かに、医療技術や医薬品R&Dの加速度的な進歩を考えれば、現在死因No.1の「悪性新生物質(腫瘍)」も『治る病気』になり、寿命が伸びていくことは必至

予防医学、栄養学、公衆衛生等の前進も考え合わせると『人生100年時代の到来』は納得できます。

リンダ先生は、この思ったより長い人生にあって、これまでの『学校で学んで、仕事に就いて、仕事終えたら老後』のような、典型的な「3ステージで完了!」とする生き方は終わり、もっと多様な生き方、働き方が登場するであろうと洞察。

新しく登場するステージとしては、

①「新たな自分を探究する探検家(者)」
 (エクスプローラー)
②「独立事業者」
 (インディペンデント・プロデューサー)
③「複業者」
 (ポートフォリオ・ワーカー)

など。

②③は、すでに「起業」「独立」「複業」「副業」などに果敢に取り組まれている方が多数いて、あたりまえの世界になりつつあります。

個人的に最も関心があるのは、①の『新たな自分の探究』のステージ

知らない世界を旅したり、学んだり。「探検家」「探究者」としての時代。

探検・探究・冒険等を通じて自らの価値観を問い直し、自分のアイデンティティと役割をじっくりと考えてみる。何が重要なのか、かけがいの無いものは何か?。

探検・探究には、リアルな旅だけでなく、メタファー(隠喩)としての「旅」も。

「学校へのリカレント(回帰・循環)」は、探検・探究にあたっての一つ選択肢。

大学やプロフェッショナル・スクール(専門職大学院)、ビジネススクール等、新しい世界に身をおいての学び。

👉専門職大学院:法科・教職・経営・技術経営(MOT)・会計・公共政策・公衆衛生・知的財産・臨床心理などの分野を対象として開設。夜間・土日開講も。
👉ビジネススクール:2年間で経営の基本(経営戦略、財務・会計、組織人事、マーケティング、生産管理など)を学ぶ。伝統的な昼間制の学校だけでなく、夜間や土日開講の学校も。修士論文が必要の無い学校も増えました。単科もあり。

学校へのリカレントは、『新たな知(世界)との遭遇』。

「指導者」「同期」「先輩」「後輩」との繋がりから、『自分のあり方が問われる(攻め込まれる)場面』が多く、知識だけで無く「自分の価値(観)」を探究できるすぐれた「場」になります。

リンダ先生、「マルチステージの時代」にあって、重要なのは『無形資産』とも指摘。

👉無形資産
1. 生産性資産:主に仕事に役立つ知識やスキル
2. 活力資産:健康や、良好な家族・友人関係
3. 変身資産:変化に応じて自分を変えていく力

リンダ先生が指摘する個人の「無形資産」のうち、最も興味深いのが『変身資産』。

👉変身資産:変化を成功させる意思と能力。「自己理解」「新しい経験に対して開かれた姿勢」「多様性に富んだネットワーク」など。

「変身」をはかるには、「自己理解」「開かれた姿勢」など、自らのマインドセットが基本にある一方、変身に必要な『探検・探究・冒険を後押しし、応援してくれる人』の存在が極めて重要。

『変身のファシリテーター(促進者)』役を担ってくれる人を身近なところにおくこと。是非心がけたいです。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました!!

(続く)


写真:ノルウェー/フィヨルドに囲まれる「フロム港」に停泊する大型クルーズ客船/2014.7.15

📕 ‎『The 100-Year Life: Living and  
  Working in an Age of Longevity』
  Lynda Gratton ,Andrew Scott
  Bloomsbury Information
  (2016/6/2)

📙『ライフ・シフト-100年時代の
  人生戦略』
  リンダ・グラットン先生
  アンドリュー・スコット先生
  東洋経済新報社 (2016/10/21)

📘『The Shift: The Future of Work is  
  Already Here 』
  Lynda Gratton
  Harpercollins Pub Ltd
  (2011/7/15)

📗『ワーク・シフト』(邦訳版)
  リンダ・グラットン先生
  プレジデント社 (2012/7/28)

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