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上村松園に見る珠玉の美人画/日本画入門

 「絵の横道」13回目

僕が日本画入門として皆さんにお勧めするのは、何と言っても上村松園です。

先週、代表作「序の舞」をご紹介しましたが、今日はまず下の「牡丹雪(ぼたんゆき)」からご覧下さい。

15上村松園_牡丹雪1944年

<牡丹雪 1944年 山種美術館所蔵>
女性の鶯色の着物をご覧下さい。岩絵の具を使う事によって生まれる日本画特有の色彩の美しい事!
又、この空間の間合いとでもいうべき絶妙の構図も素晴しいものです。対象を立体的に描かず平面処理で描く日本画ならではの構図の妙です。

こちらは「庭の雪」
美しい面立ちの女性と彼女の纏っている着物の美しさ、襟元と素手口にのぞく鮮やかな紅。それは口にさした紅の色とも呼応し「さし色」の役割を見事に果たしています。傑作ですね。

15上村松園_庭の雪_山種

<庭の雪 山種美術館所蔵>


こちらは「静」
源義経の側室であった京の白拍子「静御前」を描いた図です。
こちらも空間に絶妙の配置で静が描かれています。この紅の鮮やかな事!
今度はブルーがさし色に使われていますね。

15上村松園_静

<静 東京国立近代美術館所蔵 >


こちらは「砧(きぬた)」
夫の帰りを待ちわびる切ない思いを託して奥方が砧を打つ、という能の「砧」を題材とした作品。
気品とは正にこの絵に或るようなものを言うのではないでしょうか?

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<砧 1938年 山種美術館所蔵>

如何でしょう、上村松園。

上村松園の素晴しさは気品と誰の目も引きつけないではおかないポピュラリティが同居している所にあります。単に入門としてではなく、見る者を捉えて離さない叙情溢れる奥深さを備えた作品といえます。

松園の絵は、東京でしたら何と言っても渋谷の山種美術館をお勧めします。

松園の絵を何枚も所蔵していますし、館内にはcafe椿というカフェが併設されていて、展示内容に即してその都度オリジナルの和菓子等も用意されています(青山の老舗菓匠「菊家」に特別にオーダーされたもの)。絵を見た後に駒沢通りの銀杏並木をガラス越しに眺めながら、お抹茶とともに菊家の和菓子を頂くのも素敵な休日の過ごし方かと思います。

15山種

<写真/山種美術館HPショップ&カフェ/許可を頂いて転載>

近年人気が低迷していると言われる日本画の良さを改めて皆さんに知って頂ければ、と思い今日はこの記事を書きました。

本当にいいですよ、山種美術館。
私も何度も足を運びました。
*展示内容や和菓子につきては、必ず事前にご確認下さい。
山種美術館/お問い合わせ TEL:050-5541-8600 (ハローダイヤル)



*上村 松園 1875年〜 1949年 日本画家
 女性として初めて文化勲章を受章

<もりおゆう© この美術エッセイは著作権によって守られています.>
(Yu Morio© This art essay is protected by copyright.)



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