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家の中に神様のいた時代/昭和

 「僕の昭和スケッチ」125枚目

<「大きな農家の勝手口」©2022 画/もりおゆう 水彩 F5>

昔の家の柱には護符が必ずと言っていいほど貼ってありました。

護符というのは、昭和生まれの方は大抵ご存知ですね。
神仏の名や形像を描いた紙の札のことです。霊験あらたかなものとされ、厄除け、魔除、開運、加護などのために貼られていました。

昔は木造建築ばかりですので、火災は人々が最も恐れた厄災でした。
ですので、台所に貼られた護符が一番多かった訳です。

その護符には、キツネを描いたものやどこか怪奇な図も多く、子供たちにはそれが畏怖の対象となりました。

上の絵は、子供の頃に黒野村*の従姉妹が「天井の方から白い狐が入って来る」と恐れていたのを絵にしたものです。

「その白狐には何本もシッポがあったんじゃ!」
と彼女は訴えていました。
農村ならずともまだ迷信が強く残っていた時代です。
護符への畏れが彼女に怖い夢を見させたのでしょう。

(もちろん、狐は神様に使える特別な動物として護符に描かれている訳で、決して禍々しいものではありません)

その古い農家もその後現代風に立て変えられたとのことです。台所にあんなに沢山貼ってあった護符も今は無いでしょう。
従姉妹とは何十年も会っていませんが、もう一度会ったらお婆さんになった彼女に白い狐の話を聞いてみたいものです。

*護符は今でも神社で売られています. 何と!Amazonでも売られているのです. 本来の意味とは離れて、室内装飾の一環としてとして飲食店などに貼られているケースもあるようです. ご時世と言う感あり.
*黒野村 岐阜市の北部にある農村地帯

<©2022もりおゆう この絵と文は著作権によって守られています>
(©2022 Yu Morio This picture and text are protected by copyright.)



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