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第8話 つながり

小学2年生の秋、スギタ君は帰らぬ人となった。
死因は肺出血らしい。

つい1週間ほど前まで僕の話を和やかに聴いてくれていたスギタ君は、もういない。
もっと僕の話をたくさん聞いてほしかった。
約束通り、2年生をやり遂げた姿を見届けてもらいたかった。
強くなったなと褒めてもらいたかった。




翌年の春、僕は無事2年1組を終えた。
スギタ君と交わした約束を破ることなく。

M山はクラス最終日、気味が悪くなるくらい熱い涙を流していた。
「この1年、最高の時間だった。ありがとう。」
虫の居所が悪いと躾という名の暴力を加え、休み時間には肩を揉む下僕を囲い、そんな事実を知らない呑気な保護者からは称賛の声を浴び続ける。
それはさぞ最高の時間を過ごしたことだろう。



M山という監獄から解放され3年間、鼻つまみ者という肩書は健在だったが
その後もスギタ君との約束を守り続け、小学6年生を迎える。

新学期初日、配られたプリントに目をやる。
6年2組に僕の名前があった。
同じクラスには、当時密かに好意を抱いていた子の名前もあった。
最高だ。僕はすっかり浮かれていた。

スギタ君、見てくれてるかな。

校庭に集まり、校長先生のアナウンスにより担任の先生が振り当てられていく。



次の瞬間、校長先生の放った一言が僕を奈落へ突き落す。









「6年2組、M山先生」

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