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半袖に飽きた

8月14日月曜日。
お盆休み。
特に人と会う予定も意欲もなかったため
家族と一緒に近くのショッピングモールへ買い出しに行った。


人工的かつ必要以上に冷された店内。
生活用品コーナーに陳列された盆提灯や線香を眺める。

「そうだ、そういえばこの間までこれを売る側の人間だったんだ」

前職で某仏壇屋の営業マンをしていた僕は
うつ病を発症する寸前までの「完璧な人生」を送っていた頃を思い出していた。

吐く事への恐怖なんか忘れて、友人と酒を飲み明かしていたこと。
電車に乗り、恋人といろんな場所へ遠出をしていたこと。
学生の頃からの付き合いのみに留まらず、幅広い人間関係を築けていたこと。
仕事や趣味などをはじめ、生きる事への情熱が滾っていたこと。


「完璧な人生」を前借りしたツケを払いながら地獄のどん底を自力で這い上がってきたし、非力なりに自己研鑽をし続けてきた。
そんな自分を今は認めている。25年生きてきて、今の自分が一番好きだ。
「俺には俺がついている」今ならそう言える気がする。

ただそんな好きな自分が、極めて狭い世界でしか生きることが出来なくなってしまった現状を、まだどこか受け入れられずにいるのかもしれない


服が着たい。夏服のような必要最低限のものではない。
心が躍るような布を纏って、一見"無駄"にも見えるような美学を愉しみたい。
そしてお気に入りを纏った自分を、まだ見ぬ場所に連れて行ってあげたい。
五臓六腑に染み渡るような、感動を味わわせてあげたい。



それが叶う日は、いつ来るんだろう。
夏が終われば、叶うのかな。

25歳訳アリ人間の、ないものねだり。









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