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第5話 うそつき

次の日、嗚咽をしながら学校へ向かった。
そこには想像以上の地獄が待っていた。

思い扉を開くや否や、静まり返る教室。
クラス中がこちらに釘付けだ。
無論、モデルやスターを見つめるそれとは全くもって違う。

やめろ、そんな目で見るな。


M山が教室に入ってくる。
軍隊のような朝礼を終えた後、高らかに声を上げる。
「俺から逃げようなんて馬鹿なことは二度とさせないからな。
こいつと同じようなことをしようものなら覚えておけ。」
こうして僕は、M山のおもちゃとなった。


ある日、僕がゲームをしていたとM山にタレコミが入った。
だが、親の教育方針でゲームを買い与えられていない僕はゲームなんてしようがない。

放課後、一人教室に残された。

「お前、俺の言いつけを破ったな。」
「いいえ、ゲームなんて持っていないのでできません。」
「学校を逃げ出すようなクズの言う事なんて誰が信じるんだ。」
「本当です。信じてください。」
「うそつきが。また逃げるのか。そうはさせねえぞ。」
M山に詰問され続け、"噓をついていた"という嘘をついた。
次の瞬間、僕は廊下へ引きずり出され、暗い教具室へ閉じ込められた。

あまりに一瞬の出来事で理解が置いつかず、恐怖することすら忘れていた。
突然、暗闇の中で体を弄られた。
近くに鼻を劈くような汗と脂の入り混じった悪臭と、かすかな吐息が聞こえた。間違いなくそこにM山がいた。
その後の事はよく覚えていない。人間の脳は良く出来ている。


そんな日が続き、ある日母親にM山の「躾」について打ち明けた。
母親から返ってきた言葉はたった一言
「あなたが悪いことをしてるからじゃないの。」
だった。
やっぱり僕はうそつきだった。



僕にはクラスで唯一、仲の良かった女の子がいた。
Yさんという女の子だ。
小2でうちの小学校に越してきたYさんは
鼻つまみ者だった僕と関わってくれる数少ない人間の一人だった。
そして、僕を除いてM山に洗脳されていない最後の生き残りだった。


ある日、Yさんの連絡帳の1ページがM山に破かれた。
どうやら学校での「躾」に対してのクレームを書かれたのだろう。
「親に密告しようなんて甘い考えは通用しないからな。かかってこいよ。
そんな事をしようもんなら覚悟しとけよ。」






次の日、Yさんは学校に来なかった。

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