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第6話 ごめんなさい

次の日、Yさんは学校には来なかった。
その次の日も、またその次の日も。


M山は醜く脂ぎった顔をにやつかせながら言う。
「あいつの親は過保護だ。親が馬鹿だから子供も馬鹿になる。
お前ら、あいつが来ても優しくなんかするなよ。」

終始、此奴が何を言っているのか理解できなかった。
不登校の子を暖かく迎えてあげようとするのが教師ではないのか。
そもそもお前はYさんが来られなくなった諸悪の根源じゃないか。

そう思い周りを見渡すと、2年1組の連中は嗤っている。
そこにはもう「生き残り」はいなかった。


その後数回学校に来るも、結局Yさんは転校した。
今はどこかで優しさに囲まれながら生きてくれているだろうか。


すっかりM山の「お気に入り」となった僕は、謝るのが上手くなった。

ごめんなさい。


ごめんなさい。



ごめんなさい。



先日、母親がその頃の作文や日記などを見つけたらしいが
とにかく訳も分からず謝っていたという。
「給食を食べきれなくてごめんなさい。」
「宿題もできないようなダメな人間でごめんなさい。」
僕が大学に進学してから、約10年越しに「躾」の真相を知った母親は
それらを全て処分したという。

M山はどういうつもりで、これを平然と受け取り、花丸をつけていたのだろう。



僕はその後も何度か脱走を繰り返すが、とある男との出会いが
この脱獄人生に終止符を打つことになる。


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