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YUKIになりたいガール

目が覚めたときに体と心が気づいた。今日はとびきりの一日になる。絶対に外に出なければならない。そうしなければ絶対に後悔する日だ。長年生きてると、こういう勘が働く。

まずはシャワーを浴びる。まだ5月折り返しになったばかりだが、部屋に冷房を効かす。スキンケアをしながら髪を乾かすと、簡単に化粧をする。次は着る服を選ぶ。暖かいから半袖で大丈夫だろう。nano universeのストライプの半袖シャツとリネンの七分丈のパンツを選ぶ。夏の好きなところは、こうして簡単に支度がすむところもある。音楽はYUKIの新しいアルバム「Terminal」を聴いていくことにした。

目的の場所は決めてある。何度か通った道にあるカフェだ。気になっていたがいつも店の前を通るときは休みだったり営業時間外だったりしてたので、今日こそ行ってやろうと思う。

案の定、外はとてもよく晴れていてカラッとしていて気持ちいい。半袖を通り越してタンクトップで自転車に乗ってる男性もいた。

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店に入って驚いた。今まで私の耳の中で流れてた「My lovely ghost」と同じ曲が店内で流れていたのだ。やっぱり今日は良い一日になりそうな気がする。

店長さんは若い女性で、驚くほど細く金髪のショートカットがよく似合っていた。店内は女性客が2組ほどいた。店員さんが私の席を用意してくれ、レモン入りの水のピッチャーを運んできてくれた。

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食事はワンプレートの定食にした。おかずを2品選べたので、エビフライとチキンステーキにした。エビフライのタルタルソースもチキンステーキのねぎソースも美味しかった。

せっかくだからと思い、イヤホンを外し店のBGMを聴いた。YUKIのほかにはCHARAや椎名林檎や大橋トリオなどが流れていた。店長さんの趣味だろうか。

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私の向かいの2人組の女性が常連客で、西瓜を店長さんに差し出した。店長さんが西瓜を切り運んできた。私の前にも置かれたので、私は常連客にお礼を言った。西瓜なんて何年ぶりに食べただろう。みずみずしい紛れもない西瓜の味。赤いジュースみたいな味。

食事が終わると会計をすませ、お気に入りのパン屋さんでパンを買って帰ろうと思った。でも歩いてる途中で気になってた酒屋さんが目に入った。

とても立派な老舗の門構えをしてる。休みなのかと思うほどそこは冷たくしんとしていたが、営業中の看板が出ていた。少しおっかなびっくりな感じで扉に近づくと自動ドアが開き、若い男性がエコバッグに買ったお酒と思われるものを入れて出てきた。

私はそのまま店内に入った。さっきの男性と入れ替わるようにして、店内には店主と私しかいない。ぐるっとお店を見て回ったが、店主がこだわってお酒を置いてるのがわかった。お酒にくわしくない私でもそれがわかるような店だった。

生姜のリキュールが目に止まった。とても美味しそうだったがどんな味がするのかわからないので、店主に味を聞いてみたら「飲んでみますか?それが一番早い」と言ってくれ、お猪口にリキュールを注いで出してくれた。

一口、飲むというより舌につけるようにすると、ものすごい生姜の香りとスパイシーな味が広がった。私が美味しさに驚いてると店主は「すごくよくできてるお酒ですよ」とリキュールを作ってる酒蔵の話などをしてくれた。

「ここはビールはないですか?」と聞いたら「ビールは地ビールを少ししか置いてないですね」と教えてくれたので、地ビールが好きな好きな人に今度会うときのお土産にしようと、生姜のリキュールと地ビールを買った。

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家に帰るころには、少しだけ飲んだリキュールが回っていた。少量だけど15度のパンチはなかなかだ。

化粧を落とし部屋着に着替えベッドに寝転がった。聴けてないラジオを聴こうと思ったが、YUKIの曲が気持ちいいままなので、このまま聴いていようと思った。とても強くて優しくて、すべてを受け止めて赦してくれそうなアルバム。私たち世代の女の子は誰でもYUKIになりたいガールだっただろう。サザエさんやちびまる子ちゃんのように、YUKIは歳をとらない。だから私たちはずっと夢見ていられる。YUKIの魔法にかかっていられる。





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