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【観劇レポ】ロンドン 『Les Misérables』

ロンドンに1年間留学中の女子大生です🇬🇧

ロンドンに到着して約1週間の頃、Sondheim Theatre の『Les Misérables』を観ました。レミゼは私がミュージカルの沼に嵌ったきっかけの作品です。
日本では上演の度にキャストの組み合わせを変えて何度も帝劇へ足を運びました。コロナ前には当日券戦争に挑んで席をゲットしたこともあります。

2019年レミゼ、帝国劇場


ロンドンで観る1作品目はレミゼと決めていたので、今回はその夢を叶えて来たお話をします。


私的 『Les Misérables』の魅力

レミゼは、プリンシパルのみならずアンサンブルにも役名がついていることからもわかるように、主役を限定しないミュージカル。バルジャン、ジャベール、ファンテーヌ、エポニーヌ、マリウス、アンジョルラス、コゼット、テナルディエ… 注目(感情移入)する人によって見え方が全く変わる作品です。かつ、誰にでも容易に感情移入ができるんですよね。
つまり、レミゼでは何人もの人生、いくつものストーリーが絶妙に交り合った世界観が描かれます。普通、複数を描こうとするとそれぞれの質が下がってしまったり、他方で 1つに焦点を当てると世界観が狭くなってしまったりします。
だから、レミゼは本当に洗練されて完成された舞台だなあ、と観る度に感じます。

同じことがアンサンブルにも言えます。
ソロ曲こそないものの、全員が、それぞれが主役の人生を生きていることを、客席で感じ取ることができる。アンサンブルは主役やメインストーリーの引き立て役でも舞台の便利屋でもなく、作品の描く世界に生きている1人の人間であること、その人生の価値はプリンシパルと何ら変わらないことを、レミゼから学びました。

他にも、ストーリーや演出、音楽、セット、隠と陽のバランス等々魅力は尽きないですが、長くなってしまうので一旦このくらいにしておきます。


ロンドン 『Les Misérables』 観劇記録

やっと本題の観劇記録へ入ります。

劇場は Stephen Sondheim Theatre(旧 Queen's Theatre )、2019年の改修と共に改名されました。客席は3階まであり、全部で1074席です。
地下鉄の最寄駅は Piccadilly Circus 駅。劇場街であると共に、観光客向けのお土産屋さんや中華街もあり、夜でも明るいとても華やかな区域です。


公演プログラムは5£。キャストや曲目は記載がありますが、装丁は簡易的で、日本のプログラムのような舞台写真はありません。
別売りで10£弱くらいの写真集があります(しっかり購入しました)。

左がプログラム、右が写真集


劇場の内装がほんっとうに素敵なんです。どこもお城の中のようでした。
レミゼのロングランの劇場なだけあり、レミゼに纏わる絵が飾ってあります。


私は今回、お安めの3階席でした。40£弱です。日本の大劇場と比べると、客席の面積自体はコンパクトで、その分縦に長い印象でした。なので、3階の私の席は、舞台までの距離は遠くなく、かなり見下ろす感じでした。結構傾斜が強いので高所恐怖症の方にはあまりお勧めしません。私的には、舞台の後ろまで見える点やコスパの点で考えて満足のお席でした。
ちなみに、客席内での写真撮影は可能です。

3階上手側、開演前


肝心の演目自体の感想はと言うと、
「うわぁこれが本場か…」
これに尽きます。笑

プリンシパルキャストの動線を暗記するくらい日本で観ているし、英語の音源も飽きるほど聴き込んでいるので、その記憶を辿りながら、本場のレミゼを目一杯堪能しました。
やっぱり冒頭のオケの入りには感動して震えるし、
やっぱりバルジャンは揺るぎなくてジャベールは切なくて、
やっぱりファンテーヌは愛情深くて強くて、
やっぱり推しはアンジョルラスでした。砦から落ちるシーンがお気に入りです。
あとはアンジョルラス役の人が最後の結婚式のシーンで給仕を演る時に(バイトですね)はっちゃけるのが好きなんですけど、それも同じでした。笑

違いを感じたのはスピードです。日本のよりも場面展開が素早く、音楽自体も早い印象を受けました。あくまで私個人の印象です。
上演時間自体もロンドンの方が20分程度短いようです。

加えて、各プリンシパルのキャラクターの個性がより際立って感じました。
特に、エポニーヌのエネルギッシュさとコゼットの透明感が対称的でした。発声の仕方やトーン、キャスティング、表情、所作…  全てが、エポニーヌは the サバサバ系女子でコゼットは the お嬢様系女子、という特徴付けに寄与していました。
ジャベールは、バルジャンと対峙するときや現場に駆けつけるときの強くて寡黙な警部としての顔と、ソロ曲を歌うときの孤独と寂しさを抱えた1人の人間としての顔のギャップが大きかったです。”Stars” を歌い終わった後の余韻の残し方と表情が切ないんですよね〜。役どころとしては他の人物の障害となる位置ですが、何だか凄く凄く人としての魅力を感じました。「他の登場人物には好かれないが、客席の観客には好かれるジャベール」でした。格好良いです。
アンジョルラスのリーダー性も印象的でした。大勢を率いる覚悟と何にも惑わされない芯の強さ、全体を見る視野の広さ、仲間への愛情の深さ…  必要な要素を全て兼ね備えた完璧なリーダー。だからこそ、最後の砦として最も命を落として欲しくないものの、革命の現場で命を落とすのが彼らしいとも感じます。格好良いです。
テナルディエは何故か、普通の陽気なおじさんでした。

やはり歌唱力や表現力は全キャストが圧巻ものです。
何度鳥肌を立てたことか…
まず、1曲目の囚人たちの「あ〜あ」に、その後のジャベールのソロに、震えました。各キャストのソロ曲も、バルジャンとジャベールが対峙して声を合わせる場面も、大勢によって奏でられる "At the end of the day" や "One day more" 等も、何もかも素晴らしかったです。レミゼの音楽の美しさも再実感しました。

1階上手側、休憩中


今回はついメインのストーリーを追うことに夢中になってしまい、アンサンブルにまで注目ができなかったので、また機会があればより深いところを観たいです。


『Les Misérables』 で感じたロンドンの観劇文化

上演中を含め、客席内は飲食自由です。
日曜日のお昼の公演だったので、子供も多く、若者も多いです。
私の席周辺はお安めだったためか、上演中の飲食の物音や身動き、会話、お化粧室への途中退出諸々はそれなりに気になりました。観劇を、映画鑑賞と同じようなカジュアルな感覚で捉えている印象を受けます。
他方で、ロビーでは綺麗にドレスアップしている方も見かけたので、高尚な娯楽として捉える見方も一定数あるのかなあとも感じました。

ビッグナンバーが終わる度に歓声を挙げます。
カーテンコールは秒速で歓声&スタオベです。
の割に、カーテンコールは割とあっさり終わります。
ちなみに、カーテンコールも撮影可能です。
終演後も、皆さんさっさと帰ります。


日本の観劇マナーと比較すると相違点が沢山ですが、もうそもそも生活における観劇の位置付けが全く違う気がするので、一概にどちらが良い悪いとは言えないです。今後の観劇を通じて少しずつその辺りも理解して行けたら。


総じて

ニューヨークに並ぶショービジネスの聖地、ロンドンにおける観劇人生を、大好きな大好きなレミゼで幕開けできたことが幸せでたまりませんでした。
「今日もレミゼが上演されている街」であるだけでロンドンに魅力を感じます。そんな環境に身を置き、演劇文化を身近に感じられる貴重さを噛み締めながら、今後も沢山の作品に触れたいです。グランドミュージカルも、小劇場のものも、ストリートプレイも。
以上、レミゼへの愛強めな女子大生の観劇記録でした。
最後までお付き合いありがとうございました。
なお、本記事における解釈は全て個人的なものであること、ご了承ください。


※見出し画像は『Seat Plan』HPより
https://seatplan.com/london/les-miserables/


作品情報

Date: 25 September 2022 2:30 PM
Venue: Stephen Sondheim Theatre
Cast:
   Jean Valjean - Jon Robyns
   Javert - David Thaxton
   Fantine - Ava Brennan
   Éponine - Nathania Ong
   Cosette - Lulu-Mae Pears
   Marius - Robert Tripolino
   Enjolras - Jordan Shaw
   Thénardier - Gerard Carey
   Madame Thénardier - Josefina Gabrielle
Creatives:
   Presented by Cameron Mackintosh
   Based on the novel by Victor Hugo
   Director: James Powell / Laurence Connor
   Music: Claude-Michel Schönberg
   Lyrics: Herbert Kretzmer
 
 


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