むるめ辞典
■別離
[読]べつり
別つ離
[例文]
気がつけば隣にいて何でも気兼ねなく話せる上に心の深いところから敬意の湧き立つような友人がいた。
磁石に引き付けられる鉄片のように引き付けられて出会い、見えない糸で繋がれたまま別れたような友人だった。
普段はできないことも、その人が近くにいれば乗り越えられる気がして実際に乗り越えた。
野をこえ山こえ海こえて見つけた1000人よりも私に力をくれた。
私たちの別れは一時のものであって、手繰り寄せれば近づいてくるものであったはずなのに、いつのまにかその糸は切れてしまった。
もう二度と引き合うことのなくなったことを知って私は、いつまでも彼のことを考えるのはやめようと自分に言い聞かせた。そう思えば思うほど、彼の存在は大きくなっていったが、時間の経過によってやがて萎んだ。
たまに彼のことを思い返すことがあっても、以前ほど何も感じなくなった。心に頑丈な蓋でもついたのか、心の中から消えてしまったのか、私にはわからない。
でも私にとって何か大事なものが一つ、色を失った鈍い銅像みたいに動かなくなってしまったんだということはわかった。
サポートしていただいたお金で、書斎を手に入れます。それからネコを飼って、コタツを用意するつもりです。蜜柑も食べます。