むるめ辞典
■硝子
[読]がらす
硝の子
[例文]
ささいな一言が誰かの心を砕いたときみたいな「カシャアン」というガラスの割れる音が私たちの血の気を引かせた。
壁あてをしているとボールが塀を超えることがあって、運が悪いと工場の薄い窓ガラスに当たるのだ。
ガラスが割れる度に工場のおばちゃんがやってきて、私たちの親と話し合っていた。おばちゃんは私たちに壁あてを止めろとは言わなかったし、親も叱ったりしなかった。しょうがないね、気をつけんさいよとしか言わなかった。
バツが悪いなという気持ちはあった。でも図々しい私たちはガラスが割れるのは次第に当たり前だと思っていった。雪の降り出しそうな雲が、空の上で順番を待っているみたいに寒い日だってあったのに。
最初の冬の間、ひどい時には毎週というほどガラスは割れた。その見返りにといってはなんだけど、春にはほとんど完璧にボールを操ることができるようになっていた。
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