村谷匡史

宇宙生命科学、マルチオミックス解析の研究者です。発信内容は個人の見解であり所属組織を代…

村谷匡史

宇宙生命科学、マルチオミックス解析の研究者です。発信内容は個人の見解であり所属組織を代表するものではありません。テクニカルなことはこちらに順次まとめています。 https://sites.google.com/view/tsukuba-omics-lab

マガジン

  • 生命科学系の大学院留学・研究インターンシップ

    海外のPh.D.コースへの留学や大学生の研究インターンシップに関する記事をまとめています。

最近の記事

研究室アルバイトのメリット

授業料、生活費、通学費やパソコンの購入など、大学生活では稼ぎが無いのにお金はかかる。新学期の忙しさも落ち着き、アルバイトを探している人もいるだろう。とはいえ、長い受験競争を経て勝ち取った、せっかくの大学での勉強の機会があるのに、学問とは関係ないアルバイトに多くの時間を費やすのに疑問を感じる人もいるかと思う。せっかく大学の設備や資料へのアクセスがあるのに、授業料の元を取らないのはもったいない。 そんな大学生には、研究機関、大学研究室でのアルバイトをおすすめしたい。 これまで

    • 日本の大学卒業から海外大学院入学までの期間はどう過ごす?

      生命科学系のPh.D.プログラムへの大学院留学、私の学生としての経験はもう20年以上前の話ですけど、今もあまり変わっていないと思いますので「これから応募する方」に向けて書いておきたいと思います。 米国の大学院(8月最終週~9月入学)のアクセプト通知は早い人で3月初め。それから、徐々に補欠の合格者に連絡が届いて、4月中旬までにオファーを受け入れるかの意思表示をしてください、というのが合格通知から各プログラムの入学者が決まるです。米国の生命科学系の良い大学院に「インタビュー無し

      • アルテミス計画と宇宙生命科学研究

        ニュース記事のコメントなどでは、アポロ計画とアルテミス計画の比較が話題になる。50年前のテクノロジーで月に行けたのに、なぜこんなに時間がかかるのかと。 大きな違いのひとつは、アポロ計画は「米国が先に月に行く」ことが最重要だったのに対し、アルテミス計画は、その先の月面基地や、火星に行くための準備の一環だという点がある。アポロ計画では、とにかく早く行って、世界初を達成、無事に帰ってくれば勝ち!だったのに対し、アルテミスではその先への様々な準備を行っている。そのための技術開発にも

        • 笛吹けど踊らず… 研究留学希望者と財源のミスマッチ

          生命科学分野で、海外の大学院留学に関する記事をいくつかポストしてきましたが、日本の大学院に在籍しつつ、海外で研究だけ経験したい、という人もいると思います。 実は大学院プログラムや科研費種目には、「若手研究者の海外派遣」のような予算が組み込まれていることがあり、毎年決まった数の学生や研究者を海外に派遣する必要があるのに、なかなか希望者が集まらない、というような場合があります。そういうのは、身近にいる教員に聞くと紹介してもらえるので、遠慮せずに聞いてみると良いです。 このルー

        研究室アルバイトのメリット

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        • 生命科学系の大学院留学・研究インターンシップ
          11本

        記事

          科学研究における「プロ経営者」

          ビジネス関係の記事でとりあげられる「プロ経営者」。大企業の有名な例だけでなく、社外からヘッドハンティングされ、業種を問わずに活躍する方も多いとのこと。 科学研究の「経営者」にあたる司令塔はどこから来るのだろう? 私の知る生命科学分野の話になるが、学問、アカデミックの業界では、長年の積み重ねによる経験と知識が重視され、過去の実績が無いと研究費の獲得も難しい。要は、コロコロ研究分野を変えるのはダメ、という風潮がある。 そうやって成功した研究者の「一途に学問を究める」タイプが

          科学研究における「プロ経営者」

          近くにもある「アストロバイオロジー」

          「アストロバイオロジー」というのを聞いたことがある方は、生命の起源や地球以外に生物が住めそうな場所を探すなど、はるか昔、遠い宇宙での出来事を扱う科学を想像されると思います。 地球外生命という、いるかどうかも分からない物を相手に、日々探求を続ける…まさに科学者のロマンです。 巨大な望遠鏡で地球に似た惑星を探したり、衛星や小惑星に探査機を送ったりするには時間もかかります。一方で、「宇宙に行った地球の生命」の研究は、最近多く行われるようになりました。スペースシャトルや国際宇宙ス

          近くにもある「アストロバイオロジー」

          英語ネイティブの研究メンター

          科学研究業界の公用語はもちろん英語だ。AI翻訳サービスなどが発達しても、日本の大学生にとって、海外留学の大きな目的の一つは言語のトレーニングだろう。 大学院での研究メンター(研究指導教員)は、ひとりの研究者の育成を任せられたような立場にある。ある研究室の出身者がそのメンターのクローンのように、研究スタイルや考え方を刷り込まれているような状況をよく見かける。これは、研究テーマの設定や、論文の読み方、実験のデザインや結果の解釈などについて、細かいところまでアドバイスを受ける、日

          英語ネイティブの研究メンター

          米国の生命科学系PhDプログラムの外国人定員

          大学院に応募する、といえば、何らかの定員があって、その枠を競うイメージは欧米でも日本と変わらない。目安となる全体の定員については、募集要項に書いてあるが、実際には「外国人枠」のようなものがあるので、少し書いておこうと思う。 欧米の生命科学分野の大学院の学生は、入学から卒業まで、学費と生活費を全てカバーする奨学金を支給されてコースワークや研究に励む。大学院の定員というのは、この経済支援の定員、ともいえる。 国籍で応募者を差別する意図は無いとはいえ、奨学金の種類によっては国籍

          米国の生命科学系PhDプログラムの外国人定員

          科学フロンティアの屯田兵

          一昨日は、ロボットや人工知能を、科学実験の自動化に応用する研究の発表を聴いていた。繰り返し作業が多い実験では、既にロボットがヒトのパフォーマンスを超えている。 「第6波ではオミクロン株が…」でいう「株」とは新型コロナの遺伝子タイプのこと。感染経路の調査を、電話での聞きとり調査で行っていた様子は広く報道された。実は変化の速いウイルスは、遺伝子に他にもたくさんの違いを持っていて、それぞれに遺伝的な個性がある。国内で感染例が見つかった初期には、遺伝子解析で感染経路が区別できた。

          科学フロンティアの屯田兵

          人工知能 vs おじさん頭脳

          note初投稿から一週間です。生命科学分野の大学生向けの研究留学のアドバイスを書き留めようと始めたのですけど、思いがけず「スキ」をたくさん頂いて、このプラットフォームのすごさ、記事を読んでくださった皆様に感謝・感激!どうもありがとうございます! また、世の中にはかくも多様な営みがあるのか、と人間とそれがつながる集団の創造性(そんな薄っぺらな言葉ではない、何て呼べばよいのか)に神秘すら感じました。 シンギュラリティって、データ量と計算量がある閾値を超えるとヒトの思考と波長が

          人工知能 vs おじさん頭脳

          研究インターンシップ応募にむけて自己アピールサイトと名刺を作ろう

          9月11日にポストした「生命科学系の大学生が研究留学する3つの方法」では、サマープログラムへの応募や、研究室に直接メールでコンタクトを取る方法を紹介しました。それと並行して、英語で自己紹介ウェブサイトを作っておくと良いですよ。その理由やポイントなどをまとめます。 1.あらためて自分のことをよく見直す機会として 学部生の早くから(子供のころから?)研究者を目指している人は、就職活動はしてないと思いますが、「自己分析」みたいなことからはじまります。 自分が興味をもっている

          研究インターンシップ応募にむけて自己アピールサイトと名刺を作ろう

          研究インターンシップと「ビギナーズラック」

          ラボに新人が来るというのは、短期間の滞在であってもうれしい気分になるものです。面倒見の良い研究者であれば、最初から研究に失望しないように、ほど良いプロジェクトを提案してくれるでしょう。そういう研究テーマは真剣に取り組めば、きっとうまくいく(結果がどうあれ良い経験になる)ので、今後の科学者としてのキャリアを賭けてがんばってください! でもこれは、「その研究が成功したのはボスのおかげだから、調子乗んなよ!」と言いたいのではありません。初めから全部うまくいく研究など無いのです。

          研究インターンシップと「ビギナーズラック」

          海外の大学院応募に必要な推薦状

          生命科学系で米国の大学院に応募するときに重要な資料となる推薦状。多くの場合は3通必要で、サマープログラムへの応募にも2通必要なことが多いです。 欧米でFaculty positionに応募した研究者の記事などを参考にすると様子が分かると思いますが、特に米国では推薦状は非常に重要です。論文などの研究業績を持っていない分、大学院への応募などのキャリアの早い段階では推薦状がさらに重視されます。 そして大学生の研究留学、インターンシップは、まさにその推薦状を確保するための腕試

          海外の大学院応募に必要な推薦状

          生命科学系の大学生が研究留学する3つの方法

          大学生が海外で研究インターンシップを経験するには、主に3つの方法があります。具体的なことをあれこれ考えながら情報取集するだけでも、自分や研究業界の様子を知ることができ、良い経験になります。キャリア希望やリスクに対する考え方はひとそれぞれ。いろいろなご縁を経て、自分にあった方向性が見えてくると思います。 1.サマープログラムを通して参加する 9月9日の記事「生命科学系の大学生対象の海外研究インターンシップ」では3つのプログラムを挙げましたが、他にもたくさんあります。日本の大

          生命科学系の大学生が研究留学する3つの方法

          大学院進学前に海外で研究を経験してみる

          昨日の記事「生命科学系の大学生対象の海外研究インターンシップ」の続きです。 https://note.com/muratani/n/n91d1d5b7e507 私の知っているライフサイエンス分野の話になりますが、大学院に進学する前に、いろいろな研究経験を積むことはとても役に立ちます。「卒業研究」として学部生の3年から4年次にかけて、カリキュラムに組み込まれていることが多いと思います。 でも日本では、卒研のラボ以外に大学院で進むのはちょっと気まずい、と感じる学生も多いか

          大学院進学前に海外で研究を経験してみる

          生命科学系の大学生対象の海外研究インターンシップ

          大学院に進んで研究したいと決めている大学生には、研究室に早くから出入りできる研究室アルバイトなどを考えている方も多いかと思います。所属大学の研究室にお願いするのも良いですが、夏休みなどを利用して海外でのインターンシップはいかがでしょうか? 興味がある研究室にコンタクトを取って、受け入れが決まってからビザの手配など…と考えると来夏に向けて約1年前から準備、というのが良いタイミングです。大学院での留学にもつながりますので、これからしばらく関連記事を発信したいと思います。

          生命科学系の大学生対象の海外研究インターンシップ