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アルテミス計画と宇宙生命科学研究

ニュース記事のコメントなどでは、アポロ計画とアルテミス計画の比較が話題になる。50年前のテクノロジーで月に行けたのに、なぜこんなに時間がかかるのかと。

大きな違いのひとつは、アポロ計画は「米国が先に月に行く」ことが最重要だったのに対し、アルテミス計画は、その先の月面基地や、火星に行くための準備の一環だという点がある。アポロ計画では、とにかく早く行って、世界初を達成、無事に帰ってくれば勝ち!だったのに対し、アルテミスではその先への様々な準備を行っている。そのための技術開発にも時間がかかるのだ。

活動の拠点となる「ゲートウェイ」(月をまわる宇宙ステーション)の建設も行うし、資源のありそうなところへの着地と広範囲の探査など、将来的に様々な展開が想定されている。多くの国が参加し、民間企業が請け負う部分が大きいのも、長期的な共同開発の枠組みや経済圏の発展につながるだろう。

私が参加している生命科学分野では、宇宙飛行士の健康維持が特に課題になる。高度400kmの国際宇宙ステーションと比べると、月周辺では宇宙放射線の影響も大きい。火星有人探査を考えると500日以上も閉じた空間での少人数生活が想定される。いったいどう過ごすのか…課題は多い。

人類が未経験の深宇宙での長期滞在に向けた重要なテーマ「宇宙飛行士デジタルツイン」は昨年末にJAXA研究として採択されたばかりだが、日本の研究コミュニティーとしても重要な貢献ができる準備が整ったと思う。今後の進展にご期待ください!

https://humans-in-space.jaxa.jp/kibouser/library/item/subject/73800_04muratani.pdf

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