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英語ネイティブの研究メンター

科学研究業界の公用語はもちろん英語だ。AI翻訳サービスなどが発達しても、日本の大学生にとって、海外留学の大きな目的の一つは言語のトレーニングだろう。

大学院での研究メンター(研究指導教員)は、ひとりの研究者の育成を任せられたような立場にある。ある研究室の出身者がそのメンターのクローンのように、研究スタイルや考え方を刷り込まれているような状況をよく見かける。これは、研究テーマの設定や、論文の読み方、実験のデザインや結果の解釈などについて、細かいところまでアドバイスを受ける、日々の指導と鍛錬によるものだ。まさに「師匠と弟子」の関係。

このような指導の中で、英語に不安のある日本人に非常にありがたいのが、論文やレポート原稿の「赤ペン添削」だろう。相当な努力をして推敲したつもりの文章が、ネイティブの英語によって異次元の明瞭さで簡潔に書き直される。そのショックや、蓄積される語彙や言い回しは、文章の書き方だけではなく、ものごとの考え方にも大きく影響する。

英語圏ではいろいろな考え方が日本の文化とは異なる。英語と日本語の両方で、別々のロジックや感性を切り替えながらアイデアを吟味できるのは、複数言語を使い分けられる者の強みだとも思う。

残念ながら、英語力という面では、私個人にはメンターから受けた指導をそのまま次世代に繋げる力量はない。しかし、ここ数年は海外の研究者とGoogle Doc上で論文を作成するのが日常になり、再び「赤ペン」に相当するフィードバックが気軽に受け取れるようになってきたように感じる。

科学者の育成も、昔ながらの師弟関係から、コミュニティーの中でダイナミックにアイデアと経験を共有しながら、上下関係なく互いに高めあっていく世の中に変化しつつあるのだろう。


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