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うたのおへや

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わたし 村嵜千草の詩をまとめています
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#口語自由詩

グッナイ

グッナイ

カーテンを閉めて
鍵をかけて
布団に潜ろう
取り憑かれてしまう前に

ココアを飲んで
目を閉じて
万華鏡に溺れよう
取り込まれてしまう前に

今日を閉店にして
明日のロックを流して
暮らしを忘れよう
わたしを忘れよう

目を瞑ったら今日が終わり
目を瞑ったら明日を忘れる
ひとときの安息を手に入れよう
さよならを思おう

グウタラ

グウタラ

何もしなくていい

それは難題だな
どうすればいいんだい?

何にもしなくていいんだ

それは困ったな
バクバク煩いものが主張してくるよ

気にしなくていい

なるほど、むつかしいことを言う
頭から指先、お尻までこんなに揺れているのに?

とりあえず寝よう

おや最初と違うことを言う
何もしないというのは何もしないということで
寝てもいいのかい

グウタラすればいいんだ

グウタラとはなんだろう

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いもうと

いもうと

おねえちゃん、おねえちゃん、
だいすきだよ

おねえちゃん、おねえちゃん、
大すきだよ

お姉ちゃん、わたし
貴方の妹で幸せよ

どんな貴方もわたしの姉だって
気づいてほしいのよ

頼らせてね 生まれたその時から側にあった貴方
頼ってね わたしの一から百までを見てきた貴方

大好きよ それしか出てこないの

おねえちゃん

おねえちゃん

がんばりやさんだね
たよりにしてるよ

ふふ うれしいんだ

キンキュウジタイにおねえちゃんがいてくれると助かるよ
いもうとちゃんのことよろしくね

うん もちろん、まかせてよ
だっておねえちゃんだから

雨がざーざーふったって
お母さんがシュッチョウのときだって
地面がぐらぐらゆれたって

もちろん、まかせてよ
いもうとをぎゅってしてあげる
ごはん、つくってあげる
お片付け、みんなの分もがんばる

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夜空

夜空

広がる視界は暗いけど
ときどき笑うみたいに眩しい

伸ばした手は冷たいけど
どこまででも届きそうな気がする

歩いて何分 何時間
まだまだ何年 何百年

レンズが受け止めた今この瞬間に
そこにはもういないのかもしれないけど
あやふやな光を永遠みたいに頼って

進んで何歩 何メートル
途方もなく何万キロ 何億キロ

むつかしいことは分からないけど
遠いおかげで近くなれるから

同じ月を迎えて
同じ星

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2月の雪 ( 朗読・伴奏 )

2月の雪 ( 朗読・伴奏 )

もう何度目でしょう
いつもいつも音は無く
あるものを無かったみたいに

喜ばれたとて 疎まれたとて
なんにも気にも留めない風で

あなたを羨む私を
仲間に入れてはくれませんか

塵として埃として
冷たくなって重たくなって
舞って流れてどこかへ飛んで

私の元へも集まって
私の形にかたまって
境目のないように
誰にも分からぬように

あなたを羨む私を
共に溶かしてはくれませんか

儚くなくても美しく

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今

明日にも一昨日にも
今日のわたしはいないし

1秒前にも1秒後にも
今のわたしは生きてない

今、今だけここに立つ

今の足跡が 筆先が 追想が
いつか来るイマのわたしに寄り添うだろう
たまに助けもするだろう

忘れたり 思い出したりしながら
今を塗り重ねていく

あの頃のイマにいたわたしへ
居てくれてありがとう

いつかのイマにいるわたしへ
今のわたしのこと 忘れててもいいや 
ちゃんと居るから

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いつも居るかたち

いつも居るかたち

どうしても 何にも見えないのだ
たとえが 浮かばないのだ

人の姿にも 動物にも 似ず
ただ そこにある

物も言わず 靄を振り払うこともなく
ただ ぽっかりと そこにいる

間抜け でこぼこ 照れ屋さん

聡明 凛然 頑張り屋さん

何かに見えて 何にも見えない

それだけのことが こんなにも人間を狂わせる
こんなにも私に押し寄せる

紛れるメール

紛れるメール

「父が他界しました。」

いつもと変わらない音と光に揺られて
業務連絡のように届いた。
お遣いを済ませました、のような
今晩はカレーにします、のような。

「追って詳しい日程を連絡します。」

流れ作業のように
雲が流れるように
大切なはずの人が死んだ。

葬式にも通夜にも行かなかった。
行けなかった。
大切なはずの人はとうに燃えて灰になった。
見送れもしなかった。

子どもみたいに屈託のない笑顔

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高い空を見上げて

高い空を見上げて

心がきゅうと泣くような
大手を広げて清々しいような

目の眩むような
果てなく心細いような

ひょろりと一本 化粧の虚しいような
山道をスキップしたいような

土の匂いにとろけるような
つめたく突き放されるような

こびとのおどるような
しとどに袖の濡れるような

体の表面に秋の真ん中の地球を感じて
高い空を眺めながら

No.34    (※「34」改)

No.34 (※「34」改)

さよなら世界 ありがとわたし
短いなんて知らないよ 十分すぎる長さだよ

ありがと世界 さよならわたし
溶けて溶けて溶けゆくの 
土になる 水になる 大地へ還る

ありがと世界 おはようわたし
なんて なんて 広すぎて 
なんて なんて 狭いのかしら

おはよう世界 ありがとわたし
眩しいだとか 気持ちいいだとか いったん忘れていいんだよ

「揺れるカーテン 温かいスープの匂い
ふわふわのタオル 

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万華鏡

万華鏡

ねえ 筒抜けだよ

「当たり前だろう 万華鏡なんだから」

万華鏡って、覗いたらどんな景色なの?

「そりゃあ数えきれないほど満開の華やかな景色さ」

へんなの こんなまっくらのこと 華やか、だなんて

「ハハ、そりゃ覗き方が悪いんだ 天に向けて光を入れてご覧」

テン

「お空のことだよ お日さんののぼってるこの広ーい所さ」

広ーくて、まっくらで、ヒカリがハイって、オヒサンのいる、テンね

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