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記事一覧
リアルファイトクラブ③-①
柄シャツの男
柄シャツの男を見てボクは、懐かしさのようなものを感じていた。
胸が締め付けられていくのが分かった。
精神の病を抱えた患者に柄シャツの男がまた金を渡していた。
こっそりと、だけど辺りを警戒するわけでもなく堂々としていた。
胸の鼓動が大きくなった。
あいつはタイラーだ。
看護婦が何か言いたそうな顔でタイラーを見ている。けど言えない。タイラーは気安く人を寄せ付けない。社会に従順
リアルファイトクラブ②-⑧
さよならファイトクラブ警察の取り調べが終わって警察署を出ると、辺りは暗闇だった。暗闇というのは正しい表現じゃないかもしれない、ここは眠らない街、新宿だからだ。
時刻は20時を回ろうとしていた。何度も繰り返される質問のせいで、僕は心底疲れきっていた。
僕は善良なる死体の第一発見者にも関わらず、警察の取り調べは容赦なかった。あたかも僕が刺青だらけの男を殺したかのように問い詰めてくる。お陰で僕の純心
リアルファイトクラブ②-⑦
悪魔の刺青西新宿に彫り師のマンションがある、とタイラーは言った。僕がタイラーの指示でGoogleマップに住所を入れた。画面には目的地まで徒歩25分と表示されている。
(およそ300メートル先を右です)
彫り師のマンションに向かう道中、タイラーとついでに刺青でも入れるかという話題で盛り上がった。
「なぁ、レイモンド。刺青を入れるなら何を入れたい?俺はマイクタイソンと同じ奴を顔に入れたい」
『
リアルファイトクラブ②-⑥
ヒーローの姿タイラーが僕に、彫師を捕まえる手順を教えたのは次の通りだった。
「その一、彫師のマンションに行く」
「その二、奴を殴る」
「その三、ロレックスもしくは、金を取り戻す」
『殴るるるるって、ヤクザの人の友人なんじゃないんですか!?』
「奴は裏切り者だ。指名手配中だったおっさんを警察に売ったのは、彫師だ」
話がややこしいので僕は一旦、頭を整理することにした。
ヤクザのおっさんは
リアルファイトクラブ②-⑤
タイラーとヤクザの女午前9時32分。
スマホでセットした目覚ましの音がなっている。たぶん、この目覚ましは2分前からなっている。タイラーと朝まで呑んで、そのタイラーはベッドに辿り着く前に床で力尽きている。起きる様子なんて全くない。この人はいつもそうだった。酒や眠剤を呑んだテンションで色々と物事を決めて突き進んでいく。突き進むのはいい、だけど、この状態だと無理なんだ。あんなに呑んでおいて、2時間だけ
リアルファイトクラブ②-④
再会母親からもらった10万を握りしめて、まず向かった先はあの調布のボロアパートだった。
留置場から解放されたからといって、不思議と祝杯を上げたいなんて気分にはならなかった。
電車に揺られながら、吊り革を握ってるサラリーマンの姿や、移り変わる外の風景を眺めているだけで胸がいっぱいになった。
両手を自由に動かせる。それだけで充分だった。
よく刑務所を出た人間がフワフワしてる感覚になる。って言う
リアルファイトクラブ②-③
約束 裁判当日。俺は留置場から裁判所に向かうことになった。普通は拘置所に移送されるハズなんだろうけど、俺は何故か移送されなかった。せっかくヤクザのおっさんから聞いていた拘置所というものを体験したかったけど、残念ながらその願いは叶わなかった。拘置所にどうしても行きたいのであればもう一度逮捕されるしかないが、それは絶対にごめんだ。
「拘置所に移動されなかったから、多分執行猶予がつくぞ」
リアルファイトクラブ②-②
ヤクザのおっさんヤクザのおっさんは面白い人だった。一瞬ブルっていたけど、俺が今回逮捕された経緯を話すと「面白い奴だ」と言って気に入ってくれた。
おっさんの話だと、どうやら俺は懲役に行く可能性が高いみたいだ。経験豊富なおっさんの言葉には説得力があった。おっさんは6年の刑期を終えて出所し、2ヶ月で留置場に戻ってきた。今回の起こした事件は強盗だった。
「今回は8年くらいかな~」
そんな事を笑って話
リアルファイトクラブ②-①
留置場「起床!起床!」
留置場の朝は早い。毎日6時になると照明がついて、聞きたくもない留置係の声で起こされる。起きると牢屋にぶちこまれた現実から目をそらす事に精一杯だ。
「早く外に出たい」どんな強者でも逮捕され監禁されるとそう思うだろう。だが人間はバカな生き物だから、2週間もこの生活を続けると次第に慣れてくる。俺はゴルゴ13とのストリートファイトのお陰で逮捕されたが、余罪の窃盗、器物破損、建造
リアルファイトクラブ⑨
グッバイ調布猫に追い詰められたネズミには選択肢が2つある。1つは戦って死ぬか、もう1つは諦めて殺されるか。俺の選択は勿論猫を殺すだ。誰が決めたんだ?猫がネズミより強いなんて。
「知ったかぶりもいい加減にしろ!!!」
この世には言葉が溢れている。ただ残念な事にその大半は、生きる厳しさを紛らわす為に人間が作ったまやかしだ。法律なんかはまやかしの代表格だ。
「暴力がいけないなんて誰が決めたんだ。本
リアルファイトクラブ⑧
溝鼠映画ファイトクラブでタイラーがメンバーに宿題を出した内容はこうだった。
「喧嘩を売ってわざと負けろ」
現実の世界でそれを変換するとこうなる。
「喧嘩を売ってわざと殴られてそして慰謝料を取る」
それじゃダメだ。チンピラだ。
リアルファイトクラブは違う。リッチな奴等から巻き上げてそれを誰かに還元する。現代版ねずみ小僧だ。
こっちの方がCOOLだと思わないか?
「チューチューチューチュ
リアルファイトクラブ⑦
クラブ活動次の日の20時。レイモンドの店の駐車場には5人の男達が集まった。そう、あの大型トラックも入るデカい駐車場のど真ん中だ。集まった5人の男達は宇宙に打ち上げられる猿みたいだ。
「スペースモンキー」
遅かれ早かれ俺達はタイラーのお望み通りになっていった。
ここに集いし有能で賢いスペースモンキー達を紹介しよう。クソガキ3人組のボス格の出っ歯、あとはデブとメガネ、そしてレイモンドと俺。
す
リアルファイトクラブ⑥
ファイトレイモンドが奇声をあげて殴り掛かってきた。右フック気味のパンチが俺の顔面めがけて飛んで来た。
顔面でレイモンドのパンチを受け止める。全然痛くない。
上半身と下半身の連動がバラバラすぎて、相手を倒すパンチとは言えない。大抵の人はレイモンドと同じような事になるだろう。あとは狙い過ぎて逆にパンチが当たらないか、まぁそんなところだろう。最近はTikTokやYouTubeで女を殴ったり、みっともな
リアルファイトクラブ⑤
レイモンド人生の悪い所は、目の前の困難にいつかは立ち向かっていかなければいけないということ。逃げて逃げて逃げ続けても、最後は行き止まりに道を阻まれ戦うしかないことに気づく。
熊コーポからコンビニに歩いて行った。今回は裸足じゃない。ちゃんと靴を履いている。キャバ嬢と同伴したときに買った靴だ。お会計の時にどさくさに紛れて色んな物を買わされた。あいつらは金だけ使わせて、一発もヤらせてくれない悪魔だ。