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旅の短歌)ある日差しの記憶

空腹の計算できず駅弁を
名産という品川の駅
三分で回るニュースに行き先の
今日の天気が流れてこない
地図帳を三度なぞって黒板に
並ぶ線より太い木曽川
到着のベルに続いてどこからか、
「待ってる人がいる」と歌声
田園の緑を裂いた白鷺を
気にも留めない雨の米原
虹彩をフィルムカメラにして滲む
翠のひかり せとうちの碧
現代を切り取り尖る芸術に
研がれたあとの波音の白
あの朝に死んだタバコの身代わりに
色を散らして眠るライター
液晶の白さで君と繋がって
カメラはぼくの世界になった
「ねえ」「なあに」「なんでもないよ」仲のよい
梢の声とひとりの散歩
君のいた故郷の駅に改札は
あるのか時刻表は黒いか
ふたりよりひとりの旅に君を知る
ビジホの薄い壁が揺れてる
ここじゃないわたしの場所があるなんて、
いつから間違ってたんでしょうか
道後でも風呂の鏡に映るのは
誰かがいとしがったその顔
「若い子は手で洗うのね」お隣の
土地の老女の頬の桃色
この土地に客は呼ばれているだろうか
地図に載らないひとは元気か
カチカチ!と何故だか嬉しそうな君
新幹線で意固地なバニラ
解かれる非日常より毎日と
繋がる旅をしたいと復路




短歌まとめの3作目は、旅のエッセイです。ゴールデンウィーク中のひとり旅を歌にしました。9泊10日、滋賀、岡山、四国四県を回りました。

旅の間には、1人だからたくさん創作できると思っていたのですが、エッセイをまとめるのに主に時間を使っていたのと、あとは意外と余白がないことで感じ考える余裕がなかったなと感じました。体力ゲージが下がると言葉の感度も下がっちゃうものですね。

ぼーーっとする時間の多い旅ではなく体力勝負の10日間だったので、なんだか旅の仕方によっても創作の雰囲気が変わるのかなと感じた時間でもありました。

旅の記事は別に県ごとにまとめているのでそちらもよろしければ覗いてみてください。また気に入った歌があれば是非教えてください:)


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