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「PLAN75」 UXデザインの映像資料として見たら、えげつない

コーチングがマイブームですが、本業はデザイナーをしている者です。

『PLAN75』という映画を見ました。
超高齢化が進んだ日本で、75歳になると自主的な死を選択できる社会システムが実装された時代を描いた映画です。大別すれば、SF映画ということになると思うのですが、全体的にドキュメンタリー的な空気感で進む社会派な映画です。

この映画のひとつの見方として、
めっちゃ質の高いUX(ユーザーエクスペリエンス)の映像資料として、見るのも面白いんじゃないかと思いました。

UX(ユーザーエクスペリエンス)とは?
UXのXはExperienceの略で体験という意味です。UXとは、ユーザーが商品やサービスを通じて得られる体験を指します。商品やサービスによって、楽しんだり美しいと感じたりするだけでなく、他社製品より使いやすいなどの品質に関わるものもUXに含まれます。


引用:「UI、UXって何?UI・UXの違いについて解説! | NTTコミュニケーションズ」

センセーショナルな社会システムが世の中に誕生するに至る背景、どんなムーブメントが発生して、どう運用し、市民にどんな感情を与え、どう受け入れられていくのか。架空のシステムが存在する世界が、高解像度で描かれています。

ブランディングや新規サービス開発をしている人ならば、映画を見て損した気持ちにはならないんじゃないかなと思う素晴らしい完成度でした。

この記事では、映画の感想というより、日々ブランディング案件に携わっているデザイナーとして、面白がれるポイントを紹介したいと思います。

1. キャラクター


https://movie.jorudan.co.jp/film/96716/

キャラクター = ペルソナ

まずは、マーケティング業界なら誰もが聞いたことあるであろう言葉「ペルソナ」について触れたいと思います。

ペルソナとは、商品やサービスの典型的なユーザー像、もしくは超理想のユーザー像などを指します。
年代や職業だけではなく、「ライフスタイルで大切にすること」や「人生で体験してきたこと」など、一見商品とつながらないような情報までを綿密にキャラメイクしていき、プロジェクトチーム間で思い浮かべられる人物像を一致させようとする手法です。

『PLAN75』に出てくるキャラクターは、まさにPLAN75というシステムの典型的なユーザー像!
PLAN75の登場で、救われる高齢者、追い込まれる高齢者、怒る高齢者。特に主人公役である倍賞千恵子の持っている願いや課題はとてもリアルです。

タッチポイントで描かれる感情の機微

タッチポイントとは、ユーザーが商品やサービスを知ったり触れたりする「顧客接点」のことです。

タッチポイントの緻密な設定にも感動しました。
国の政策であるPLAN75は、国民にとって既知のものとして登場します。主人公は最初にPLAN75に対して嫌悪感を抱いていますが、友人の勧め、友人の死、市役所で詳しい説明を聞く中で認識を更新していく様のなんと自然なこと!地味なシーンの連続ですが、捨てるところがありません。


2. 運用


https://movie.jorudan.co.jp/film/96716/

『PLAN75』のキャラクターはユーザー側だけではなく、市役所のPLAN75を扱う担当者、大量の死体を処理する仕事の方など、運用サイドの状況や心情も描かれます。

個人的にグッときたシーンが2つあります。

PLAN75に加入すると、10万の支給

このシステムの表側のウリは「死ぬタイミングを自分で選べて、死ぬ前にパーっとお金を使えること」。そのために国から10万が支給される仕組みになっています。この額の絶妙さと、各キャラクターの使い道がリアルです。「このシステム、アリだな〜」「実現しないかな〜」という気持ちになってくるほど魅力的にも描かれます。

ユーザーの獲得

とある公園にてホームレス・高齢者に対して炊き出しをしている横で、公務員がPLAN75の説明ブースを展開しているのも面白いです。

炊き出しを利用するような貧困の方に対してほど、このシステムは救いになります。しかし「貧乏人は死ね」的なメッセージにもなってしまっている。それが、生々しいなんとも言いがたいジレンマを孕んでいて、社会の光と影がしっかり描けているなと感じます。


3. ロゴデザイン



作中にPLAN75にロゴマークが登場するのですが、デザイナーからするとこれが笑いどころになります。

まぁーーーなんとも抽象的なロゴが登場するのですが、公的な案件であり、センシティブなサービス内容、死を暗示するわけにもいかないし、世の中の反感も生みたくない背景が想像できるようになってます。
この世界のデザイナーさんの心中お察しできるようになっていて、笑えます。さぞ大変な案件だったでしょうw

日本のどっちつかずな精神が作中のロゴデザインにまで反映されており、監督のこだわりを感じられるポイントのひとつです。


さいごに


デザインなど、専門家がウヨウヨいるキーワードを使ってnote記事するのは、怖正直いです。
でも、デザインのことを人と語りたいという欲もある。
う〜ん、悩ましいです。

「2流のデザイナーが、なんかいってらぁ」程度に読み飛ばしていただき、少しでも楽しんでもらえれば幸いです。

ぼくの所属するDSCL Inc.でもnoteを精力的運用し始めました!
僕の記事なんかより、こちらも読んでもらえるととても嬉しいです。


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