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「日常をとりもどす旅」がたどり着いた場所③最終回

こんにちは、MUJI HOUSEの小林です。

「無印良品の家と失われた日常をとりもどす旅」の様子を3回にわたってお伝えしてきましたが、今回で最終回です。先日、ついに北海道上士幌町での「失われた日常をとりもどす旅」が実行されましたので、今回はその様子をお届けします。
企画の経緯は、前回・前々回の記事をご覧ください。

9月、出発7日前の出来事。

4月に参加者を募集してから約5か月、旅行プランを決め、飛行機を手配し、ついに出発、というそんなタイミングで、Kさんから連絡がきました。

「家族でコロナに感染しました…」

第七波が猛威をふるっている、と言われた時期でしたので、全く予想外というわけでもありませんでしたが、私自身も楽しみにしていたKさんの旅行でしたので、少なからずショックを受けました。が、それ以上にKさんご一家の体調や心境が心配です。

Kさんご家族は幸い大事には至らず、無事快復。
気を取り直して再度旅の出発にむけ計画をたてます。

新型コロナウィルスの感染拡大によって失った日常をとりもどす、という趣旨で企画した旅が、コロナによって再び失われるなんてことはあってはいけません。
ということで、この旅への想いが私も(きっとKさんも)以前より強くなり、初回よりもかなりスピーディに旅の計画を練り直したのでした。

11月、ついに「日常をとりもどす旅」へ。

そして、当初の予定から2か月遅れて、ついに旅の日がきました。
11月初旬ともなると、帯広空港周辺はまだ紅葉が残っているものの、上士幌町のあたりは完全に冬の気候です。

私も、宿泊先の「にっぽうの家」に先回りしてお出迎えしてきました。

到着後、にっぽうの家の前で記念撮影。

Kさんのご家族とここで初めて対面したわけですが、皆さん想像通りのおだやかな方々でした。
にっぽうの家に到着してから「とても暖かい」「天井が高くて気持ちいい」「広くてうれしい」と口々に感想を教えていただき、少し誇らしい気持ちになります。

にっぽうの家」は、無印良品の窓の家をベースにつくられています。上士幌の大地にたたずむ真っ白な窓の家はとても素敵なので、ぜひ近くに行かれた際は見ていただきたい。

4名まで宿泊できるひろびろ空間。
真っ白な壁に、窓から見える上士幌の風景が映えます。

私はKさんをお出迎えしてから東京にとんぼ返りしてしまったのですが、帰宅後、旅行中の写真をたくさんいただきました。お話を聞きながら、まるで一緒に旅したような気持になったので、みなさんにもご紹介します。

飛行機をみて大はしゃぎのお子様。はしゃぎすぎて搭乗後は爆睡だったそう。
到着後、「道の駅かみしほろ」へ。
とても楽しそうですが、寒すぎてこの後すぐ店内に戻ったそうです。
家だからか、普段通りくつろいで過ごすお子様とご両親。
日常のようで非日常で、不思議な光景だったそう。
お父様は嬉しそうにずっとお子様と遊んでいました。良い笑顔です。
「道の駅ガーデンスパ十勝川温泉」でストライダーレースに飛び入り参加。
地元の小学生が手取り足取り教えてくれたそう。
にっぽうの家スタッフもおすすめしていた、ぬかびら温泉郷の「中村屋」さん。
アンティークの小物や暖炉裏が素敵です。
汽車の写真集を熱心に見るお子様。
色々見て回りましたが、家の中でゆっくり過ごす時間がいちばん長かったそうです。
Kさんがどうしても行きたかったという「ドリームドルチェ」さんのジェラート。
味が濃く、甘さ控えめでおいしかったとのこと。

「日常をとりもどす旅」を終えて。

ついに終了した、「日常をとりもどす旅」。

前回の記事でも書きましたが、出発前「日常をとりもどす旅」が「日常の大切さを思い出す旅」に変わりました。
当たり前だと思っていたものの大切さは、失ってみて初めて気づくということ。
またそうした喪失をきっかけとして、「今あるものの大切さ」についても思い出せるということ。
そんなことを気づかせてくれたこの旅です。

はたしてKさんは「大切な日常」を取りもどすことができたのでしょうか?

旅を終えて、Kさんに感想を聞いてみたところ、このようなお話がきけました。

私は、両親と息子と夫に気を使って結構疲れました(笑)
でも、学生時代、実家で暮らしてた頃も、こうやって家族に振り回されて疲れてたなと懐かしい気がしました。
18歳で実家を出て、コロナ禍でさらにその距離は離れて、自分の両親の「めんどくささ」を忘れていたんです。それどころか会えない間に多少美化されていたけど、実際一緒に過ごしたら昔の両親と全く変わっていなかった。
それに気づけるくらい、一緒に時間を過ごせる機会を持ててよかったです。

これを聞いて、「日常をとりもどす」とは、まさに、こういうことだなと強く感じました。

この他にもたくさん、楽しいお話や良いお話を聞きました。
例えば、
普段周りに合わせることが多く、忙しくしているお母さまを自由にゆっくりさせてあげられて良かった、とか。
旅の中でお父さまの話をしっかり聞く時間がつくれたことで、過去お父さまが仕事で北海道にきたことや、とても苦労してきたことを初めて知った、とか。
コロナ禍に生まれ何かと行動範囲も制限されていたお子さまにとっても良い刺激だったようで、旅から帰ってきた後たくさんお話するようになった、とか。

でも私は、この「めんどくささ」を思い出した、というエピソードに、強烈に「日常」を感じました。
ああ、この旅を企画して、Kさんに行ってもらえて、日常を取りもどしてもらえて、本当に良かったな、と心から思ったのです。

思い返してみれば、これまで私たちは平穏な日常をたもつため、無意識に人と程よい距離をはかりながら生きてきた気がします。
本来人との距離は、未知のウィルスによって決められるものではなく、
自分ではかっていくものですよね。
こんな当たり前のことを、今更そうだったなとここに書いてしまうくらい、人との距離を自分ではコントロールしづらい、ここ数年でした。

ですが、そろそろ、程よい距離を改めて自分で決めて、自ら積極的に日常を再構築していっても良い時期だと思うんです。
コロナ禍を経て「日常の大切さを思い出す」旅を終えた私たちは、「日常」それ自体に価値を感じることができるようになりました。
こうして取りもどした日常は、以前よりももっと、意味のあるものになっているのではないでしょうか。

私も、実家の家族と一緒に暮らしていた頃のことを思い出し、近々あの頃の「日常」を取り戻してみようかなと思ったりしたのでした。

3回にわたり、本記事を読んでいただき本当にありがとうございました。
今後も「無印良品の家」でのプロジェクトについて、さまざまな角度からお届けしていきたいと思います。

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