マガジンのカバー画像

ぼくのPoetry gallery

164
かつて野に棲んだ詩鬼の残骸をここに記すという悪い趣味です。
運営しているクリエイター

2020年2月の記事一覧

かつての詩39「イン ザ マスク」

「イン ザ マスク」

あなたがそのひび割れた仮面を剥がす度に
人生の悲惨について考えねばならない
剥がしても剥がしても
また違う仮面が現れるのだから

年初の日捲りカレンダーみたいに
千の顔を万化させるという甘酸っぱい理屈は通用しないだろうし
マトリョーシカ人形のように段々小さくなるものでもない
行き着く先など延々ないのが生き抜く上での教訓で
剥がす度に数多のあなたの仮面は増え続ける
絵本のよう

もっとみる

かつての詩38「灯」

「灯」

暗闇の遠く遠くに揺れる仄かな光は
優しい母親の懐を想わせる
ひとりぼっちな自愛の魂たちは
その温もりを求めて引き寄せられるのさ
そこに慈愛の天使なんかいなくても

灯火はいつも悲しい
どんな理由で燃える炎も
燃やす側以外には何の意味もない
どんな物質で燃えようが
いつから燃えていようとも
遠巻きに見据えるぼくらにとっては
害さえなければ無関心で
暗闇をさまよう泣き虫のためには
燃え方なん

もっとみる

かつての詩34「トランジスタシス」

「トランジスタシス」

エレクトロニック エレクトロニック
次世代の才能が動き出した
もはや敵なんかいない

エレクトロニクス エレクトロニクス
旧態の才能はもはや散るだけ
砕け散るか跳ね返るかは心掛け次第

才能は十二面体
投げ付けられてもただでは終わらない
尖った角でぶつかってやれば良い
幾度か打ち付けられて
やがて角を失った時
今度は僕が落下する番だ

でも僕は落ちても砕けないぜ
跳ね返って

もっとみる

かつての詩33「影を踏まないように」

「影を踏まないように 」

いつしか追い掛けて来たり
かと言えば先導していたり
千切れそうに伸びたり
潰れそうに縮んだり
狂わせそうに歪んだり
それもまた自分だったりする
いつも近く傍に
誰でもなく共に
そっと足下に寄り添う姿は
生まれてからずっと
私と私
映り出す静なる挙動

Masanao Kata©️ 2018
Anywhere Zero Publication©️ 20

もっとみる

かつての詩32「異形」

「異形」

何ひとつ
何ひとつとして同じものなどない
ぼくはぼくの目に映るものしか見えない
他人の目に映るものを見ることは出来ない

思考は瞬間の堆積
昨日の風は昨日の風で
今日の所有物でもなければ
一昨日の所有物でもない
三年前に読んだ本さえ
その頃のメッセージはもう挟まれていないのだ
イメージは進行形
絶えず今と絡み合って
明日への生き残りを賭けている

ぼくらは異なり続けている
昨日の出来事

もっとみる