かつての詩38「灯」

「灯」


暗闇の遠く遠くに揺れる仄かな光は
優しい母親の懐を想わせる
ひとりぼっちな自愛の魂たちは
その温もりを求めて引き寄せられるのさ
そこに慈愛の天使なんかいなくても

灯火はいつも悲しい
どんな理由で燃える炎も
燃やす側以外には何の意味もない
どんな物質で燃えようが
いつから燃えていようとも
遠巻きに見据えるぼくらにとっては
害さえなければ無関心で
暗闇をさまよう泣き虫のためには
燃え方なんてどうでも良かった
ただただ光を放つというだけが事実であり
ぼくらの眼に映るのは
冷めぬ灼熱の十字架が
煌々と燃え盛る様に過ぎないのだ

人間はいつも灯火に向かって歩いている
たとえその光の中で消え去っても
決して後悔なんてしないだろう
散らばる光の粒を見上げて手を伸ばす
そこに慈愛の天使なんていなくても



Masanao kata©️ 2011
Anywhere Zero Publication©️ 2018
アンソロジー詩集『Jam Mind』
https://www.taiyo-g.com/shousai024.html
 

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