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第4章<診断する>フィードバックの提供者はいかに学習者が強力な洞察を生み出すのを支援するか(付録4.1)

1.変革への一歩~洞察から生まれるリーダーシップの進化

上級管理職や経営幹部まで到達したリーダーのほとんどは、かなり凝りかたまった自己イメージを持っているものである。そのため、成功のための新しい見方を彼らに提案するのはさらに難しくなる。そこで有能なコーチは、参加者がそれぞれ新たなひらめきを感じられるよう支援する。それは、コーチ側の準備なしには実現できず、その準備をわれわれは洞察のための計画と呼ぶ。

典型的な方法としては、コーチがリーダーに関するあらゆる情報(職歴、自己申告による希望事項、多面(360度)診断のデータ、アセスメント・センターの結果など)を詳しく調べて、データから主な傾向やテーマを集め、できるだけ正確に相手を理解することだ。そして次に、観察結果を本人に示すのに最も適した言葉を選んで伝える。


例:ナイジェルは人の話を熱心に聞いて共感する。対立の最中でも、人間関係を築き、維持する。人への影響力はずば抜けており、他者に対して思いやりがあって、反応が速く、その一方で強い信念を持っている。だが、ナイジェルは変化を起こすのに苦労している。人間関係に重点をおく彼の性質が、慣習に疑問を投げかけたり、将来の課題を予測して改善を強く求めたりすることを阻んでいるようだ。ナイジェルには変革リーダーシップ能力の開発が役に立つと思われる。

信頼性の高いアセスメントから得られた上記の結論は論理的だ。多くのコーチが、根拠となるデータを示しながら説明しようとし、おそらくナイジェルも納得するだろう。結論の根拠となったデータの量が数多く詳細なことを考えれば、他にどんな選択肢も考えられない。コーチの主張に反論するには相当な説得力のある反論が必要だろう。

2.洞察のための仮説を生み出す手法

🔶行動データと個人特性データを比較対照する!

目に見えるものと、その根底にあるデータが示すものの相違点は、洞察を得るための有益な情報源となる。なぜなら、現れた行動についての見えない理由を明らかにするからだ。例えば、不安定な性格なのに、周囲からは落ち着いていると評される人を想像してみてほしい。彼についてあなたは、こう仮説を立てる。「彼の心配事は内在化され、実際は密かに打撃を受けている」(例.快活で人に穏やかに接するマネージャーだが、実のところ睡眠中の歯ぎしりに悩まされている)。また加えて、不安定さが、今後、阻害要因として現れるかもしれないとも考える。そしてその可能性について本人に考えさせることで、この不安定さが将来の職務にどのように影響するかが明確になるだろう。

🔶多面(360度)診断のデータから相違を探す!

対象となるコンピテンシーに対する現状のスキルを最も正確に示せるのは誰だろう?上司か、同僚か、部下か、あるいは自身だろうか?答えはコンピテンシーによって変わる。例えば、コーチングや変革推進の能力は、直属の部下が最も的確に評価できるだろう。しかし、同じコンピテンシーの評価が評価者によって大きく異なる場合は、新たな洞察の仮説が必要になる。変革に関して上司からは低い評点、部下からは高い評点が得られたら、上司とのコミュニケーションの強化やパーソナル・ブランディング(個人のブランド化)、自己宣伝が必要だということを示唆しているのかもしれない。

🔶すでに判明しているキャリア志向や当人が望む職務を想定したシナリオを展開する。

昇進意欲が強い人(経歴や個人特性データで明らかになる)は、将来の移行に関わる課題の話し合いから得るものがあるだろう。コーチは、アセスメント・プロフィールを見ながら、参加者が「重要な岐路」で直面するであろう問題の洞察の仮説を立てる。例えば、権限委譲で苦労している人は、職務が上がるにつれ責任の範囲や戦略的意昧合い、可視性が広がるので、すべてに直接的な関わりを持とうとし続けて、困難に直面するだろう。

だが、ナイジェルから成長のための真のエネルギーを引き出したかったら、合意を得ることがゴールではない。われわれが欲しいのはナイジェル自身の洞察である。コーチによる、データから導かれた論理的な結論は、一瞬、成功と感じられるだろう。ナイジェルがけんか腰になってフィードバックを全面的に拒絶しなければ、なおさらのことだ。だが、受け入れられるだけでは、実際の行動を促すことには遠くおよばない。必要なのは、コーチの結論を話し合う別の方法であり、その結論を具体化するのにナイジェルを関わらせる、もっと意図的な方法である。つまり、ナイジェルがビジネスに関連する自身の見解を取り入れられ、それを自分の洞察によって修正できるよう準備をするということだ。言いかえれば、コーチの結論は、それが、コーチとナイジェルが一緒に試すことのできる仮説――洞察のための仮説――として準備、位置づけられれば、もっと洞察を生み、成長へのエネルギーを作り出すことができるのである。

合意を得ることがゴールではない。われわれが欲しいのは洞察である。

洞察のための仮説は、学習者の行動や性格パターンについての、そしてそれが将来のリーダーシップ状況でのパフォーマンスにどう影響するかについての客観的なデータや情報に基づいている。以下は、ナイジェルに関する洞察のための仮説の例である。

例:ナイジェルは対人場面での機敏さに優れているため、さらに高い階層において特有の政治的力学の中をくぐり抜けていくには適しているだろう。だが、ビジネスユニットや部署全体の責任を負わされた場合、リーダーとしてビジネス状況や制約の変化に適応し、常に主導権を発揮できるとは限らない。危機には素早く反応して問題を解決できるかもしれないが、パフォーマンスを阻害しかねない潜在的な要因に積極的に対処しないかもしれない。

この予測をもとに、ナイジェルの能力開発エネルギーを活性化させるためには、これをフィードバック面談の中心的な議題にしなければならない。気さくに話し合って、最終的にナイジェル自身に定義づけをさせて、当事者意識を持たせるのだ。

これが、彼の仕事、キャリア、個人的なニーズを含めた、彼の世界の一部にならなければならない。これは、コーチの知恵や言葉で実現するものではない。ナイジェルは会話に自分の見解を持ち込み、提示された洞察にさらに重要な洞察を付け加えるだろう。フィードバックコーチは、ナイジェルの反応がどの方向に向いても対処できるよう準備しておく必要がある。

3.おすすめ人材アセスメントソリューション

①コンサルティングソリューション

②オンラインシミュレーションアセスメント&アセスメントシステム

③オンライントレーニング&ディベロップメント

4.DDIとは

DDIは、世界最大手の革新的なリーダーシップ・コンサルティング企業です。1970年の設立以来、この分野の先駆者として、リーダーのアセスメントや能力開発を専門としてきました。顧客の多くは、『フォーチュン500』に名を連ねる世界有数の多国籍企業や、『働きがいのある会社ベスト100』に選ばれている世界の優良企業です。
DDIでは、組織全体におよぶリーダーの採用、昇進昇格、能力開発手法に変革をもたらす支援をすることで、すべての階層において事業戦略を理解し、実行し、困難な課題に対処できるリーダーの輩出に貢献しています。
DDIのサービスは、現地事務所や提携先を通じて、多言語で93カ国に提供されています。また、同社の研究開発投資は業界平均の2倍であり、長年にわたる実績と科学的根拠に基づいた最新の手法を駆使して、組織の課題を解決しています。

◆DDI社の4つの専門分野

DDI社は、4つの専門分野を中心に、長年の実績と科学的根拠に裏付けられたソリューションと、より深い洞察を提供し、優れた成果を生み出しています。

5.会社概要

会社名:株式会社マネジメントサービスセンター
創業:1966(昭和41)年9月
資本金:1億円
事業内容:人材開発コンサルティング・人材アセスメント

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