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会社の数字を読めるようになろう!その2

意思決定会計を身につける

前回の「会社の数字を読めるようになろう!その1」では、財務会計と管理会計の違いと、それぞれの使い方についてその概要を見てきました。それでは、次に、もう一歩踏み込んで、管理会計を用いた意思決定について学んでみましょう。

意思決定には、大きく2つのものがあります。ひとつは短期の意思決定で、もうひとつは長期の意思決定です。

① 短期の意思決定
・日常業務における意思決定
・影響範囲が1年以内
・判断基準は「利益」
② 長期の意思決定後者
・投資に関する意思決定
・影響範囲は複数年
・判断基準は「投資回収できるかどうか」
 このような意思決定に管理会計を用いることを、総称して、意思決定会計とよびます。

投資の経済性評価を使いこなす

それでは、ここで一つ簡単な例を考えてみましょう。以下のようなケースがあった場合、あなたならどのように考えて、どのように判断を下すでしょうか。

たとえば、堅実な営業をすれば300万円/月の売上を確実に立てることのできる営業パーソンが、これまでとは違う1000万円の大口案件を狙っています。しかし、大口案件を獲得するためには3ヶ月が必要であり、その期間は他案件(これまでの300万円/月の案件など)に労力を割くことはできません。
このときの営業パーソンにかかる諸経費等は、以下となります。
・この営業パーソンの人件費は、50万円/月
・営業にかかる費用は、30万円/月
さて、この大口案件は狙いに行くべきでしょうか。

このような意思決定を行う場合に、どのように考え、どのように結論を出したらいいかについて、意思決定会計はその指針を与えてくれるものです。
以下で順を追って見ていくことにしましょう。

下の図中の□で示したコストは、両方のケースに共通して発生するコストのため、意思決定には影響しません。なぜならば、300万円の案件を取りに行く場合にも、1000万円の案件を取りに行く場合にも、この80万円/月のコストは等しくかかるものだからです。このようなコストのことを、埋没コスト(sunk cost)といいますので、ここで覚えておきましょう。

それでは、①の300万円の案件を狙いにいくのと、②の1000万円の案件を狙いにいくのとでは、どちらの方がいいのでしょうか。
それを見るためには、①と②の差(違い)を調べます。先ほどの80万円/月(50万円/月+30万円/月)は両社に共通のため相殺されて消えます(判断には影響しません)。

仮に3ヶ月後に確実に1000万円の大口案件を獲得できるとすれば、大口案件を狙うべきとの結論にいたりそうです。なぜならば、毎月300万円の機会損失があったとしても、3ヶ月後に1000万円の大口案件を獲得できれば、差し引き100万円の増加を見込めるからです。
ただし、ここでは金利の影響を除いています。

もし金利の影響も加味する場合には、初月の売上げ300万円と、2ヶ月後の売上げ300万円をそれぞれ3ヶ月後まで運用した場合に、その金利収入が100万円を超えないことが条件になります。(今どき、そのような高金利はありませんが。)
また、例題の中には明記しませんでしたが、1000万円の大口案件が3ヶ月後に確実に獲得できるかどうかは分かりません。もし獲得が不確実であるとするならば、獲得できる確率を考慮する必要があります。ここでは、問題を単純化するために、まずは3ヶ月後に確実に獲得できるものとして考えました。

なお、図中にも示しましたが、もし3ヶ月後の1000万円の大口案件を狙いにいくとすれば、その期間は他の案件には労力を割くことができないため、毎月獲得できるはずの300万円/月の案件を逃すことになります。このように一方を選択したことによって、他方を選択していれば得られたはずの利益のことを機会コスト(opportunity cost)、または逸失利益といいますので、こちらも併せて覚えておきましょう。

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今回はここまでにします。
また次回をお楽しみに!

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