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ショートショート#7 「富の井戸」

今日も村の気温は高かった。歩いているだけで全身から滝のように汗が流れてくる一日。

アール氏は軽く昼食を済ませたのち、炎天下を歩き、給水を行うために井戸へと向かっていた。朝は薪を割り、昼は井戸で給水をする。これが彼の日々のルーティーンである。

普段であれば井戸に着くや否や、近隣の村人たちが集い、水を汲み上げがてら、その名の通り井戸端会議と称して雑談をしているのだが、今日の様子は違っていた。

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昨年、自費出版しましたショートショート小説「クドリャフカの旅立ち」に掲載されている全9篇のショートショートを一気読みできるマガジンです。 …

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