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特別支援教育を必ず経験する

こんにちは。特別支援学級を担当して12年目のMr.チキンです。
ウクライナ情勢をニュースで見ています。
私は国際情勢を専門的に見ることができるような立場にありませんが、
遠い国の小学校のことを考えます。
学校に行きたいだろうな。学びたいだろうなと思います。
ウクライナ、ロシア両国の子どもたちが当たり前のように平和のうちに教育を受けることができる日々が、早急に来ることを望んでいます。

今日は気になった国内の特別支援教育に関するニュースについて紹介します。

特別支援教育「全教員が2年以上の経験を」に大賛成!

職員室でニュースを見ていて、驚きました。そして、特別支援学級の教員で話をしました。まずは以下のニュースをお読みください。

特別支援教育を担う教員をどう育成するかについて議論している文部科学省の検討会議は24日、すべての教員が採用後10年程度の間に、特別支援学級の担任などの経験を2年以上積むことが望ましいとする報告書案を大筋で了承した。

毎日新聞

全教員が特別支援教育を経験する
これについて、Mr.チキンは大賛成という立場です。
もちろん、これにはたくさんの否定意見もあるでしょう。

  • 通常学級を志望して入った教員が2年間も特別支援教育に携わるとなると、さらに教員採用試験の倍率が低くなるのではないか。

  • 通常学級と特別支援学級の目的や方法が異なるので、対応できない教員が出てくるのではないか。

  • 特別支援教育の教員が流動的に異動になるため、特別支援教育を受ける児童が不安定になるのではないか。

どれも言いたいことは分かります。
しかし、それはすべて「今の教育が良い」という前提の意見だと思います。

現状の教育がそこまで良いのだろうか という視点

おそらく、「全教員が特別支援教育を経験」ということに反対意見を言う人のほとんどが、現状の教育を受け、それなりに納得・満足してきた方ではないかと思います。
しかし、学校教育には、20年来改善しない課題が山ほどあります

でも触れました。

  • 不登校で悩む子がいる

  • いじめがある

  • 障害のある子との交流が進まない

  • 低学力児童の自己肯定感の低さ

  • 無くならない学級崩壊

これらは一例に過ぎません。
改善をしようと学校教育も努力はしてきました。
でも、根本解決はしていません。
これは、現状行われている教育が最良ではないということを示しています。

特別支援教育≠障害児教育のプロ

全教員が特別支援教育を経験するということについて否定的な意見の方は、
特殊教育時代のイメージが抜けきらず、特別支援教育≒障害児教育という捉え方があるのではないかと思います。
でも、もはやそれは四半世紀前の考え方と言えるでしょう。
最新の特別支援教育≒子ども理解のプロと考える方が近いと思います。
生理学・心理学・教育学などに基づき子どもの実態をはかり、子どもにとって最良の環境・教育課程を設定していくというのが特別支援教育です。
しかし、その子ども理解が必要なのは本当に特別支援教育だけなのでしょうか。
通常学級を見渡すと、本当に多様な子どもがいます。

  • 国籍が異なる

  • 宗教が異なる

  • 家庭環境が異なる

  • グレーゾーンの子、低学力の子がいる

  • 人間関係の調整が難しい子がいる

  • いじめられる子、いじめる子がいる

  • 学校に来られない子がいる      etc…

私には、子ども理解を避けてこれらの子どもたちに対応する術が分かりません。
特別支援教育のもつ子ども理解の考え方は、学校の抱える教育問題に適切にアプローチするのではないでしょうか。

目的は同じ

そもそも、特別支援教育と通常教育は目的が異なるものなのでしょうか。
教育基本法を見てみましょう。

第1条(教育の目的) 教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。

教育の目的は人格の完成です。その方法として、各教科があるのです。テストや試験で重要視される各教科は実は枝葉の部分なのです。幹は人格の完成にあります。
さて、この教育を行う”学校”について、学校教育法第1条で以下のように書かれています。

第一条 この法律で、学校とは、幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校とする。

第一条に記された学校(俗にいう一条校)では、特別支援学校の記載があります。つまり、小学校であろうと、特別支援学校であろうと、教育基本法で定められる教育の目的は一緒であるということです。

全教員が特別支援教育を経験するメリット

子ども理解を身につけるべき”ということ、”目的は同じである”ということから考えると、教員採用倍率の低下は限定的なのではないかと思われます。
さて、特別支援教育を必ず経験して通常学級に入っていく教員が増えるとどのようなことが起きるでしょうか。

  • 子ども理解の基礎を身に着けた教員が通常学級に増える

  • 通常学級教員が授業することで、特別支援教育の教科性が高まる

  • 通常学級と特別支援教育の敷居が低くなる

つまり、

通常学級の中で多様な学び方を許容できるようになる

ということが考えられます。

特別支援教育は特別ニーズ教育に変化していく

現行行われている特別支援教育の対象児童は以下の通りです。

一  知的障害者
二  肢体不自由者
三  身体虚弱者
四  弱視者
五  難聴者
六  その他障害のある者で、特別支援学級において教育を行うことが適当なもの

でも、本当に支援が必要なのはこのカテゴリーの子たちだけでしょうか
母国語が異なる子、宗教の多様性、経済的に苦しい子、性的違和を覚える子、生理痛が重い子などなど、支援を要する子にカテゴリーはありません
私は、この特定の対象が支援を受けるという特別支援教育の考え方は今後20年で消えていくのではないかと考えています。
また、学習のニーズはさらに多様化していくでしょう。まさに、特別支援教育から特別ニーズ教育への転換が始まると考えられます。(特別ニーズ教育については別記事で紹介予定です。)
今回の全教員が特別支援教育を経験するということは、その土台作りなのかもしれません
では、またね~!


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