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出会い

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人と出会うと、すぐに言葉にしたくなる。この世界の何処かで出会ってくれてありがとう。
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#小説

精神を止む

精神を止む

君は、この世界に足を踏み入れる。それはもう恐る恐る。その足の先に、ガラスの破片のような物は落ちていないかと確かめながら。

裸足で、現実という名の地面を踏み締める。アスファルトの熱を足の裏に感じながら。

君は、この世界のことをよく勉強してきたみたいで、「靴を履いていないのはきっと僕だけだ」と呟いた。

でも君は、靴を履くことを選ばなかった。

ある日、人集りの中色んな靴に囲まれながら、君の素足は

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「楽しかった」という完結方法

「楽しかった」という完結方法

街中で聞こえてくる「かわいい」と、「楽しかった」という感情はどちらの方がより軽率なものなのだろうか。

もしかするとどちらもそうではないのかもしれない。

無意識のうちに、

素直に口から溢れでた、

温かいままの感情なのかもしれない。

「楽しかったらそれでいい」なんて言葉はとても便利であって、肯定文にだって言い訳にだって使えてしまうのだ。

「楽しい」という感情は割と手の届きやすいところにある

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桜を見て思い出すのは、きっとサンドイッチだ

桜を見て思い出すのは、きっとサンドイッチだ

お花見だなんて気分でもない時に、

桜を見ながら歩こうなんて誘いを受けた。

桜がどこに咲いているのかすら知らない私と、

このルートが綺麗なんだと率先して歩く目の前の人。

桜の景色よりも、公園で食べたサンドイッチをよく覚えている。

知らない人が犬の散歩をしながら話しかけてきて、

きっと話しかけてきた人は日本人じゃないねなんて話をした。

それ以外は何も思い出せない。

その日本人ではないで

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