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「もたらしたもの」~市内一周駅伝大会後編~

伊勢原市内一周駅伝当日だ。

俺達は、ラジオに出演していたおかげもあり、当日は、「もと2」だと、まじで囁かれるようになっている。

集合場所に失踪していたチャンが、現れる。

「アイドルにはならないけど、俺走るよ」

当たり前だ。

ポップが、親父にみんな揃ったと伝える。

ポップの親父は、監督である。

「じゃ、ゼッケン渡すぞ…」
「これ…が……言いたかった」


は?

言いたかったって事にすでに泣いている。

ポップの親父は泣いている。
練習頑張ったとか思い出すではなく。

親子で天然である。ポップが続く。

「お前らのおかげで親孝行出来たよ」

繰り返す。親子で天然である。

走る順番だ。ポップ、俺、チャン、ショウ、バザーである。

ここから、アドレナリンなのか、記憶が曖昧である。

とにかくポップが、俺の所に全力で襷を持ってきた。息が上がっているどころではない。

ポップは、とにかく一生懸命が分かる必死さで、俺に襷を渡す。

受け取った瞬間に転倒するポップを見て、胸が熱くなり、自分のペース、タイムプラン全てぶっ飛んだ。

浮かぶのは、ポップの必死の表情と転倒する姿で、とにかく俺も想いと一緒に繋げなければならない。それも全力でないとダメだと思う。気持ちは前、体はバラバラ。だけど体が熱い。

襷は、チャンに繋がる。

俺は繰り上げスタートが危うい4区の中継所へ急ぐ。

車からラジオの実況が流れる。
ラジオは、チャンが田んぼに落ちなかった事を伝えている。

中継所である。

周りの観客が、「もと2」一分くらい足りないぞと喋っている。

ここで繰り上げスタートかと。思っていた。

その時。

「もと2まで待っててやれよ」と観客の人達が言うのである。

ラジオの実況が聴こえる。

「今のままだと間に合わない」

歓声と実況がごちゃ混ぜの中、はっきり俺は運営者が言うのを聞いた。

「もと2」まで待て。

ショウがフラフラでやってくる。歓声は、大きいけれど、頭の中は静かである。人の興奮と違う場所で現実を見ている感覚である。

襷がバザーへ繋がる。皆興奮している。

ゴールでポップとバザーに合流する。
周りの選手からもおめでとうと声が掛かる。

ここで俺は、はっきり自覚する。真面目にふざけるとそれは、伝染し、人を動かすこともあると。

この事実は、今後の私に大きく影響を及ぼす。現実では、反則で、やってはいけない。

起こってはいけない事。

ただあの中継所の熱量は、それをも変える何かが起きていた。

なんのはなしですか

木ノ子二十歳くらい「情況」と「状況」を整理し「上京」を決意したはなし

ここから舞台は、東京へ移る。
ポップとバザーは、俺の後を追って来ることになり、後に、俺の悪ふざけの最たるもの、8ヶ月かけて、北海道から沖縄を二人で走って縦断することになる。

物語は怒涛の東京青春編へ続くとか続かないとか。いつになるやら。

全て2022年の秋に行う予定のKONISHIKI来日40周年記念イベントに向けて、自分達なりのお祝いを自分達の生まれた町、神奈川県伊勢原市で行うために、過去から現在を綴っていきます。ご一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです。


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