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漫画や小説の感想・解説・妄想

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好きな漫画や小説についての感想など。自他混合。
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#毎日note

「水たまりで息をする」感想

「水たまりで息をする」感想

先日来、高瀬隼子さんにハマり中である。

今回は「水たまりで息をする」を読んだ。

ちなみに、この作品が芥川賞候補になった時の、選評がこちらである。

選評を読み終わった瞬間「やった!」と小さくガッツポーズしてしまった。
誰も私のようには読んでいない、と思ったからだ。

もちろん、感想に正も誤もないのは、わかっている。
けれど、この作品で表現したかったことは、「型にはめないと定義が難しいものから、

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「宝石の国」に込められたメッセージとは何だろう?

「宝石の国」に込められたメッセージとは何だろう?

本作は、月刊アフタヌーン誌上で連載中の「宝石の国」に関する考察である。ネタバレを多く含むため、未読の方は「宝石の国」読了後に読むことをお勧めする。

市川春子が抱えるテーマ

不思議な生物と人間との共生を切なく描く天才、市川春子の初連載作品が「宝石の国」である。
雑誌連載時から話題になっていたが、2017年のアニメ放映以降に多くのファンを生み出し、その独自の世界観に対する考察も多数出ている。
謎の

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宝石の国 妄想解説「シンシャ編」

宝石の国 妄想解説「シンシャ編」

フォスの行動原理は、連載初期からずっと「役に立ちたい」でした。
役に立つことで、みんなに認められたかった。
能力もないのに戦争に出たいのも(「大好きな先生を助けたいから」も本心でしょうけれど)アクションが派手で、役に立っているのが誰にでもわかるから。

一方シンシャは高い能力を持ちながら、同室のベニトからも

「あいつの毒は呼吸と同じだし、あいつが迷惑かけないようにしてるのもわかってる。でも正直に

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宝石の国 妄想解説「三族の取り込み」とは?

宝石の国 妄想解説「三族の取り込み」とは?

三族を取り込むとは具体的に何をすることなのか?私が連載中から最も気になっていたのは、エクメアによるフォスの人間化計画の最重要項目であろう「三族の取り込み」です。
人間から分かれた三つの種族を再び一つにし、人間的なふるまいができるように仕組んだ、という意味であることはわかります。

けれども、具体的に何をしたら「三族を取り込めたことになるのか」についての説明がなく、よくわかりませんでした。

ここで

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映画「フライ、ダディ、フライ」ビジュアルブックを見て浸る年の瀬

映画「フライ、ダディ、フライ」ビジュアルブックを見て浸る年の瀬

私は好きになるとしつこい。
同じアーティストの同じ曲を延々聞いているし、同じアニメをワンシーズン分12回、何周も何周も見ている。
小説も繰り返し読んでは、同じところで泣いているし、どれだけしゃぶりつくせば気が済むのかと、自分でも思う。

「フライ、ダディ、フライ」は、そんな私が、人生で40回は軽く見ている映画だ。
何度見ても、やっぱりいいなあ、好きだなあ、と思う。
公開は、2005年7月9日。

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「おいしいごはんが食べられますように」ネタバレ豊富な偏見てんこ盛り解説

「おいしいごはんが食べられますように」ネタバレ豊富な偏見てんこ盛り解説

「おいしいごはんが食べられますように」(高瀬 隼子 著)を読んで、最初に思ったのは「どうしてわかるの?」だった。

太宰治の小説を読んだ人は、ほぼ全員が「これは私の話だ」と思うのだ、と何かで読んだが、そういう類の「どうしてわかるの?」に近い。
私は、二谷さんであり、芦川さんであった。

Amazonの作品解説には、こう書いてある。

確かに、主題は人間関係のようにも読める。
けれど、私はこの本を「

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『デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場』感想

『デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場』感想

以前から気になっていた、この本を読み終えた。

栗城さんの存命中、わたしは彼の存在を全く知らなかった。
「ニートの登山家」と持ち上げられて、ネットで英雄視されたことも、エベレストアタックに何度も失敗して「下山家」と揶揄されていた頃のことも、目にも耳にも入っていなかった。
彼の人生についてはこの本で、初めて知ったことばかりだ。
しかも、私は登山というキツいスポーツにまるで興味がなく、雪もなく酸素も濃

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「娘がいじめをしていました」感想文・環境調整の提案

「娘がいじめをしていました」感想文・環境調整の提案

とんでもなく後味の悪い漫画を読んだ。

小学生の女の子の間に、いじめが起きるところから話が始まる。
もうこれだけで、いやあな気持ちだ。

以下、ネタバレを含むあらすじを載せる。

いじめの話は、フィクション・ノンフィクション問わず、世の中にあふれている。
そして、その解決策らしきものをもっともらしく載せているサイトも、ごまんとある。
だが、現代のいじめは、発端も拡散も収束も、あらゆるところにネット

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