〈引越し日記2〉 初めまして、家
遠くに見える山、近くに迫る木々、田植えを前にたっぷりと水を湛えた田んぼ、畦道を歩く人、並走する車、通り過ぎた無人の駅、耳がつんとなるトンネルの暗闇、を過ぎたら、目に勢いよく差し込む光。どこも似ているようで同じではない、そんな初夏の田舎の風景を車窓にいくつも通り過ぎながら、私の胸は高鳴っていた。やっと会えるという楽しみな気持ちに、もし気に入らなかったらどうしようという不安が覆いかぶさるのを、「きっと大丈夫だからさ」と、私が私の手で私の内側をさする。
新八代駅から、玉名駅を目指す