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〈引っ越し日記1〉 電力会社を選んでみる

来月に控えた引越しのため、今の住居を退去するための手続きと、転居先の契約に関する手続きがようやく落ち着いた。

相棒である猫のために「ペット可物件」という条件は外せず、希望のエリアでの物件探しにはなかなか苦戦し、やっと決まった新居にはまだ行ったことがない。遠方への引っ越しなので、内覧することが叶わず、引越しの日に初めて新居を訪ねる、というなんとも緊張感のある引っ越しになった。

一度決まりかけた物件が、物件側の都合(修繕工事が長期になるため入居者募集を取りやめるという理由)によりだめになった経緯もあったので、ようやく契約書が送られてきたときにはほっと胸を撫で下ろした。不動産会社曰く、契約書一式にサインをして返送した後、別会社から電気・ガス・水道の開通に関して電話があるとのこと。

数日後、不動産会社から聞いていた会社名から電話がきた。水道は市の水道課に、ガスは指定のガス会社に自分で電話をしてほしいとのこと。すらすらとマニュアル通りに話す電話口の女性は、続いて電気に関しての説明を始める前に、「電力自由化に伴いお伺いしますが、ご自身で直接、電力会社と契約されるなどのご希望はありますか?」と聞いてきた。何も考えていなかったので「いや、特には…」ともごもご返事をすると、女性は「でしたら弊社としましては○○プランをお勧めしておりまして…」とまた流れに乗ってすいすいと先を行く。

もし、女性が電力自由化云々の前置きをしなければ、私はなんの疑いももたずに、進められるがままに「それ(○○プラン)でお願いします」と答えていただろうと思う。ただ、女性がその前置きをしてくれたおかげで、私は「電力会社って自分で選べるんだ」という発見から先に進めなくなってしまった。
もちろん、電力自由化についてはこれまでにも聞いたことがあったし、実際に新電力に切り替えたことをSNSに書いている知り合いや、新電力の事業に新たに取り組み始めた会社のことなどを知る機会もあった。特に同世代の友人がパワーシフトキャンペーンの紹介電力会社に切り替えたことをSNSに書いていたときには、私も興味が湧いていろいろ調べてみたのだけれど、実際に切り替えるまでには行動に起こせずにいた。切り替える手続きもweb上で済んだりととても簡単そうだし、これまで通りに生活に支障なく電気を使うことができる。その上、自分の考えにあった電力会社を選べば、自分の生活が原発を動かすこととつながっている罪悪感も減らすことができる。そこまで魅力がわかっていながら行動にできなかったのは、ただ一つ、一歩を踏み出すきっかけを探していただけ、というところだ。


今回また改めて調べてみたものの、まだ勉強不足で、新電力や電力自由化について正確にお伝えしたり、自分の意見を差し出すことはできないので、ここでは特にこれらについて深く掘り下げることは止めておく。

ここに書いておきたいと思ったのは、「ちょっと考える時間をください」と言うだけで、隠された選択肢を見つけることができるとということ。そして、自分の生活に関わることは自分で決めることができるということ。
流れるように話す電話口の女性は、私が止めなければ「それでは○○プランでご契約いただきますね〜」と進めたのだと思う。実際に、ほとんどの人はこの流れに身を任せて○○プランで契約するのだろう。当然の如く○○プランで進めそうな女性に、私は「ちょっと、考えたいので時間をください。改めてお返事させてください。」と言ってその流れを止めた。女性は少し驚いた様子だったけれど、また3日後に連絡しますと電話を切った。

それから、転居先のエリアで選べる電力会社を調べたり、これまでの自分の電力使用量を確認し直してどういったプランが自分に向いてそうかを比較してみたりした。まず、電力会社がこんなにたくさんあることに驚いた!中には、別の業種で日常に溶け込んでいる大手の会社(ANA、楽天、auなど)が電力にも取り組んでいたりもするし、小さなローカルな会社が取り組んでいたりと、全く違う規模の会社が同じ土俵に並んでいるのも、幅広いのも面白い。リサーチだけで2-3時間を使ってしまったけれど、これから毎月支払う電気料金をできるだけ安く抑えたり、自分が選ぶ電力がどのように作られたものであるかなどを知ったり選んだりできることを思えば、かける価値のある労力だと思える。同じ九州電力でも、進められた○○プラン(電話をしてきた会社を介して九州電力を使うプラン)よりも、自分で直接九州電力と契約した方が安く条件も良く、九州外からの移住者限定の割引もある、なんてことも知った。本当に、知らなきゃ損だ。

結果的には今の自分の生活や考えにあった電力会社・プランを選ぶことができて本当に良かったのだけれど、そもそも”自分には選ぶ権利がある”ということを、ただ流れに身を任せていたら気づけなかったのだと少しヒヤッとした。難しいこと、慣れないことにはついつい目を瞑りたくなる。そこにすいすいと手を引いてくれる存在が現れれば、「じゃあそれでお願いします〜」と言ってしまった方が楽に思える。でも、その瞬間には知識不足で分からなくても、なんでもググれるこの時代、数時間調べれば大抵のことは大枠が見えてくる。一言、「考える時間をください」と言うだけで見えてくる選択肢がある。
(「じゃあそれでお願いします〜」は、いいお店でいい店主に日本酒やワインのおすすめ聞いてそれに従うときのためにとっておくべし、である。)


そして、自分の生活に関わることは自分で決めることができる。”可能”というより”行使すべき権利”であるということを強めに念じておきたい(自分に)。一見、他に選択肢がないように見えても、立ち止まって調べてみたり、周りに意見を求めてみれば他の選択肢があるかもしれないし、結果は同じだとしても、理解して自分で選んで決めたことと、よく分からずに決めさせられたこととは本質的に大きな違いがある。

そう言う一つ一つの選択が、自分の生活の実感や責任や味わい、になるように思う。

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