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鳥取をめぐる1.5日間の旅{前半}

後輩二人が、福岡から鳥取へ遊びに来てくれた。12歳から18歳までの6年間通った学校は、中学校と高校が一緒になった”中高一貫校”で、全寮制だった。一つ下の後輩である二人とは、5年間、同じ女子寮で暮らしたことになる。1学年40人、女子は18人(今は男女半々になったようだが、私の代はまだ男子の方が受験倍率が低いのに入学枠は4名分多いという状況で、それは私が初めて感じた”女子”と”男子”の不平等であった。むむむ。)という小さな規模で全寮制となれば、1年生から6年生まで全員が全員の顔も名前もわかる範囲。小さな世界の苦しさも伴いながら、その分、濃い経験をした6年間であった。

自分の経歴を語る時、あるいは10代の思い出を話す時、この稀有な中高一貫校でのあれこれを語らずにはいれない。この6年間だけでも一生分ネタがある。二人を連れて湯梨浜の汽水空港に行き、来店のたびにカウンター越しに世間話をする店主のモリさんに、私が「中高時代の後輩です」と二人を紹介すると、「あ、あの濃厚な学校の!」とすぐにわかってくれた。私はこんなところでもネタを披露していたんだったか、と少し照れる気持ちになった。

私たちの世間話の横では、秋田犬の「おとうさん」(本名)が爆睡していた

というのは、ふたりを案内した2日目の話。

三連休を利用して遊びに来てくれたふたり、サオリとエミは、金曜日の昼過ぎに私がはたらく隼Lab.がある鳥取県八頭町の郡家駅に降り立ち、私はそのまま二人を愛車ジムニーに詰め込んで(3名以上乗せる車ではないので、2泊3日分のふたりの荷物と共に、文字の通り”詰め込んだ”という様相だった)、隣の若桜町を目指した。

旅先に到着したばかりのふたりはもちろん、仕事をしつつ二人の到着を待っていた私の方もお腹はペコペコ。そんな状態で食べる「とんかつ新」のとんかつは、店にものぼる美味しさである。隣町でありながら、八頭町からは車で30分ほど。土日は店前にも並ぶ人気店なので、昼休憩にひょいっとこれるお店ではない。言葉はいらない、とにかくうまい、それが「とんかつ新」。

小柄な二人がごはんおかわりと言い出すほどの美味しさであった

その後、gallery cafe ふく〈かど店〉に寄り、開催中の「へんてこモンスター展」を見る。店主のひやまさんの息子である蓮ちゃんは2月がお誕生日。毎年、お誕生日月には”個展”がプレゼントされ、蓮ちゃんはギャラリーに自分の作品を並べる。この日は蓮ちゃんも在廊しており、いくつかモンスターの解説を受けた。ふたりは、へんてこモンスターを見たり、ふくオリジナルのコーヒーのドリップパックやドーナツを買って、楽しんでくれていた。

店主ひやまさんの息子・蓮ちゃんの個展を開催中のふく

この日はその後、私がはたらく隼Lab.を案内して、私はなぜか少し照れのような謙遜のような気持ちもあって、そそくさとふたりを先に若桜鉄道に乗せて、宿をとってある鳥取市内に向かわせようとしたのだけど、二人は「もう少しゆっくりしたい」と申し出てくれて、ポトラ(私が店長をしている書店)で本も買ってくれた。

後から考えたら、10代のいわゆる”多感な時期”に、寝食共にした仲であるふたりに、大人になった自分の今の成果のようなものである隼Lab.やポトラを見せるのは、家族に働いている姿を見られるような恥ずかしさがあった。そんな私をよそに、ふたりはじっくりと楽しんでくれたようで、嬉しい。

結局、仕事を終えた私の車で鳥取市内に向かい、二人は宿でチェックインを済ませた後合流し、予約しておいた「Table make」に向かった。

思い出話や、今の仕事の話、家族やパートナーとの暮らしについて、などなど美味しい食事とお酒を交わしながら、話はいつまでだって続く。私も大好きなmakeの雰囲気をふたりも気に入ってくれて、いい夜を過ごした。

後日談になるが、この時エミがmakeにお気に入りのイヤリングを落とした。

翌日の夜、また別のお店に向かうときに「昨夜、イヤリングを落としてしまって。でもどこに落としたかわからないし、仕方がない。」と言いながら、ダメもとでmakeに電話してみると預かっているという。普段声の小さなエミが、「実はお気に入りだったんです!よかった!」と喜んでいて可愛かった。旅の途中に物を無くした経験は私にもあって、周りに気を遣わせるまいと「仕方がない」と自分をなだめる気持ちはよくわかる。でもお気に入りであれば尚更、きっと自分の中ではショックだったはずだ。

見つかってよかった。
わたしもサオリも「よかったねぇ」と喜んだ。
それも含めて二日間ともいい夜だったと振り返る。

▼ 後半に続く


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