マガジンのカバー画像

みじかいたんぺん

48
みじかいたんぺんです。短いです。体感時間は長めです(たぶん)。
運営しているクリエイター

2022年6月の記事一覧

ふわふわ

 ウチのクラスには不破さんが二人いた。
 一人は魔の山から来ていて、もう一人は、地獄の門番の娘だった。
 二人そろってふわふわというわけだ。

  仲は良い。
 例えば同じ人を好きになっても、二人でずっとその人を好きでいようねというようなことをいつも言っている。
 でも一か月もすると、その意中の男らしき人物の消息は不明になった。

 なぜ二人はこんなに仲が良いのか。

 出会ってまだ3か月。それま

もっとみる

スカイフック(漁師の嫁2)

「この前崇さんと3人で釣りに行ったでしょ」

 私はうんと相槌を打ちつつ、マカロンの上蓋を取ろうとする。
 何度も挑戦しているが、うまく剥がせたためしがない。接着剤でも塗っているのではないだろうか。

 かえでは続ける。

「あのとき、すれ違った男の人がいたじゃない。赤と青のチェックの長靴をはいた」

「知らないわね」
「赤いパジャマみたいな服を着て」
「それがどうしたっていうの?」
「ううん。い

もっとみる

80

 一日が80時間になった。
 警官も泥棒も道路工事の人も、みんながみんなその辺に布団を敷いて、思う存分睡眠をむさぼった。

 法律ができ、60時間眠って、20時間働こうとなった。

 暴動が起きた。

 20時間働く?

 ふざけるな!!

 だがそれを境に、80時間が効率化の名の元にどんどん切り分けられていく。

 15時間眠って5時間働くを4回すればいいい。
 
 そんなの四連勤じゃないか!

もっとみる

漁師の嫁

 朝、ベッドの中でメールを見ていると、崇の母から電話が来た。
 今うちに向かっているらしい。というかもう着くのだそうだ。

 いつでも来てくださいと言ったのは私だが、これは急というかもはや抜き打ちだ。

 電話で義母は、たか子さん(私だ)の手料理をぜひとも食べてみたいと言った。

 でも私は料理ができない。

 したことがない。

 高校まで、食べ物というのは手を叩くか、その辺の誰かに命じれば出て

もっとみる