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短編

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短編です。
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#家族の物語

 朝食を食べに台所へ向かうと女がいた。

 そういえば今日からだったっけな。

 地下アイドルをしていたのは聞いていた。その後大手の芸能事務所でメジャーデビューをしたことも。

 そこが彼女のピークだった。

 雑誌か何かのカメラマンと恋に落ち、ファンに見つかりグループを離脱。

 ドラマや舞台のオーディションを受け、通ったことはない。

 とうとう家賃を払うこともできず、携帯も大丈夫かという段に

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ゲームを買いにいく

ゲームを買いにいく

 ゲーム買ってと息子に言われて、よっしゃ分かったとゲーム屋に行くことになった。

 もちろん昨今では買いに行くまでもなくネットでいくらでも無料で遊べるし、テレビゲームが欲しいのなら通販もできるし、古本屋にだって安く売られている。

 そのような誘惑をかいくぐり、そこからさらにゲーム屋にわざわざ行くなんて、これは立派な家族サービスというものだろう。

 まあ流行ってなんてないだろうからあんまり期待は

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仲間を探す

仲間を探す

 仲間が欲しくなったので問屋へ行ってみた。
 それは昭和の頃に作られた古い橋の下にひっそりと建っていた。レンガ造りの小さな建物で、ピザを焼く竈と言われても納得できそうだ。
 全体が蔦やなんかでめちゃくちゃに覆われ、近くには幅の広い川が流れている。流れも速い。ネットの情報によると、大河ドラマなんかでたまに使われるらしい。

 赤いドアは薄汚れている。誰もここを掃除しようだなんて思ったりしないのだ。ガ

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なんでも叶う

なんでも叶う

 秋生は私が口にしたことをなんでも叶えてくれる。
 例えば虚空に向けて何気なくケーキ食べたいと言ったとする。まさか秋生がきいていたなんて思わない。でも少ししてピンポンとベルが鳴り、お隣さんや友達がケーキを持って立っている。
 二重跳びができるようになりたいと言った。すると街で女性に声をかけられた。小学校の同級生で、今教師をしているという。
 話をしているうちに、あんたクラスで一人だけ二重飛びできな

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