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SSデジタル化

カフェにいた、それぞれスマホを見続けて、一切会話しないカップルを眺めながら作りました。terima kasih!

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2050年、全てのデジタル化が完了した。

企業においても、人々の私生活においても。


2020年以降から、デジタル化は急速に政府によって進められ、

企業も続々とDX、デジタルトランスフォーメーションされた。

書類はもちろんデジタル化、オフィスもデジタル化。

オフィスを持たない会社が、今はほどんどだ。

会話も作業も全てデジタル化。


「今まで、なぜ会社や学校にわざわざ足を運んでいたんだろうな。

頭の中にオフィスがあるのに。」


なぜ、こんなことができるようになったのか。

「そうだな。30年前の2020年あたりで言えば、スマートフォンやPCがそのまま脳味噌に組み込まれている感じだな。脳内会話システムっていうんだ。」


会話が脳味噌内でできる。頭の中にチャットがある感じだそうだ。

考えたことをそのまま、送信してくれる。

色んな人と同時に会話できるようになったらしい。


頭の中で組み立てた仕事や物も、ロボットが全て組み立ててくれる。


脳内で買い物している風景を思い浮かべたら、品物が出てきて、品物を選んでレジに行く想像したら決済が行われている。

想像で料理をしたら、料理ができている。

夫婦の会話もカップルの会話も全て脳内でできる。

行きたいところに旅行に行ける。

この脳内会話システムは2040年ごろから使われ始め、10年経った今は、世界中が使用しているツールだ。

「俺も大学の授業は全て家で受ける。ゼミ活動も順調だし、バイトも楽だし。彼女とハワイに旅行に行ったし、最高の思い出になったよ。デジタル化以外は、そんなに30年前と変わらないと思うぜ。」


そんなある日。この脳内会話システムを提供している会社が、ハックされた。

全てのバックアップデータが破壊された。

全ての人は記憶を失った。

破壊されたデータは、脳内会話システムのスタッフによって、すぐに修正された。

しかし、記憶の修正には途方もない時間がかかる。何年かかるのか。

何億人の人が正しい記憶の位置に戻るまで、パズルのように組み合わされたり、外されたり、、

絶え間なく、記憶の行き来が行われている。


「私は本当に私だったかもわからなくなった。さっきまでは違う人だったかも知れないし、とても大切な人がいた気がする。守りたい誰かがいた気がするの。誰かに助けを求めようにも、誰が友達だったか、親だったかもわからない。10年間これを使ってきたせいで、声の発生の仕方を忘れてしまったのよ。


ザザァァァ......


だから、俺は闇雲に最後のデータを使って脳内会話をしてみた。そしたら、お前に届いたってわけ。これが聞こえているお前だよ。助けてくれよ。」



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