見出し画像

テーブルウェアにおけるサーキュレーションモデルの提案 -"From cradle to cradle(ゆりかごからゆりかごまで)"

みなさんこんにちは。
とある北欧インテリアのお店で働いている椋本です。

先日、所属している組織のビジネスアイデアコンテストで考えた、新しいサーキュレーションモデル(循環系モデル)の提案内容をシェアしたいと思います。何かひとつでもあなたのひらめきのヒントになれば幸いです…!

1.背景

「サステイナブル」というマジックワードが流行し、大量生産・大量消費の価値観が揺らいでいる昨今、私たちは「モノ」との接し方の見直しを余儀なくされています。しかし、転換と混乱はハッピーセットのごとし。「買う」→「捨てる」→「買う」という従来の短期間的な消費サイクルを脱し、「いかにモノを長く使うか」という視点が良しとされる一方で、斎藤幸平さんが『人新世の「資本論」』でも指摘しているように「サステイナブル・マーケティング」や「エコと謳われている商品を買うことが消費者にとって免罪符の役割を果たしている」というあべこべの状況が起きているわけです。

そんな状況の中で、僕は「モノとの接し方」を本質的な視点でもう一度見直してみたい。それを「資本主義を脱する」という理想論ではなく、現実的な立場から考えてみたい。それが今回のサーキュレーションモデルの発端というわけです。

2.コンセプト

「モノには魂が宿る」。これは日本の伝統的な考え方です。使えば使うほど愛着が湧く。私たちはそこに「モノのいのち」を見出します。しかし、どんなにお気に入りのモノだとしても、壊れてしまえば捨てるしかありません。それはすなわち「モノの死」を意味します。そんな現状を「リサイクル」と「修理」を通して変えられないだろうか?姿かたちが変わったとしても、お気に入りのモノのいのちを未来につなげないだろうか?これがこれがアイデアのコンセプトです。「お客様にモノを売る」という行為に「social responsivility(社会的責任)」を負うこと。むしろ「モノを売る」という行為を通して社会的責任を果たしてゆくこと。社会をより良い方向に導いてゆくこと。20世紀初頭から半ばにかけてのアーツ・アンド・クラフツや北欧モダニズムが「デザインやアートによって人々を啓蒙する」のであったならば、21世紀のアフターコロナ時代は「サービスとコンセプトによって人々を啓蒙する」ということです。このアクションを通じて、より多くの人が「モノとの接し方」を見直すきっかけになれたらいいなと思っています。

3.アイデアの内容

まず、耐久消費財を販売するビジネスで最も手が届きづらいのは「購入後」の領域です。店を出たらお客さんとの関係性は途切れ、その後の時間は好きにしてください、という傾向は業態が大きくなればなるほど高まります。たとえばモノが壊れてしまったとき、家電や高額品の場合は保証書が付属してリペアサービスを行うことが多い一方で、テーブルウェアの分野においては「買い替え」がスタンダードですよね。壊れてしまったものは捨てて、新しいものを購入する。もちろんそれが悪いと言っているわけではありません。重要なのは、「いかに多くの選択肢を提供できるか」ということだと思います。つまり、「壊れてしまったテーブルウェア」を循環モデルに組み込むために、私たちメーカーには何ができるのかということなのです。

そこで今回提案したのが、こちらのモデル。

画像1

「購入する」→「壊れる」→「捨てる」という一直線型の現状に対して、「(回収して)再生産する」もしくは「修理する」という二つの選択肢を展開することで、モノの流れに多方向性を加えようというアイデアです。

まず「再生産」について。これは壊れたテーブルウェアを回収してリサイクルし、新たなリサイクルシリーズとして展開します。幸いにも磁器やガラスのリサイクル→再生産の技術は持ち合わせているため、基本的に技術的な障壁はありません。問題は「どうやって回収するか」ということです。ここには「店舗側」と「お客様側」の二つの視点があります。まず店舗側については、持ち込みか配送サービスが考えられます。しかし、配送サービスについては恐らくコスト的に足が出るため現実的ではありません。ですから、やはり店舗が近くにある方をターゲットにしてビジネスを展開するのが良いかと思います。次にお客様側については、「持ち込むための動機」を提供する必要があります。なぜなら捨てる方が数倍ラクだからです。ここでは、持ち込んでくれた代わりに、ディスカウントまたはアディショナルの付加価値がついたクーポンを渡す手法が有効だと考えます。「持ち込む」=「新しいテーブルウェアを購入する必要がある」と捉え、クーポンを引き換えることによって「自社の製品を購入してもらう」という購買層の囲い込みを促します。

実際、今回のアイデアに際して、サンプルデータとして私の知り合い数名にインタビューを実施した結果、8割の方々がポジティブな回答を寄せてくれたため、需要とマッチする可能性が高いです。

次に「修理」について。今回は日本の伝統的な「金継ぎ」の技術をサービスとして展開します。このサービス展開の需要の如何には裏付けがあり、実際に店舗スタッフへの「金継ぎサービスを行っているか」という問合せが多いこと、そして表参道の金継ぎ職人の元にはたとえリーズナブルなテーブルウェアだったとしても修理の依頼が毎日のように来ること。さらに、日本の伝統技術を用いてサービスを展開することで、技術の保全およびグローバルな認知の拡大にもつながることを想定しています。この「日本ならでは」という視点は本アイデアを日本から提言する意義にもつながります。

以上の内容は、「点」から「面」へという考え方に基づいています。すなわち、「モノをつくるだけ」「売るだけ」「直すだけ」という点のビジネス展開から、扱うモノに対するすべての領域(面)に対してアクションを起こすこと。そうしたサーキュレーションモデルに基づいたビジネス展開こそが、「モノを売る責任を負う」ということなのではないかと思うのです。

こうした考えをふまえ、「モノの誕生から墓場を通り過ぎて再び誕生までを私たちがやってしまおう」ということで、サブタイトルが "from cradle to cradle(ゆりかごからゆりかごまで)"となっているというわけでした(笑)

4.さいごに(余談)

ビジネスアイデアコンテストはファイナルまで残ったものの、最終的にベスト4止まりでした。くやしい!しかしファイナルの段階まで来るとどのアイデアもオリジナリティがあって面白い。とくに今回優勝したアイデアは、来月にでも実装できそうなくらいフットワークの軽いものでした。そういう意味では、実装までに時間がかかり、かつ具体性が若干不足している点がマイナス要因だったのかも知れませんね。

あとめちゃくちゃ余談ですが、今回、伝えたいことを英語でスムーズに伝えられないもどかしさを非常に感じました。もはや考え方とかではなく英語力の問題でしたね。これはもう勉強するしかない!精進あるのみ、ですね。

この記事が参加している募集

最近の学び

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?