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【第6回】小学校の自由研究が、プチ小説家のデビュー作になったおはなし📚

河原で見つけた石ころやちょっと珍しい消しゴム、クマのぬいぐるみが大好きで、宝もののように肌身離さず持ち歩いていたあの頃ーーー。

突然、大好きだった担任の先生が入院をし、学校に姿を現さなくなりました。幼い私にはなにが起きたのか分からず、ただショックで、悲しくて、眠れない日々が続きました。

「先生に、早く元気になってもらいたい。。。」
「私にとって、本当に大切なものってなんだったのだろう」

こんばんは🌕文月ノベルです。

本日は、そんな思いから小学校2年生のときに懸命に綴り、担任の先生がいる入院先へ届けた物語『宝もの』を、お届けしたいと思います。ーーーあの時、ちょっぴりとでも先生に気持ちを届けることができたのかな。。。

◇宝もの🧸

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私の名前はクルミです。
小学校2年生の女の子です。

私が一番大切にしている「宝物」は、ピンクのくまのキーホルダーです。名前は「モモ」です。いつもは私の部屋の枕もとで、私のことを、見守ってくれているのですが、今日は、ランドセルにつけて学校に行くことにしました。

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ーーー放課後ーーー

いじめっ子のタカヤくんが、「モモ」を見ていました。私は、いや~な予感がしました。

「これ、何?」タカヤくんが聞きました。

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「これ、モモちゃんっていうの。私の宝物よ。」

すると「モモ」をつかみながら、「ピンク色だからモモかよ。おまえたんじゅんだな。バッカみたい。」とタカヤくんが言ったとき「モモ」はタカヤくんの手から飛ばされて、風に乗って、教室の窓から外に飛んで行ってしまいました。

涙が一つ、二つ、三つ・・・止まりませんでした。

「私の大切な宝ものなのに。すごく大事にしていたのに。」

私は泣きながら言いました。タカヤくんは何も言わずに走っていきました。(人の気持ちも知らずに・・・!)

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ーーーその日の夜ーー

私は、なかなかねむることが出来ませんでした。その時、誰かが、「クルミちゃん、クルミちゃん」私を呼んでいる声が聞こえました。

私は起き上がりました。

そして、まわりを見渡しました。そしたら、私を取り囲むかのように人形たちがいました。

「私のお人形だわ。どうしたの?」

「クルミちゃんを助けてあげようと思って。」

「えっ、私を!」

「いっしょに、モモちゃんを探そうよ。」

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「モモちゃんは、みんなの宝ものだからね。」

「ありがとう。」

「学校の裏にある森の中を探してみようよ。」

「うん」

私は、人形たちとひっしで「モモ」をさがし始めました。

「モモちゃ~ん、モモちゃ~ん。」

「返事が返ってこないということは、もと遠くにいるんじゃないかしら。」

「そうだね。もっと遠くに行ってみよう。」

私たちは、森のなかを、どんどん歩いていきました。

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「あそこで何か動いたわ。」

見ると、そこにはタカヤくんの姿が・・・タカヤくんは、はずかしそうに言い出しました。

「あの時は、ごめんね。」

「もしかして、さがしてくれていたの?」

「うん、さがしているんだけど、まだ見つからないんだ。」

「ありがとう。いっしょにさがしましょう。」

私と人形たちとタカヤくんは、また、森の中をどんどん歩いて行きました。

すると、別れ道がありました。

「あれ、どこに行ったらよいのかしら」

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私たちが考えていると・・・

「右だよ。左にいくと、大きな落とし穴があるからね。」

なんと、うさぎさんが教えてくれたのです。

「ありがとう」

私たちは、うさぎさんに感謝しながら右へと進んでいきました。すると、道の真ん中に、大きな木がたおれていました。タカヤくんが言いました。

「ぼくが、木をどかしてみるよ。」

タカヤくんは一生懸命木をどかそうとしますが、なかなか動きません。その時です。急に、木がふわっと持ち上がりました。

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見ると、タカヤくんの横にはくまさんがいて、大きな木をどかしてくれたのです。

「ありがとう。タカヤくん、くまさん。」みんなお礼を言って、また森の中を歩きます。

ーーーするとーーー

上の方でバサバサ音がしてきました。

「何をしにきたんだ!カァーカァー!われわれは、森の見張り番だ。勝手に森に入るな!カァーカァー!」カラスたちがさわいでいます。

「私たちは、なくした宝ものをさがしに来たのです。」私は言いました。

「僕たちは、森をあらそうとしたんじゃないよ。」タカヤくんも言いました。

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「うるさい。カァーカァー!」カラスたちは、聞いてくれません。

そのとき、「ポンポコポンポン、ポンポコポン、ポンポン」どこからか、たいこの音が聞こえてきました。

たぬきさんです。

大きなおなかをたたいて、たぬきさんが来ました。

「ぼくのたいこの音は、どうだね?いい音だろう?ポン!」

「あんなにうるさかったカラスたちがおとなしくなっちゃったよ。」

人形たちが言いました。本当にカラスたちは、たぬきさんのたいこの音でスヤスヤとねむってしまいました。

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「たぬきさん助けてくれてありがとう。」みんなで頭を下げました。

「何だか私たち色んな人に助けてもらっているわね。」

「そうだね。うさぎさんに、くまさんに、たぬきさん。」

私は、目を閉じて、じっと静かに、今まで起こったことを振り返ってみました。

ーーーするとーーー

不思議なことに、助けてくれたうさぎさんの顔が、お母さんの顔に、くまさんの顔は、お父さんの顔に、たぬきさんの顔は、学校の担任の先生の顔に見えてきたのです。

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「もしかして・・・!」

大切なことに気が付いた私が、目を開けたとき、ピカピカ光るものが見えました。

「やっと、気付いたわね。クルミちゃん。」光の中から、森のようせいが言いました。

「私の宝ものは、家族だったのですね。そして、先生やお友達も、大切な宝ものだったのですね。」

「そうですよ。その事に気づいたクルミちゃんだからこそ、モモちゃんを返してあげましょう。」

森のようせいから、モモちゃんを受け取ったとき、お父さんとお母さんと先生が、走ってくるのが見えました。

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思わず、私とタカヤくんも、そちらに走って行きました。

お父さん、お母さん、先生の顔を見て、私もタカヤくんも、安心しました。

ふと、後ろを振り返ると!

いつの間にか、人形たちも、森のようせいも、消えていました。

ーーーおわりーーー

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ひとは、1人では生きていけないということ。
 この頃の私は、いつも誰かに守られ、助けられていました。
大好きだった先生の入院をきっかけに、家族や友達、先生という存在のありがたさに初めて気がついた私は、先生にこの物語を送ったのだと思います。

「先生、私たちが、応援しています」 ーーーそんな意味を込めて。

 私はこの頃から、私の文章を読んでくださった人があたたかく優しい気持ちになってくれることを願い、文章を書いていたようにおもいます。

命、家族愛、友情...。
 何にもかえられない”本当の宝もの”に気がついた8歳の私。

皆が優しくなると信じて書き、元気になると信じて書き、
私自身も元気になったのでした。


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