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2023年詩

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#自分

167「詩」うたが

167「詩」うたが

遠い昔うたったうたが
ぽっかり空いた時間の隙間から
あの頃にすっぽりと
わたしを落とすのです

未来が眩しく輝いていたけれど
そこに続く道は見えないままだったあの頃
がんばれば
道は必ず見つかると信じていたけれど
がんばっても上手くはいかなかった

肩を落とした
秋の夕暮れ
みんなと同じ方向を
仕方なく見ることにした

流れにのまれて
ありふれた形の社会人になった

周りからおめでとうの言葉を浴び

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158「詩」言葉

158「詩」言葉

あなたのためです

たくさん聞いてきた言葉です
言われたことをやってみても
わたしのために
役立ったことはありません

あなたのためです

わたしのために言ってるのではなく
あなたが満足するために
言ってる言葉だったりします

あなたのため
言おうとしたその瞬間

心静かに
何度も自分に問います
ほんとうにあなたに必要な言葉かどうか

あなたにとって
重荷だけ与えてしまわないか
あなたにとって

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125「詩」波

125「詩」波

雲が荒々しく波立って
運んでいるものは今日1日の出来事

なんにも出来なかった時間を悔やみ
動けなかった自分を責める
今日1日の無意味さが
波の上に昇華されていく

昇華され群青色に透き通っていく辺りに
今はもう忘れてしまった私のとても
とても大切だった人が
私を待っている

124「詩」真夏の夕暮れ

124「詩」真夏の夕暮れ

それでも
なにか贈り物はある

理由もなく
このままで大丈夫だと思う

うんざりするほどの暑さの中で
今日一日精一杯働いた

夏の日の夕暮れ
空が
疲れ切った身体を労っている

思い出したくないことは
思い出さなくていいのだ
そのままそっと
そこに残しておけばいいのだ
重たいものはそこに残して
自分だけ歩いていけばいいのだ

予想もつかないほど心踊る贈り物が
明日
見つかるかもしれない

明日見つ

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100「詩」林檎酒

100「詩」林檎酒

 区切りになる100作目に何を書こうか考えました。去年10月、また詩を書き始めました。最後に書いた詩から30年近い月日が流れていました。
 今年の目標として、詩の推敲は二の次にして、200作品書くことを掲げました。
 半年近く経ってやっと辿り着いた100作目。

書けなくなる前の最後の詩は信濃毎日新聞主催のコンクールで優秀賞をいただきました。その詩を引用して、100作目にしたいと思います。
28年

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99「詩」ろくでもないこと

99「詩」ろくでもないこと

ほんとうは
ろくでもないことばかり考えている
ばれないように
上品そうに振る舞って
ろくでもないことを考えているのを
かくしている

人と比べたって自分が変わるわけではない
そんなこと
ちゃんと知ってるのに

医者になった友だちがポルシェを
ドイツにオーダーしたってメールが届く
そんなことでちょっとだけ
ちょっとだけ暗い気持ちになってしまう

豪華な料亭のお節料理を囲んで
笑っている家族たちの写真

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96「詩」ただしいこと

96「詩」ただしいこと

「ただしいこと」は
モノサシが変わると
ただしくなくなる

「ただしいこと」は
人が変わると
ただしくなくなる

「ただしいこと」は
場所かかわると
ただしくなくなる

「ただしいこと」は
時代がかわると
ただしくなくなる

ただしくないことを許せない人が
自分の「ただしいこと」で
ただしくないことを直そうとする

「ただしいこと」に
私の心は踏みつけられ
深く傷ついている

91「詩」なさけない

91「詩」なさけない

思いがこんなにたくさんあるのに
言葉にできないでいる
言葉にすると違った色に染まってしまいそうで

言葉にすると
どんなふうに伝わるか
傷つけないか
言葉で伝わる私が本当の私と違ってしまわないか

そんなことが大きく膨れ上がり
恐くて
言葉にできないでいる

どうみられるか
どう思われるか
そんなことどうでもいいと知っているのに
気にする自分が情けない

83「詩」フラワームーン

83「詩」フラワームーン

あの日ひとかけらの勇気をもっていたら
この時間に違った自分が違う場所に
立っていたかもしれない

あの日ひとかけら素直さをもっていたら
この時間に見知らぬ誰かに
手紙を書いていたかもしれない

あの日ひとかけらの強さをもっていたら
今苦しんでいることと違った場所で
新しいことを始めていたかもしれない

あの時失くしたひとかけらが一輪の花になる

花は夜空を見上げる
違った場所にいたかもしれない自分

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74「詩」はるか上

74「詩」はるか上

私なんかダメな人間なんだ
遠い昔の私が呟く
自分を卑下するな
怒って投げ捨てるように言った人がいる

自分が嫌いで嫌いで
消えてなくなりたくなる
そんな時はきまって
あの人の叱る声が聞こえる

とてもたいせつだった人
たいせつ過ぎて友だちにしか
なれなかったあの人

重く大地を覆う雲のはるか上
碧く染まった光の中にいる
立ち尽くしたままの私のはるか上

60「詩」知らない街

60「詩」知らない街

知らない街を歩いてみる
知らない人の目に私が映らないように
息を潜めて歩いてみる

私の名前も生まれた場所も
何をやって生きているかも
誰も知らない

風のように
人混みを通り抜けてみる
誰も私に気づかない

透明になってしまった私

もう知ったかぶりのお説教も聞かないで済む
あなたのためと言いながら
自分の正しさを主張するためだけのお説教
私はそれを見抜いている

自分のためだけの優しさに触れな

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30「詩」いつもあなたが

30「詩」いつもあなたが

いつも聞こえているよ
どんな時にも
会えないあなたの声が

いつも自分に厳しく自分を許せなかった
人を許してばかりだったのに
そんなあなたの生き方を
私は許してあげたい

周りの人が楽になるように働き続けた
自分は損ばかりしてきたのに
そんなあなたの生き方を
私は褒めてあげたい

いつも聞こえているよ
どんな時にも
会えないあなたの声が

辛い事があると
あなたの生き方が
いつも私を励ましてくれる

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7「詩」 大切な人のために

7「詩」 大切な人のために

自分が嫌いだった
顔も美しくなかった
自信などまったくなかった

いつもおどおどと
人の顔を読み取り
その人が喜ぶような
言葉ばかり口にした

自分などどうでも良かった

幸せではなかった
嬉しいことなどまったくなかった

いつもおどおどと
人の顔を読み取り
幸せだと
うその言葉ばかり口にした

自分などどうでも良かった

自分が嫌いだった

ある日
出会った大切な人

大切な人が笑うと
自分も嬉

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