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ルーツ旅立ち前⑥ひとり娘のために、いま私が出来ること

私が自分の先祖を探そうと思ったのは、当時小学生だった一人娘のためでもありました。

▼娘が将来、ひとりぼっちだと思わなくてすむように

私は結婚してかなりたってから子どもを授かったので、おそらく将来、娘がまだ若いうちに、親が亡くなってしまう可能性が高いでしょう。親戚も近くにいないので、そのとき娘が家庭を築いていなければ、自分がひとりぼっちだと感じ、絶望してしまうかもしれません

もし私が先祖について解明し、関係者とつながることができれば、娘は、自分はひとりではないと感じ、孤独が少しでもやわらぐんじゃないか。

そして娘の命が、はるか昔からたくさんの先祖が必死につないでくれた命のバトンの結果であることがわかれば、自分の命を大切にするようになるんじゃないか。

そう思いました。

▼娘は成長するにつれ、私に似てきた

娘が生まれたときは、夫の小さい頃にそっくりで、誰がみても親子だとわかるぐらいでした。唯一私と似ていたのは、眉間にある小さな白いアザだけ。しばらくすると消えてしまいましたが、私が子どものころ、左手の甲にあった、島のような形をした白いアザとよく似ていました。

ところが、娘は成長するにつれ、だんだん私に似てきたのです。顔や性格、真っ黒でボリュームのあるまっすぐな髪も。
そして、娘が小学校3年生のとき、ある「事件」が起きました。

▼身の丈に合わない幸運

当時、娘の字があまりにも下手だったので、私は、近所にある書道教室に通わせることにしました。授業は週1回。ただ、娘はあまり練習熱心ではなく、いっこうに上達する気配がありません。

しばらくして先生から、書道コンクールに作品を出すようにと言われました。練習もかねて、教室に通う生徒みんなに声をかけていたようです。

娘は、先生のお手本をまねて一生懸命書きましたが、まだ数回しか通っていないのですから、なかなかうまく書けません。負けず嫌いの娘は、悔しくて泣きながら、30枚ぐらい書いたでしょうか。私はその中で、少しでもお手本に似たものを選んで提出することにしました。

数週間後、書道教室の先生から電話がありました。
なんと、娘の作品がコンクールで大きな賞を取ったというのです。

門外漢の私でさえ耳にしたことがある有名な賞で、先生もびっくりした様子。
もちろん、娘も驚いていました。なんで、私のあの作品が??😨

私自身は、嬉しさよりも驚きのほうが大きくて、ショックを受けたというほうが正確かもしれません。

娘は、おかしなところも私に似ている。

そう思いました。


「自分の身の丈にあわない幸運」

それが、私がずっと自分自身に抱いていた違和感の正体でした

▼なぜ私は幸運なのか

きっとバカバカしいと思われそうですが、前にもいったように、私はこれまで運のいい人生を歩んできました。具体的にいうと、

資格試験はたいてい合格しました。その中でも一番難しかった試験については、その年同じクラスで合格したのは私だけでした。

・最初に出した本は、私が25,6歳のとき。私のホームページをみた編集者から、本を出しませんか?と連絡がきました。その後も、新しい本を出したいと思ったら、たまたま知り合った編集者がすぐに本を出してくれる。そんな調子で、これまでにかなりの数の実用書を出版しました

・私が転職したいと考えていた組織のトップが、たまたま私が所属する勉強会に出席したので、直接アピールして就職を認めてもらいました。

・プライベートでは、20代の終わりごろ。長年交際した相手が海外転勤になり、どうしようかと思っていたら、たまたま知り合った男性から交際を申し込まれて、半年後に結婚しました(おぼっちゃんでしたが、私の家庭の事情を打ち明けても、親から反対されませんでした)。今も仲良く暮らしています。

・最初は子どもがほしいと思いませんでしたが、結婚6年目ぐらいにようやく子どもがほしいと思いトライしたところ、2か月ぐらいで授かりました。

万事がこんな調子だったので、私は運が強いと思っていました。でも、それが同時に、居心地の悪さを感じる原因でもあったのです。

▼幸運が当然だと思えるバックボーンがほしい

なぜ居心地が悪かったかといえば、私には、そうなっても当然だといえるバックボーンがなかったから。

もし私がお金持ちのエリート家庭に育っていれば、その環境から、物事がうまく行くのは当然だと、素直に受け入れられたかもしれません。

でも前に書いたように、私の父親は中卒で、母親は高卒の低学歴家庭に育ち、私自身、学生時代の成績は平均的で、特に地頭が良かったわけでもありません。

また、実家の家庭環境が複雑だったため、人間関係に疲れた私は、大学時代はまったく友達を作らず、ひとりぼっちでした。就職も、一般的な会社に正社員として就職したことはなく、変わった職歴をたどっていました。

色々な意味で、自分に自信がないのです。

身の丈に合わない幸運は、ありがたい反面、その理由がわからないと気味が悪いものです。

もしかしたら、私は知らないうちに何かと取引をしていて、そのうち代償を支払わされるんじゃないか?

笑われそうですが、そんな恐れさえ感じていました。

さっきの書道コンクールの件は、娘の実力というより、まったくの幸運としか言いようがないものです。
もしかしたら娘は、私の強運さを受け継いだのかもしれません。

もしそうなら、今のうちにその理由を知っておかなければ、娘に将来、何か悪い影響があるんじゃないか。そんな焦りを感じました。

娘のためにも、自分のためにも、納得できる物語がほしい。

そうすればきっと、私は自信をもって人生を生きられるようになるはずです。

▼娘の教育にも役立つはず

さらにもう1つ、ルーツ探しが娘の教育に役立つんじゃないかという思惑もありました。一緒にあちこち旅をし、人と関わることで、地理や歴史の知識が身に付くはず。また、さまざまな体験をさせて知的好奇心を育てることが、情操教育にもいいのではと思いました。

いまは昔と違い、ペーパーテストをクリアする能力を身に着けるだけでは足りない時代です。自分で世の中の出来事に疑問を抱いて調べ、自分の頭で考えて答えを出す。そういう能力が求められているのではないでしょうか。他人と協働することも大切です。そんな能力を身につけるために、娘が自分のルーツを調べる経験は役に立つんじゃないか。そんな風に思いました。

しかし、実際にルーツ探しを始めたところ、そううまく行くはずもなく💦
もっぱら旅の下調べや準備をするのは私で、娘の学習に役立ったのかといわれれば、よくわからないのが正直なところです。ただ、一緒に色々な場所に出かけて、知らない人と会って話をし、普通はなかなか出来ない珍しい体験も、たくさんすることができました。

現在、中学生になった娘の様子をみていると、私の思惑はそれほど外れていなかったように思います。娘は年齢よりもしっかりして、学校の成績もよく、友達ともうまくやっています。反抗期ですが、毎日たくさん親に話をしてくれるので、一緒にあちこち旅をして、信頼関係を築いてよかったなと思います。

………いけない。全然ルーツ探しの旅が始まりません。そろそろ、最初の旅に出かけなければ。その前にもう1度、田村さんに登場してもらって、話を進めようと思います。

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