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【短編小説】魔法の美容室 3

#短編小説 #魔法の美容室 #デザイナー #アパレル #美容室 #理美容 #進路指導 #就活 #フィクション #Webデザイナー #ポップ #ノンラビ #次は君の番

毎月1日は小説の日と言う事で、
11月もなんとか書き上げる事ができました。
相変わらずプロットのような小説で恐縮です。
今回も、精神科医のライセンスを持つ美容師、
間宮サキさんの活躍とアドバイスが、
キラリと光ると良いのですがね・・
今回も読み切りとなっていますが、
前のお話を読みたい方はこちら。

本日は約5000字です。
お時間のある時にお読みください。
感想などを書いていただけると、
大変励みになります。


魔法の美容室3

ひきこもり

「サキちゃん、コーヒーあるかい」
「・・・・・」

いつものように、時成住職が朝一でお店にやってきた。

「あのー」
サキが言いかけると、時成住職は
「わかってるって、喫茶店じゃねーって
 言いたいんだろ」


サキは<解っているなら>と心の中でつぶやいた。
「今日はお客さんの紹介だ、
 檀家の娘がな、就職できずに悩んでいるらしいんだ
 ちょっと話聞いてやってくれ」

「住職、ここは美容室ですからね
 お悩み相談所でも、ハローワークでもありませんよ」

サキが時成住職にガツンと言った。
サキの後ろでは、のぶちゃんが珈琲ミルで
豆を挽いていた。
サキの心をサカナデルように、ノブちゃんは
珈琲ミルをガリガリ挽き始めた。
美容室には珈琲の深い香りが漂いはじめた。

「いい香りだなーー」
時成住職はサキの言葉等気にしないように、
珈琲の話題にすり替えた。

「今日は何処の豆だい?」
時成住職がのぶちゃんに聞いた。
「今日はお友達のお土産で、HAWAIIコナです」
消え細るうような声でノブちゃんが言った。
「ハワイコナか。。おりゃハワイコナが一番好きなんだ」
そういうと、ノブちゃんにロックオンした。
サキは時成住職の性格を知っている
言い出したら引かないだろう。
どうせ檀家に<俺にまかせておけ>なんて言ったに
違いない。
サキはノブちゃんの入れる珈琲を手伝った。

サキもHAWAIIコナが好きだった。
豊潤な香りとその奥にあるコクが
香りにも伝わって流れてきた。

「やっぱりうまいな」
時成住職は言った。
なかなか本題に入らない。
もしかするとまた厄介事かもと、
サキはいやな予感がしていた。

「それでな・・」
<キタ>とサキは心の中でつぶやいた
「実は檀家に引きこもりの女の子が居てな
 まぁ学校いったり行かなかったで
 完全な引きこもりとも違うんだが
 そろそろ就活の時期でな・・・
 親が心配してて・・・
 サキちゃん話を聞いてやってくんねーかな
 頼むよ」

そう言って時成住職は頭を下げた
いつもなら、<じゃ>と言って
さっさと帰っていく時成住職が
珍しく、しおらしく頭をさげている
「じょうがないわね
 住職の頼みだから聞くわよ」

住職は少し明るい顔になり
2度3度頭を下げて帰っていった。
しっかり珈琲は飲み干していた。

岸陽菜(ハルナ)がやってきたのは
3日後だった。
母親に付き添われてやってきた。
「あのー・・」
母親がおそるおそる声をかけた。
ハルナは黙っている。
少し顔色も悪い。
サキはハルナの色を見ていた。
死にたい程ではないが、無気力の方向へ
流れているように感じた。
サキは母親の色も見た。
その瞬間、
原因は母親かもしれないと思った。
しかし、母親を変えるには時間がかかる。
数十年の蓄積があるからだ。
変わるには、母親自身も、
自分自身と向き合うしかない。
しかし今の段階で、それは少し困難だと直感した。
やはりハルナの気持ちを変えたほうが早そうだ。

「いらっしゃい・・ハルナさんでいいかな?」
サキはハルナに聞いた。
ハルナは黙ってうなづいた。

「ノブちゃん、特別室に入りまぁ〜す」
「かしこまりました」

「お母さん、少し時間がかかります。
 今日はお帰りいただいて良いですよ」

サキが丁寧にそういうと、
母親は怪訝な顔をしたが、
時成住職に何か言われていたのだろう。
反論したい気持ちを抑えて、
母親はしぶしぶ帰っていった。

「さて、ハルナさん、こっちよ」
サキはハルナを特別室へ案内した。
この部屋には鏡がない。
自分と向き合いながら、髪をセットしたり
メイクをする部屋だ。

「上着脱いで、ここにかけて」
サキは、ハルナのコートを受け取った。
黒のコートの下はジャージだった。
サキはちょっと驚いたが、
<まぁいいわ>
心の中でつぶやいた。

サキはハルナを、セットチェアに座らせて
髪を見ていた。
あまり手入れをされないまま、伸ばされた髪を
ブラシでとかしながら、
枝毛などを整えて考えていた。
ハルナが変わる瞬間の演出を・・・

サキは、ハルナのロングへやーを活かす事にした。
一部縮毛が必要な部分は薬剤を使って綺麗な
ストレートヘヤーにした。

「一旦お茶にしましょうか」
そういうとサキは、一旦部屋を出て
ケーキを運んできた。
「近所のケーキ屋さんのモンブランなの
 美味しいから食べて」

サキはミントティーと一緒に出した。

サキも一緒にハルナとお茶を飲んだ。
お茶をしながら、女子トークの中で
ハルナはいろいろ話してくれた。

イラストが得意な事や、
ボカロをよく聞いている事等。
少しずつだが、ハルナは笑顔で
話を続けてくれた。

今IT系の専門学校に通っているが、
勉強は難しく、就活もしなければならず
毎日母親からプレッシャーが
かかっている事など、

モンブランの甘さとミントの爽やかさが
ハルナの口を軽くしているように感じた。
サキは<やっぱり>と心の中でつぶやいた。

お茶を飲みおえた所で
ドアがノックされた。
「サキちゃん・・ご要望のものお届けよ」
近所のファッションショップのタカさんが
青いスカートのスーツと薄ピンクのドレスブラウス
ハーフブーツと黄色いチェスターコートを持ってきた。

「ハルナさん、まずはこれに着替えて
 10分で着れるわよね」


そういうとサキは特別室を出ていった。

10分後、
サキはハルナのメイクを始めた。
まつ毛のエクステ、そして年齢より
少し大人に見えるメイクにした。
少し濃いめのメイクに、
更にルージュは赤にした。
ハルナの少し幼さが残る顔立ちが、
完全に大人の女性になった。
最後に、黒いロングへやーに
レインボースプレーを吹きかけた。
ハルナの髪は、レインボーカラーに輝き
時々ラメが光っていた。

ハルナは自分が今どんな状態かわからない。
そのため、また少し不安の色が増えてきた。

「あの、サキさん、服や靴のサイズが
 ぴったりなんですけど、なぜですか?」

ハルナの質問に、
「私の特技なの、一目見るとその人のサイズが
 わかるのよ」

そう言って笑った。

「さて、出かけましょうか」
サキはハルナを特別室から連れ出した。
ウエイティングスペースでは
カメラマンのロイが待っていた。
「わーお」
ロイは思わず声をだした。
ノブちゃんの目もキラキラしている。
けれど、ここにも鏡はない。
特別室に入るお客様を迎えた時は
お店の鏡を隠す事にしている。

ハルナは自分がどんな状態かわからない。
そこへタカさんもやってきた。
「おーーブルーのスーツに
 黄色いチェスターはいいね

 それに髪はレインボーなのが
 ギャップを生んでいてまたいいね
 素敵なレディーの出来上がりだ」


ハルナは周りから褒められている状況に
きょとんとしている。

「ロイさん、後はお願いね」
サキがそういうと。
ロイはウインクして
「まかせてぇ・・いい写真撮るわ」
ロイはハルナを連れて出ていった。

ノブちゃんがすかさず寄ってきて
「何処へ行ったんですか?」
サキは、のぶちゃんに
「池袋よ・・アニメの聖地、
 そこで、アニメキャラじゃない
 大人の彼女の写真を撮るの。
 これもギャップを生む演出ね
 まぁロイさんが個展開くので
 そのモデルも兼ねているんだけどね。」

サキはハルナを非日常へ引っ張り出したかった。
今日のハルナは、多分母親とすれ違っても
解らない程、変わって見えると思う。
それはロイの映像チェックの時
ハルナ自身が気が付くだろう。

身に纏うもの、そして肌に纏うメイク
髪型もそうだが、
心に別の自分を纏う事により、
自分のカラーを変化させる事にもなる。

最初に店に来たときは、
グレーゾーンぎりぎりの色だったが、
今出ていったハルナは服と同じ色を身に纏い、
時々レインボーに輝く光を放っていた。

人は一つのきっかけで変われる。
サキはそう思っていた。

過去の蓄積が未来を変える

20日後、ロイの写真展が開催されていた。
近所のギャラリーを貸し切って
ロイのこれまでの写真を展示していた。
サキは店を休んで、受付の手伝いをしていた。
いつもロイにはお世話になっているので、
その恩返しの意味もあった。

「サキさん、この子、誰・・モデルさん」
声をかけてきたのは、
女性ファッション誌の編集長、
矢崎ひろえだった。
展示してあるハルナの写真を見て
声をかけてきたのだ。
丁度、サンシャインシティーをバックにした、
公園での写真だった。

「あ・・もうすぐ来るわよ」
そういうと写真展の入り口に、
ハルナが先日のスーツとコートを着て、
立っていた。
十数人いた来場者は一斉にハルナの方を向いた。
ロイがエスコートしている。
ハルナは明るい顔でサキに近づいてきた。

サキにたどり着く前に
矢崎ひろえがハルナを捕まえて、
「ねぇあなた、ちょっとお話しましょう」
そう言って、商談コーナーへ連れて行ってしまった。
ロイと私はあきれた顔をして見送った。
流石業界でナンバーワンのファッション誌の、
編集長である。行動が早い。

サキは<もう大丈夫だよね>
そう心の中でつぶやいていた。

2か月後
矢崎ひろえの女性ファッション誌に
岸陽菜(ハルナ)が出ていた。
写真はロイ、
服はもちろんタカさんがデザインした、
青いスカートスーツと黄色のチェスターコート。

記事の内容はこんな感じだ。
<引きこもりがちだった私が
 一人で立つことができた理由
 それは美容室で魔法をかけられたから>
サブタイトルに
<過去の蓄積が未来だから
 今がどんな状況でも必ず未来はある>

そんな言葉が添えられていた。

美容室で魔法をかけられた言葉として
以下のようにも綴られていた。
「学校へ行かなかったからこそ、
 そこでしか得られないものや、感情がある。
 それをもう一度見つめ直してみて。
 非日常を手に入れる事で、
 少しは色が変わるかもしれない。
 普通なんて言葉はもうこの世にはないの。
 10年後も今の常識が普通だと限らないからね。
 だから引きこもりでいいじゃない。
 引きこもりだから得るものだってあるのよ。
 就職だけが人生じゃないわ。
 今を笑って生きる・・
 今のままでいい自分を受け入れる。
 そして、そんな自分を許す勇気を持つこと、
 あなたは、決して劣っていない。
 素敵なレディーよ。」


<そう言って渡された
 レインボースプレーは私のお守りです。
 魔法の美容室でかけられた言葉は、
 私の一生のバイブルにしようと決めました。
 私も私自身に魔法をかける時は、
 このレインボースプレーを使います。
 だから、今日の髪もレインボーです。>


そんな記事が写真も含めて
10ページに渡り特集されていた。
ノブちゃんはサキの隣で、その記事を見ながら
涙ぐんでいる。
「サキさんこんな事言ったんですか」
「たぶん編集長がかなり盛っていると思うわ」
<流石矢崎ひろえ、今時の心をつかむのがうまいわね>

そう心でつぶやいていた。

ハルナは雑誌の中で、将来の夢についても語っていた。
「今回ロイさんに素敵な写真を撮っていただき、
 それを見て驚いたんです。これが自分かって。
 だから、綺麗な映像をもっと沢山の人に届けたい。
 私のように変わるきっかけを待っている人へ届けたい。
 そう思って、Webクリエイターを
 目指そうと思います。」

つい数か月前の自分からは、
想いもよらない状況が生まれる。
それも人生、
誰かが変われるきっかけさえ
与えてあげられれば、
人はいつでも変われる事ができる。
サキはそんなふうに思っていた。

「サキちゃんコーヒーあるかい」
時成住職が店に入ってきた。
手には女性ファッション雑誌を持って
ニコニコしている。

「檀家さんには満足いただけたのかしら?」
時成住職は
「まぁお袋さんは、思う所があるようだが、
 今は何もいわず静観するとさ。
 俺もサキちゃんに任せたから、
 何も言うなと言ってあるしな」

「住職・・・私は人の人生を任される程
 できた人間じゃありませんよ。
 人生は自分で創るものですからね。
 ただちょっとだけお手伝いしただけですよ。」

時成住職はのぶちゃんが入れてくれた、
HAWAIIコナの珈琲を飲みながら、
声高らかに笑った。

「それにしても、いつも暇だね」
サキは時成住職をにらんで
「住職みたいなのが居るお店に
 誰が入ってくるのよ」

そう言ってサキも笑った。

岸陽菜(ハルナ)の人生に少しでも多く
色がついていく事を、サキは願っていた。
レインボーカラーのように。

おわり

あとがき

今回も支離滅裂な作品でしたね。
毎度毎度未完成で申し訳ないです。
今回は引きこもりと就活がテーマでした。
うまく表現できませんでしたね。
もっともっと書くことがありましたし、
表現したい事や描写がありましたが、
私自身うまく表現できませんでした。
<時間がなかったと言い訳>

ただ私が、変わりたいと思っているのか、
最近noteでよく紹介している、
ノンラビの『無自覚の天才』が
ずっとずっと頭の中で流れていました。
「このままでいいのかい?」
「次は君の番じゃないのかい?」
ってね!

人生は物語のように、
うまくはいかないかもしれませんが、
チャンスはあるんです。
それを見ようとするか?
見て見ぬふりをするか?

いずれにしても人生はまだまだ続きます。

焦らなくてもいいのではないかとも思います。
こんな無責任な事言って申し訳ありません。
本当に苦しんでいる人には、
届かないのかもしれませんし、
おまえに何がわかる・・と
お怒りになるかもしれませんね。

サキも、時成住職も、タカさんもロイも、
矢崎ひろえも現実には居ません。
けれど、これに代わる人は、貴方の周りに、
居るかもしれませんよね。

今回の岸陽菜のモデルは、私の娘です。
私も皆さんと同じように、
物語の中に出てくる母親のように苦しんでいます。
なので、この小説は自分の心へ訴えるために、
書いたとも言えます。
まったく無責任に書いたわけでもなく、
私としては、
娘の生きる力を信じたいという想いで、
書きとめました。

10年後か20年後か?
私がこの世を去った後なのか?
娘がこの小説に触れた時
「私変わったよ。。変われたよ」
そう言っている姿を想い浮かべながら
自己満足に浸っています。

本日も長文を最後まで読んでいただき、
ありがとうございます。
皆様に感謝いたします。


サポートいただいた方へ、いつもありがとうございます。あなたが幸せになるよう最大限の応援をさせていただきます。